「オフロード最強」の座は健在
KTM 1290 SUPER ADVENTURE R
「シチュエーションを選ばない本格的な足まわり」
1301ccのVツインエンジンを搭載して、高さ890mmというシートは決して低いとは言えない、23リットルの燃料タンクを持つ大柄なボディ。だけど、もっとアグレッシブに土や石の道、というより轍もない大地を走りたくなる。
KTMアドベンチャーの旗艦モデルである1290スーパーアドベンチャーには、Rの他に兄弟車として、フロント19、リア17インチのキャストホイールを履くスーパーアドベンチャーSもある。
より高いウインドシールドに、セミアクティブ電子制御サスペンションを装着して、グランドツーリングでの快適性を重視した仕様。シート高も30mm低い860mmと足着きにおいて許容範囲が広い。
それに、ひとたびスロットルを開けたら矢のように突き進む158HPのパワーはコンフォタブルでスポーティーだ。
この「S」でさえ前後のサスペンションストロークは200mmと、同カテゴリーでライバルとなる欧州他社がラインアップしている、スタンダードからオフロードよりにしたモデルと比べても遜色ないスペックだ。
だから、この1車種だけでもいいんじゃないかと思うところだけれど、このスーパーアドベンチャーRを用意する。そこにはダート走行に対して他社には負けない自信が詰め込まれている。
フロント21、リア18インチとオフロード車では定番の外径のワイヤースポークホイールだけでなく、220mmに増やされたサスペンションストロークと、250mmのグランドクリアランスは、もう立派なダートバイク。
ライディングモードを『オフロード』にすれば、低回転域でトルクの厚みとツキの良さが出て、この大きさでありながらしっかりオフロードバイクの感覚で操れる。
それでスロットルと体重移動により、前後の荷重移動ができるので路面状況が刻々と変化するダートで走らせやすく、実に面白い。マニュアルながら簡単に足廻りのセッティング変更が可能なので、乗りながらライダーの体重や荷物の重さに合わせて設定できる。
トラクションコントロールは効いているけれど、右手を大きくひねって思いっきりテールを流すような走りだと大きく介入するので、メリハリをつけたスロットル操作で、気持ち滑らせながら前に進ませる方が合う。
そして、そのまま舗装路に上がっても問題ない。試乗車はスタンダードよりオフロード向けのタイヤを履いていて、舗装路でのグリップはそれほど高くなかったが、サスペンションの質は高く、ブレーキもしっかり効き、滑らかな所作と申し分ないスタビリティを示す。だから、暴れ馬ではなく、素直で怖くない。コーナーリングも軽やかにリーンして向きが変わっていく。
今や、アドベンチャータイプのツアラーモデルはいろんなメーカーから販売されているが、1290スーパーアドベンチャーRは全てのシチュエーションで頼もしい相棒になってくれるだろう。ライバルのアドベンチャーモデル達も全力で独自の作り込みをして魅力を高める必要がありそうだ。
文:濱矢文夫、編集部/写真:柴田直行
KTM 1290 SUPER ADVENTURE R <Styling>
SPECIFICATIONS
エンジン:水冷4ストDOHC4バルブ75°V型2気筒
ボア×ストローク:108×71mm
総排気量:1301cc
燃料供給装置:フューエルインジェクション
最高出力:160PS/8750rpm
最大トルク:14.28kgf-m/6750rpm
全長×全幅×全高:NA
ホイールベース:1580±15mm
シート高:890mm
タイヤ前•後:90/90-21•150/70-18
始動方式:セルモーター
変速機:6段リターン
車両重量:217kg(乾燥)
燃料タンク容量:23ℓ
価格:215万円〜
MACHINE DETAIL
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