カタナで受けた衝撃と楽しみを伝えるための改良を施す
「これが今一番よく乗ってて、一番乗りやすいんですよ」。オオノスピードの大野さんは言う。
これというのは、写真のカタナ。国内仕様のスズキGSX750S1で、大野さんの愛車の1台だ。
仕様としては前19/後18(カタナは750S1とスクリーンを加えた750SSのみリヤ18インチ)のノーマル星型キャストホイール、フレームもエンジンもキャブもノーマルスペック。さらにS1そのままにカウル下フィンもなく、ハンドルもS1純正のアップタイプだ。
「ほとんど750S1のノーマル状態かな。でも、街中でも軽く扱えるし、750ccだと下から上まで使えるから、我慢するようなシチュエーションもほとんどないんです。それでいつの間にかこれに一番乗ってるんですね。これだけよく走るからお勧めもしたいけど、エンジン内ほか750Sは欠品が多いので、壊してしまうと費用がかかるのがちょっと難しいところ」。今までTOTレーサーも含めた多くのカタナに乗り、いや、乗って乗ってとにかく乗ってきた大野さんが言うのだから、よほど乗りやすいのだろう。
ただ、この750S1は跨がったり押したりしてみると、ノーマルの見た目から来る印象からぐっと変わった感覚が伝わってくる。重いクラッチは現代車並みに劇的に軽くなっているし、ブレーキも精度とタッチが良くなっている。ポジションも適度な硬さを持ったシートが好印象を与えてくれる。GSX1100S/セパハン仕様にある重さ感もなく、スリムで動かせる感じだ。
「ステップもノーマルなんだけど、新型KATANAより窮屈なくらいでスポーツ感がある。ハンドルもぱっと見はアレだけど、自然な位置に手が来るし、これで扱いやすくなっている。新型KATANAもセパハン要らないかな……と思う今、750S1もよく考えて作ってあったんだって感心するくらい」(大野さん)という言葉に納得する。その一方で、オオノスピードのパーツ/カタナ(あえてバイクでなく、カタナとしたい)作りにも感心させられるという具合だ。
「クラッチはずっとカタナで言われていることだし、乗る人が歳を取って力も衰えるからその対策の“介護クラッチ”(笑)。フロントフォークは交換じゃなくてノーマルベースで少しいじって、リヤはノーマルライクに見えるナイトロンを、ロアアダプターで20mmアップ。タイヤは今どきでコンチネンタル・クラシックアタック、リヤは120/90サイズです。そのまま履いたらリヤの裏側が干渉するんですけど、フェンダーレス+小物入れにしたらたまたま干渉しなくなって履けた」
たまたま、とは言うが、実践の結果としてカタナでテールを上げ過ぎて起こるネガを回避し、無理のないポジションとリヤストローク、そしてお勧めタイヤを得ることになった。こうした実感もこもるリアルな部分こそ、オオノスピード製パーツの本領。この750S1は、それらを反映する1台となっているのだ。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!