第1世代+NOSで歴代オーナーのマルチユースに応える
「今はふたり目のオーナーさんが付いていますが、最初のオーナーさんは、ハヤブサでドラッグレースもサーキット走行も楽しみたいって方でした。仙台(ハイランド。2014年に営業終了。ロードコースとドラッグコースの両方が備わっていた)までツーリングを兼ねて行って、土曜日はサーキット走行する。日曜日はマフラーとリヤタイヤをドラッグレース用に換えて、アクスルシャフトをロングホイールベース位置に差し替えてドラッグコースを走っていました。NOS(亜酸化窒素ガスの強制噴射で瞬間的な過給を行うシステム)も付けて。
その後車両を手放される話になったんです。そこに、第1世代ハヤブサに乗ってスーパースポーツを挟んだ後に、もう一度第2世代を乗って、それにNOSを付けたかったという方がいた。第1世代ですけどNOS付きがありますよとこの車両を紹介すると、OKと。世代は違っててもNOSの付いたハヤブサということで良かったんですね。この方もJD-STERに出たり、ツーリングにも通勤にも使ったりしています。
ハヤブサのオーナーさんは、そんな方が多いんです。これ1台でどこにでも行くし、何にでも使えるという感じ。“曲がらないんじゃない?”と言う人もいますけど、ロング化していても普通に走れて、曲がれるんですよ。極端に言ってしまうと、スポーツの形をしたクルーザーみたいな感じな仕上がり。峠イチバンという価値観からどんどん変わってきて、普通に楽しめればいいんじゃない? って方はそうやって使うんでしょう」と、この車両に手を入れたクラスフォーの横田さんはハヤブサの背景を説明してくれる。
ロングスイングアームやローダウン、ワイドタイヤはある意味クラスフォーの標準スタイルとなり、同店で手を入れたハヤブサ群を見ていると、この長く、低い状態がノーマルだと思ってしまうほどだ。
「ドラッグレースではリヤのトラクションを高めながらフロントアップ、つまりパワーの無駄遣いを防ぐ定番。ストリートでは、格好良くなります。あと、足着きがむちゃくちゃいい。これは結構大事で、安心感がとても大きくなるんです」(同)。ハヤブサのようにパワーも車重も車格もあるバイクでは、不用意な立ちゴケや転倒のリスクが減るのがありがたい。ローダウンはそれを無理なく実現するし、パフォーマンス感も崩れない。そのためのローダウンリンクは同店で全年式使えるキットを用意しているし、それで使い道が広がるなら、ファンも増える。これを横田さんは「空冷ZシリーズにおけるLTDの立ち位置ですよね」となぞらえる。
アフターマーケットパーツが豊富にあって車体の各部に手が入りやすく、いわゆるタマ数も多い。メーカーこそ異なるが、スズキ・ハヤブサがカワサキの空冷Z同様に“使えるバイク”としてアメリカで高い人気を得た理由は、このような点にあった。クラスフォーで手を入れたこの第1世代ハヤブサ・カスタムは、そうしたハヤブサへの意識が日本でもかなり近いということを納得させてくれる1台となっていそうだ。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
Detailed Description 詳細説明
ハンドルはラバーマウントからダイレクトマウント化し、フロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダーはブレンボラジアルに変更。ヨシムラ・デジタルマルチメーターやMSDシフトライト、NOSスイッチも加わる。全体的なカスタムは'01年当時に行われていた。
NOSシステムは追加しているがエンジン本体は第1世代のノーマルで、ドラッグレースに通勤にツーリングにと2万9000km走って劣化なし。アルミツインスパーフレームもノーマル。外装も2001年型K1のノーマルそのままだが、フロントエアダクトが追加されている。
右横出しのマフラーはBrock's製サイドワインダー・チタンでクラッチカバーはオリエントエクスプレス。ステップはノーマル。
リヤをフェンダーレス化した上で、タンデムシート下にはにオリエントエクスプレス製NOSコントローラー等を収める。ウインカーはフロントがノーマル、リヤはレース時の着脱性の良さも兼ねてアクティブのナンバーホルダー一体タイプに換装している。
φ43mm倒立フロントフォークや3.50-17サイズのホイール、TOKICO6ピストンキャリパー/φ310mmディスク等のブレーキなどはノーマルだ。
6.00-17サイズのホイール、ショックやブレーキ等のリヤまわりパーツもノーマル。スイングアームはTRAC製ロングタイプに換装。
TRAC製スイングアームは前オーナーのサーキット走行では4インチ(約10cm)ロング位置アクスル、ドラッグレースや街乗りでは写真の8インチ(約20cm)ロング位置アクスルで使うが、違和感なく乗れる。NOSのボトルはこのように車体左サイドに装備している。