個々の走りもベース車の特性も理解して作り込む
ブルドックによるコンプリートカスタム、GT-M(Genuine Tuning Machine)の1台。セパレートハンドルやすっとスタイリッシュなホワイトボディからは低めに構えた印象があるが、実際は違っていた。
「逆に高めになっているんですよ」とブルドック和久井さん。
「バンク角を稼ぐことなどを考えてです。エンジンも普段と異なる10mmアップで積んでいますがこれもそうで、オーナーさんが走り重視ということでアレンジしています。フォークオフセットも多くの車両では35mm設定にしていますが、この車両ではハンドル切れ角も考えての30mmのショート設定です。エンジンも後期型=Z1000J系ヘッドをツインプラグ加工した上で組んだ[純正排気量:1015→]1200cc仕様でオリジナルの[5→]6速ミッションも入っています。このあたりも走りを考えてのことです」(和久井さん、以下同)
GT-M001(和久井さんのZ1-R改/ブルドック・デモ車)をモチーフにしたという外観にも注目しよう。
「よく見てもらうと分かると思いますが、この車両はタンクがⅡ型用なんです。普通ならスリムなⅠ型用タンクでそのまま格好良くなるんですが、オーナーさんがⅡ型でということでこのようにまとめました」
同じスクエアデザインながら13ℓ容量のⅠ型と、20ℓ容量のⅡ型のタンクは見た目のボリュームも異なる。それをここまで違和感なく見せているのは、やはりブルドックが意識する自然な全体感と、細部に至るまでの配慮に尽きるだろう。
そんな自然な見た目で主張を前に押し出さないから、ついついGT-Mは同じような車両を送り出しているようにも見える。だがそれも違った。
「GT-Mとしての質だったり、性能という部分での数字は、ある水準以上を守るわけです。その意味で量産と思う分はあるでしょうが、実際は作業も技術もパーツも日々進化し、この車両のようにオーナーの使い方や好みに合わせるという要素も入る。その要素を入れ込めるのも内燃機加工やフレーム加工も含めた自社作業が大半を占めるおかげですし、GT-M用パーツも常に用意されているからです」
同店に訪れるお客さんはそんな組み立てだけでない各種作業を実際に目にし、質の高さも実感する。それで自分の望みも込めるカスタムの部分も実現してくれるとして、車両オーダーを行う。このⅡ型Z1-Rは、そんな好みの昇華も行われた好例なのだ。