2014年に発売された時には誰もが驚いたヤマハ トリシティ! 量産市販車で、しかも小排気量モデルでこんなメカが必要なのか? けれど、そんな意見に反してフロント2輪モデルは増殖を続けている。
文:中村浩史/写真:折原弘之
画像2: ヤマハ「トリシティ155」インプレ

バイクって怖いでしょ? をことごとく解消してくれる

そしてフロント2輪のメリットをもうひとつ。スクーターをはじめ、小径ホイールならではの不安定さといえば、不意の横風。特にスピードが出ていないとき、直進している時に横風を食らう瞬間がよくある。

この時、小排気量、小サイズのバイクほど風にあおられて危険を感じるものだけれど、この局面でもトリシティは超安定性を発揮してくれるのだ。

これも冒頭にあげた3点支持の大メリット。左右方向にストローク、つまりクルマでいうトレッド方向に踏ん張ってくれる、しかも不安定さが恐怖につながるフロントが踏ん張ってくれることで、もうひとつスクーターや小径ホイールの怖さが解消するのだ。

今回、試乗で「横風の名所」である首都高横羽線・ベイブリッジを通過したんだけれど、不意の横風もまったく緊張するほどではなかった。これは、ビッグバイクですら、なかなか味わえない超安定感だった。

画像3: ヤマハ「トリシティ155」インプレ

こうしてトリシティは、スピードを出そうが出すまいが、バイクの不安定さ、つまりキャリアの浅いライダーや、スクーターばかり乗るユーザーが恐怖だと感じる「バイクのデメリット」をことごとく解消してくれる。

バイク乗りたいけど、ふらふらして怖いじゃない? スピード出してない時とか、路面がデコボコだったり、風吹くとあおられちゃうでしょ? そんな、バイクに乗るハードルのひとつを、トリシティがなくしてくれている。

この特性にこそ、トリシティをはじめ、ヤマハが提唱するLMWの誕生意義がある。LMWの機構や排気量の違いはあれど、これはトリシティ125/155/300、そしてナイケンGTすべてに言えることなのだ。


LMWの可能性を広げる次の展開はあるのか?

トリシティ初代モデルの125に続いて発売されたのは、高速道路にも乗れる155、そして300。少しうがった見方をすると、LMWのメリットが高速走行でも大きい、と125で実証できたからこそ、高速道路を走れる排気量枠で発売されたのかも。

前ページに書いたLMWのメリットに引き続き、超安定性以外に感じるトリシティのメリットが、高速クルージングの時の快適さ。これは、フロント2輪の技術的メリットと同時に、精神的メリットが大きく感じられる意味もある。

画像: ▲バイクの「怖さ」を解消してくれる以外に走るたびにLMWのメリットを感じる。普通免許枠のNIKENがあればなぁ。

▲バイクの「怖さ」を解消してくれる以外に走るたびにLMWのメリットを感じる。普通免許枠のNIKENがあればなぁ。

125の12PSから15PSまでパワーアップされた155は、実は100km/hくらいのクルージングを難なくこなしてくれる。

パワーフィーリングは、125よりひと回り力強い発進トルクから一気に回転が伸びて90km/hあたりまで一気に加速。そこからじわじわとスピードが上がり、100km/h巡行はラクラク、120km/h巡行は長時間になると、エンジンがちょっとキツそう、という感じだった。

そのスピード域のステビリティは、一般道で感じられるメリットを総合したような安心感がある。つまり125ccクラスのボディサイズだとは思えない超安定性で、路面の凹凸やうねり、轍に強く、横風に踏ん張る、というフィーリング。100km/hというスピード域なら、このサイズや排気量クラスでは飛びぬけている安心感だと言っていい。

バイクの、小排気量の、特にスクーターに感じるハードルをことごとく解消してくれるトリシティ。125からスタートしたスクーターと、マニュアルスポーツのナイケンGT。次はスポーツバイクのハードルを下げるナイケン400、なんて見てみたいな。

誰もが驚くフロント2輪のLMW!

LMW(リーニング・マルチ・ホイール=車体がバンクする3輪以上の乗り物)とヤマハが名付けた、フロント2輪のオートバイ。まず一見して、バイクのようでバイクでない、車体がバンクして、そこにフロント2輪が追従してくる­――構造や難しい理論は分からなくても、乗れば誰でも違いに気づく!

画像: YAMAHA NIKEN GT 総排気量:845cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:835mm 車両重量:267kg 税込価格:198万円

YAMAHA NIKEN GT

総排気量:845cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:835mm
車両重量:267kg

税込価格:198万円

MT-09とエンジン、フレームを共用するLMW。前2輪独特の曲がりにくさを解消した「アッカーマンジオメトリ」を使用した、何にも似ていない、世界で唯一ヤマハが作り上げた異形の存在だ。

画像: YAMAHA TRICITY 300 総排気量:292kg エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒 シート高:795mm 車両重量:237kg 税込価格:95万7000円

YAMAHA TRICITY 300

総排気量:292kg
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
シート高:795mm
車両重量:237kg

税込価格:95万7000円

LMWの「第2期」といってもいい300は、他のヤマハLMWモデルが持っていないスタンディングアシストを持ち、さらにLMWの魅力を発展させたモデルになっている。2020年9月発売。

画像: ▲こちら125&155 絶対的な安定感が高く、ライダーに緊張を強いないことを目指した初代LMWのトリシティ125。155も同じ構造で、125が税込42万3500円(シグナスX:税込33万5500円 NMAX:税込36万8500円)という低価格での発売も驚きだった。

▲こちら125&155

絶対的な安定感が高く、ライダーに緊張を強いないことを目指した初代LMWのトリシティ125。155も同じ構造で、125が税込42万3500円(シグナスX:税込33万5500円 NMAX:税込36万8500円)という低価格での発売も驚きだった。

画像: ▲こちら300 第2世代LMWとして新設計されたトリシティ300用の前2輪構造。なんといっても自立ロック機能がついているため、発進停止がさらにイージーになり、押し引きの時にも車体のバンクを制限させられるため、扱いが楽に。

▲こちら300

第2世代LMWとして新設計されたトリシティ300用の前2輪構造。なんといっても自立ロック機能がついているため、発進停止がさらにイージーになり、押し引きの時にも車体のバンクを制限させられるため、扱いが楽に。

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