CRF250シリーズ・開発メンバー
杉山栄治氏(開発責任者)
本田技研工業株式会社 二輪事業本部 ものづくりセンター
小山克己氏(テスト領域責任者)
本田技研工業株式会社 二輪事業本部 ものづくりセンター
脇田展孝氏(スタイリングデザイン責任者)
株式会社本田技術研究所 デザインセンタープロダクトデザインスタジオ
「いい景色」を楽しめる走りと扱いやすさ向上
「従来型のお客様から、もっとオフロードで自在に扱えるよう車重を軽くしてほしい、という要望が多かったんです。乗った瞬間にはっきり軽くなったと感じてもらえるようなバイクに仕上げたいと考えました」
そう語るのは開発責任者の杉山さん。入社以来、ホンダのオンオフモデルを担当してきた、オフロードひとすじの開発者だ。
ABSつきで4kg、海外仕様のABSなしなら6kgという、新型CRF250Lの驚異的な軽量化はこうして始まった。
「オフロード性能の向上は必要。でも、普段の使いやすさをスポイルしてはいけない」
ストリートからオフロードまで、あらゆる用途に使われるCRF250Lならではの、高い要求のハードル。開発メンバーはフレーム部材の板厚、パイプサイズから見直しながら、コツコツと軽量化を積み重ねていった。
今回はオフロード性能の充実を図り、最低地上高のアップやサスのストロークアップなどが図られたが、開発陣は足つき性も重視して、大変な努力をしたようだ。テスト領域責任者の小山さんはこう振り返ってくれた。
「これまでと同等の足つき性を必ず確保するんだということで、さまざまな努力をしました。シートの股下の部分、サイドカバーの形状、シュラウドの側面部分…ライダーの足の動きを考え、各部をミリ単位で調節していきました。最低地上高は従来より高くなっていますが、新型はまたがった瞬間に足つき性のよさを感じていただけると思います」
フレームを変え、足回りを変えたフルモデルチェンジ。しかし、エンジンはCBR250R用をベースとした従来型の熟成が基本になっている。全面刷新して、新しいエンジンは考えなかったのだろうか? 杉山さんはこう振り返ってくれた。
「エンジンの刷新は検討しました。しかし、課題であった最低地上高のアップや、低中回転域重視の出力特性に対して対応できる手法が見つかり、こうして皆様にご提案できるレベルになりました。
また、このシリーズのエンジンはアシストスリッパークラッチやギアポジションインジケーター、排気量拡大など、魅力につながる仕様が(同じエンジンを使う他のモデルで)設定されており、お客様の要望にお応えできるものとなっています。なので、今回はエンジン刷新に関しては見送りました」
メカニカル面で大きく進化した新型CRF250シリーズだが、装備面の充実も見逃せないポイントだ。
「Lに関しては、LEDヘッドライトは絶対に採用するんだ、と決めていました。ラリーに関しては、航続距離を伸ばすため、タンク容量をアップしました。具体的には、仲間とツーリングに行った際、給油回数が多くて差がつかないようにと考えて、ツーリングユースに見合った航続距離を確保しています」
今回の進化では、L、ラリーともにスタイリングも一層精悍になった。デザイナーの脇田さんは語る。
「目指したのは、ひと目見て走りを予感させ、軽さを感じさせるスタイリングです。各部パーツの面構成や張りなどを工夫し、マスの集中を意識して、これは走りそうだ、と感じていただけるデザインとしています」
より軽く、より機能的に、そしてより精悍になった新型CRF250シリーズ。最後に開発陣からのメッセージを紹介しよう。
「やっぱり、CRFで林道に出かけていただいて、オフロードを楽しんでいただきたいですね。休日にいい景色を楽しんで、いい汗をかいて、明日への活力にしていただけたら嬉しいです。いい思い出を作ってください」
まとめ:オートバイ編集部/写真:柴田直行、ホンダ