1992年のデビュー以来、モデルチェンジと熟成を繰り返しながら400ccロードスポーツの雄として君臨するCB400SF。伊藤真一さんにとっても思い入れのある1台は、その能力を遺憾なく発揮した!

語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり

ホンダ「CB400 SUPER FOUR」試乗インプレ(伊藤真一)

画像: Honda CB400 SUPER FOUR エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 総排気量:399cc 最高出力:56PS/11000rpm 最大トルク:4.0kg-m/9500rpm シート高:755mm 車両重量:201kg 税込価格:88万4400円/92万8400円(2トーン)

Honda CB400 SUPER FOUR

エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:399cc
最高出力:56PS/11000rpm
最大トルク:4.0kg-m/9500rpm
シート高:755mm
車両重量:201kg

税込価格:88万4400円/92万8400円(2トーン)

4バルブに切り替わるとトルクは一段と増強。そのエンジンとフレームとの一体感は感動レベルにある

この連載「ロングラン研究所」でCB400SFを取り上げるのは、2018年以来になりますね。1992年に初代モデルがデビューし、ハイパーVTECを採用した2代目が1999年…。それからもモデルチェンジを受け続けて20年以上販売された人気モデルだけあって、抜群に出来が良いバイクだな、と今回のテストでも思いました。熟成され尽くしているという感じで、アラ探しするのが難しいくらいです(笑)。

前回の試乗では、エンジンについては特に2バルブ作動時のフィーリングがとても良かったことを覚えています。ただ前回は高回転で4バルブ作動に切り替わったとき、演出なのかな? と思わせるくらいに荒々しさを感じたのですが、今回はそのラフな感じはありませんでした。

CB400SFの気持ち良い走らせ方は、自然とスタートしてからすぐに6速までシフトアップするような操作になります。早めに6速に入れると、スロットル操作に対する「ドンツキ」が薄れるので、乗りやすさが際立つようになりますから。

画像: ホンダ「CB400 SUPER FOUR」試乗インプレ(伊藤真一)

5速と6速ばかり使っていたのですが、6速で30km/hでも2000~3000回転くらいエンジンが回っています。この低速域で高いギアでもスナッチもなくノッキングする気配もなく、トップエンドまで気持ち良くエンジンが回ります。CB400SFのハイパーVTEC Revoは、6速ではスロットル開度に関係なく6750回転で2バルブから4バルブに切り替わる設計ですが、切り替わりは本当に音でしか判別できず、トルクの谷などを感じることはありません。音が変わって、トルクが一段と増える感じですね。

これは高い技術と抜群のセッティングによるもので、減速時の燃え方も非常にフィーリングが良く、エンジンについての不満はまったくないですね。

車体については、これも前回の試乗で感じたことと一緒なのですが、不思議とダブルクレードルの鉄フレームに、4気筒エンジンが載っかっていることを意識させないですね。CB/CBRの250や400系の、ダイヤモンドタイプの鉄フレームとエンジンの組み合わせは、フレームにエンジンが吊り下がっている感覚や、鉄フレームならではの「遅れ」をハンドリングに感じたりするのですが、CB400SFにはそれが全くないのです。

画像: 「狭い駐車場のような場所でスラロームをするような低い速度域では、前後タイヤの接地感がすごくありますね。よく寝て、よく曲がる…とても良い特性だと思います」

「狭い駐車場のような場所でスラロームをするような低い速度域では、前後タイヤの接地感がすごくありますね。よく寝て、よく曲がる…とても良い特性だと思います」

鉄のダブルクレードルフレームだからか? とも考えましたが、自分が所有している80年代のCB750Fは同じダブルクレードルではあるけれどやっぱりエンジンの存在感というか、機関重量を乗っていて感じます。

例えるならCB400SFは、変な話に聞こえるかもしれませんが、ツインスパーのアルミフレームに各所がリジッドマウントされているような、エンジンとフレームの一体感を覚えますね。アルミスイングアームも2本ショックですが、リンクサスのような動き方で微小ストロークから非常に自然な作動感が得られます。

フロントサスペンションは一般的な構成で、スーパースポーツ用のBPFフォークなどではありませんが、正立フォークのスタンダードな感じの良いフィーリングがあります。自分はロードレースで長年、ショーワさんの足回りに親しんできたこともあり、この「ショーワ」のフィーリングがCB400SFにとてもマッチしているな、と感じました。

フレームとエンジンの組み合わせ、そして前後サスペンションの仕上がり…。このCB400SFの車体の完成度に、文句をつけられる人はいないと思います。

画像: 峠道でCB400SFを試す伊藤真一さん。「扁平率60のタイヤを前後に履いている割には、意外なほどに乗り心地が良いのにとても驚きました。ジオメトリーやサスペンション設定、剛性バランスの調整でまとめ上げたのでしょうが、大変な作業だったと思いますね…」

峠道でCB400SFを試す伊藤真一さん。「扁平率60のタイヤを前後に履いている割には、意外なほどに乗り心地が良いのにとても驚きました。ジオメトリーやサスペンション設定、剛性バランスの調整でまとめ上げたのでしょうが、大変な作業だったと思いますね…」

今回の試乗で特に、足回りで興味深かったのは、前後に扁平率60のタイヤを履いていて、これだけ上手く操縦安定性をまとめていることでした。タイヤのエアボリュームが少ないと、コーナリングで限界が突然来たりするものなのですが、CB400SFにはそういう感じがないのです。

画像: 今回のテストは、千葉県内をメインに高速道、一般道、ワインディングなどを走破! CB400SFの乗りやすさは、ツーリングバイクとして使うときにも大きなメリットになります。

今回のテストは、千葉県内をメインに高速道、一般道、ワインディングなどを走破! CB400SFの乗りやすさは、ツーリングバイクとして使うときにも大きなメリットになります。

120km/hまでのパフォーマンスや心地よさ…。日本国内の道路事情や免許制度に最もマッチしている!

扁平率60のタイヤを採用したのは、ハンドリングのキビキビ感を出したかったからだと思います。フロントを70にすると、ハンドルが重くなりますから。フロントリムも3.50サイズですが、「よくぞここまで上手くハンドリングをまとめ上げた!」と感心しました。本当に自信を持って、多くの人にお勧めできるハンドリングです。

自分は90年代を中心に人気があったネイキッドモデルでのロードレース体験はないのですが、10年以上前にレーシングスクールの先生役でCB400SFでサーキットを走った経験はあります。そのとき思ったのですが120km/hまでの速度域はサーキットを走っていて楽しいけど、それを超えた速度レンジではエンジン的にも車体的にも、CB400SFで「これ以上頑張っても…」という気持ちになったのを覚えています。

画像: 普通自動二輪免許(中免)取得の教習車に使われることもあり、老若男女問わず乗りやすいのがCB400SFの美徳。大関さおりさんも、その扱いやすさをテスト中に堪能していました。

普通自動二輪免許(中免)取得の教習車に使われることもあり、老若男女問わず乗りやすいのがCB400SFの美徳。大関さおりさんも、その扱いやすさをテスト中に堪能していました。

最近は高速道路120km/h制限の運用が一部地域で始まっていますが、今回の試乗でCB400SFは120km/hまでの速度域で、一番楽しめるバイクであると改めて思いました。日本の国土や日本の免許制度などのバイク事情に、CB400SFは一番適化したバイクと言えるのかもしれません。

もしCB400SFの600cc版があったら? そうなるとスピードレンジがもっと高くなりますから、ラジアルマウントの制動力が高いフロントブレーキが欲しくなったり、もっと高剛性のフロントフォークが欲しくなったりするでしょうね。でもそうなると、120km/hまでの速度域で一番楽しめるバイクとしての、CB400SF的な良さは失われるでしょうから、600cc版は違う方向性を狙うことになると思います。

ずばりCB400SFは、「日本の名車」ですね。今は自動二輪車の枠では400ccのモデルが減っていますが、自動二輪全体を見てもCB400SFのように、バイクのスタンダード基準になるようなモデルはなかなかないと思います。一般にミドルレンジのバイクに対し、皆がそこまで求めないということもあるのでしょうが、CB400SFのように徹底的に手をかけて開発したモデルは非常に稀少ですね。もし自分が愛車として選ぶなら? そうですね…、好みとしてはブルーメタリックのカラーリングを選びます。

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