文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:柴田直行
ドゥカティ「モンスター/モンスター+」インプレ・解説(宮崎敬一郎)
自由自在に楽しめる万能スポーツに大変身
第4世代となる新型モンスターは大変身して登場した。エンジンはSSやムルティストラーダなどにも採用される、937ccのテスタストレッタ11°。フレームはパニガーレからヒントを得たアルミフロントフレームに変更。ドゥカティ伝統のトレリスフレームを辞めたわけだ。
しかし、モンスターらしいフォルムである「バッファローバック」と呼ばれるタンク上のグラマラスなラインは継承し「モンスターらしさ」を主張する。
車体レイアウトの刷新まで行ったこの大変革の狙いは、圧倒的な軽量化とこれまでのモンスターを越えた運動性能。そしてこれまでと変わらない、ライダーに対する扱いやすさの維持だという。
幅が広く絞りの弱い、独特な形状のハンドルも変わった。アクションパフォーマンスなどで威力を発揮する形状だが、日本では好き嫌いが分かれた。それを今回少し幅を狭め、絞りを少し入れた形状に変更している。
ある程度慣れの問題ではあるが、新型はかなり取っ付きやすくなったと思う。
大変化したのはその身軽さ。走った際の車体の印象も、従来のミドルモンスターより低く、前後も短くなった印象で、気軽に向きが変わる。旋回性云々というより、こういう方がモンスターのイメージに合う気がする。
前後サスはシンプルで、リアのプリロード調整があるだけというベーシックな仕様。日本仕様は少しバネレートを抑えたしなやかな設定で、おかげで乗り心地もいい。
1Gでの沈み込みが大きいから、車高がさらに低くなったりするが、運動性能に悪影響はない様子。大きめのギャップなどは苦手で、サーキットでスポーツ走行を楽しむようなことをすると、ちょっとしたギャップでラインをアウトに変えてしまうと思うが、深めの許容リーンアングルを活かして峠道を流したり、ちょっと駆け足する程度ならビックリするくらい路面を捉えてくれる。
エンジンはこのクラスにしてはメカノイズが少し大きいことを除けば、自由自在に使える使い勝手のいいもの。程よくピークを抑えて低中域のトルクを太らせたのも扱いやすさに貢献している。パワーモードをレスポンスを優先した「スポーツ」にしても、何の苦もなく街中の渋滞を走れる優しさがある。
100km/h・6速は約4100回転。車体の軽さと相まって強力な追越しダッシュができる。パワーバンドは7500〜1万回転といったところだが、上手く調教されていて滑らかにパワーが増幅するので、ビギナーでも身構える必要はないと思う。
スポーツ指向の強いドゥカティだが、新型モンスターは間口の広いスタンダードバイク。ドゥカティ初心者だけでなく、ちょっと粋なスポーツバイクを探しているライダーにも十分に応えるスポーツ性とストリートでの取り回しやすさを備えている。興味があるなら、まずは跨ってみて欲しい。