文:竹山ケンタ/写真:西野鉄兵
ホンダ「CB125R」インプレ(竹山ケンタ)
全域でパワフルになったNewエンジン
2021年よりDOHC4バルブとなったエンジンは排気量こそ据え置きながら、年々厳しくなる排ガス規制に対応してなお、パワーとトルクを上げてきた。向上した最高出力は2PSだが、体感的にはそれ以上に感じるほどだ。
肝心の出力フィーリングは、7000rpm付近からパワーが盛り上がりはじめ、最高出力15PSを発揮する10000rpmのピークを超えても出力の頭打ち感はほとんどない。そしてそのままレッドゾーンの11000rpmまでキッチリと回し切る。
ボア×ストローク比が旧モデルよりもロングストロークになった事で、まるで排気量が上がったように感じる。4000rpmくらいから厚みのあるトルク感があり、回転数が上昇していくなかでも、トルクの「谷」を感じないのだ。
このようなつながりの良いトルク特性は、ストップ&ゴーの多い市街地でのパフォーマンスが高い。ひとつのギアで引っ張ってもよし、エンジンをあまり回さず、早めに、リズミカルにシフトアップしていくもヨシ。どのような乗り方もこなせるのである。
小排気量のシングルエンジンらしく8000rpmより上の高回転域ではステップまわりに高周波の細かい振動は発生するが、街乗りの常用回転域ではないし、許容の範疇だ。
あと、これはホンダのラインアップモデルすべてに共通していることだが、シフト操作時のなめらかな質感と重さ、それにクリック感。シフトフィールはどのメーカーと比べても抜群にいい。
海外生産で、特に小排気量帯のモデルになるとシフトまわりの「粗さ」が出てくる傾向にあるが、ホンダ車にはそれがまるでないのだ。
GB350に試乗した時にも感じたのだが、生産と品質のクオリティが非常に高く、どんなものにも決して手を抜かないこだわりが感じられる。
上級車譲りの車体構成
実車に跨ってみると、ハンドル・ステップ・シート着座位置のバランスは良く、体のどこにもストレスを感じない。旧型から引き継ぐ、とても乗りやすいライディングポジションだ。
ハンドルバーは取り付けのクランプ部が太く、グリップにかけて径が細くなるテーパータイプを採用。モトクロッサーには多く普及しているタイプだ。すべて同径のハンドルバーよりも衝撃や振動に対して吸収性に優れているのが特徴となる。見た目もかっこよく、新世代CBに相応しい装備といえそうだ。
ステップバーはアルミ製。ブラケットの一部はスイングアームのピボットシャフトと共締めになっていて、車体への荷重入力や反応がダイレクトに感じやすい。そのおかげで車体との一体感があり、スポーティな乗り味を印象付けることに成功している。
シート高は815mmと少し腰高な印象。シートクッションは薄めだが、またぎ部分の幅が広いので、両足カカトが少し浮く程度の足つき性だ。
しかし、薄めのシートクッションというのは、ライダーとバイクの一体感を生む。それに、座面が広いおかげで加速する際にもしっかりとライダーを支えてくれる。さらには低速走行時のバランスがとりやすく、安心感を得られるメリットがある。
フロントフォークは125ccクラスとしてはかなり太めの、インナーチューブ径Φ41mmのSHOWA製SFF-BPフォークを標準装着する。中型~大型クラスにも採用されるようなフォークだ。BP=ビッグピストンは受圧面積が多いため減衰力応答性が高く、動き出してすぐに減衰力が発生しているのが感じ取れる。
加減速やコーナリングなど、車体姿勢の変化が大きくなる場面では、動き出しから減衰力が効いているほうがフワつきが少ない。
フロントフォークのアウター/インナーチューブ径の太さから、ガッシリした剛性感でスポーツ性の高さはうかがえる。しかし、市街地走行がメインとなるであろう125クラスとしては、少々オーバースペック感があるのも事実。吸収性よりもスポーティな方向に寄せたセッティングだ。
それでもエントリーライダーにとっては、最初から「良いモノ」に触れられる絶好の機会だし、ある程度ウデに自信のあるライダーでも不満は感じないだろう。
ただ、ひとつ覚えておいた方がいいのが、太ければいいってワケでもないこと。新しいモノに触れる機会に、車体を構成しているパーツの事をよく理解するべし。
まずインナーチューブ径の太いフォークは、シール類との接触面積が多く、細い径のフォークよりも絶対的に「フリクション」が高くなる。ビッグピストンも同じようにシリンダー内壁との接触面積が多くなるため、フリクションが増すことになる。
わからない人は、机の上に消しゴムを置いて指で押してみよう。よくある長方形の消しゴムが縦のとき、と横にベタっと寝かせたとき、どちらが抵抗があって動き出しにくいだろうか。
だが「フリクション=抵抗」は、ライダーに伝わるとき「物に触れている感触」となる。そのため、サスのストロークしている感覚をライダーが感じ取りやすくなる。つまり、車体の状況(動き、挙動)を感じ取りやすいのだ。
このことから、CB125Rはただの移動のアシだけではなく、ライダーの感覚を育成する事ができるバイクだと言える。
フレームやスイングアームの剛性も非常に高く、許容される荷重設定はワンランク上のクラスと同等だろう。リアサスは吸収性に振った、少し柔らかめのセッティングだ。車体のシッカリ感を生かしてリアサスを硬めにしてやれば、スポーツバイクとしてのポテンシャルはさらに高まるだろう。
ブレーキシステムは旧型を継承し、ABSにはIMU(車体姿勢想定システム)の採用により安全性をさらに高められている。車体の姿勢、つまり前が下がっているとか、コーナーで傾いているとか、すべて感知して、車体姿勢の状況によってABSの制御をコントロールしてくれるのだ。
昔センパイが言っていた、「ジャックナイフ」や「握りゴケ」なんて言葉が電子制御の進化によって無縁になっていくだろう。
一部のベテランライダーに「電子制御なんていらない」とかいう意見もあるが……事故を起こさずに、安全に家に帰るまでがライダーの使命なのである。
旧型からのアップデートでNewエンジンとなり、車体は同クラスの他モデルにはないポテンシャルを得た。ここ数年で海外メーカーも含め、各社ラインアップを揃えてきた125クラスが昔のバイクブーム全盛期だった時代を超えるくらいにさらにアツくなることに期待したい。
文:竹山ケンタ/写真:西野鉄兵
ホンダ「CB125R」主なスペック
全長×全幅×全高 | 2040×820×1055mm |
ホイールベース | 1345mm |
最低地上高 | 140mm |
シート高 | 815mm |
車両重量 | 130kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 124cc |
ボア×ストローク | 57.3×48.4mm |
圧縮比 | 11.3 |
最高出力 | 15PS/10000rpm |
最大トルク | 1.2kgf・m/6700rpm |
燃料タンク容量 | 10L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 24゜12′ |
トレール量 | 90mm |
最小回転半径 | 2.3m |
タイヤサイズ(前・後) | 110/70R17・150/60R17 |
ブレーキ形式(前・後) | Φ296mmディスク・Φ220mmディスク |
メーカー希望小売価格 | 47万3000円(消費税10%込) |