文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年12月9日に公開されたものを転載しています。
英国警察が協力するプロジェクト!
近年は2輪EVによる速度記録挑戦がアツくなっており、先日も仏ヴォクサンが数々の新記録を樹立して話題になりました。そのヴォクサンのライバルと目されているのが英WMCで、彼らも新記録樹立を目標に空気抵抗低減とダウンフォース発生の効果をねらったトンネルを車体中央に備える、WMC250EVを開発しています。
WMC250EVという車名の「EV」は、言うまでもなく電気自動車を意味していますが、もうひとつの彼らの大事なプロジェクトであるWMC300FRの「FR」とは、いったい何を意味するのでしょうか?
その答えは、ファースト・レスポンダー・・・つまり、事故や災害などの緊急事態の際、いち早く到着して現場対応をする専門職を意味しており、WMC300FRの場合は警察車両としての役目を想定しています。WMC300FRの開発は最初の段階から英警察が関与しており、国家警察最高評議会オートバイ部門の長である、ニック・アダレイがアドバイスしています。
WMC300FRは開発コストを下げるため、ヤマハの人気モデルであるトリシティ300のコンポーネントを多く流用しているのが特徴です。トリシティシリーズ最大の個性であるフロント2輪の足まわり、28馬力の4ストローク単気筒ICE(内燃機関)は、トリシティ300のものをベースに取り入れています。車体については、速度記録挑戦用のWMC250EV同様に空力トンネルを設置。そのサイズはMWC250EVのものより小さいですが、狙う効果については一緒です。
動力に関しては、トリシティ300用の単気筒エンジンに、2つの56Vバッテリーで駆動される5kWのモーターを組み合わせたハイブリッド方式を採用しています。エンジン回転低速域での電気モーターによるアシストと空力トンネルによる効果で、WMC300FRは同様の性能のICE車比でCO2排出量を50%削減することができると、WMCは説明しています。
モーターサイクルの脱炭素化に効果大!? 今後の発展に期待しましょう!
まずは警察車両用として、WMC300FRの生産をスタートさせるのがWMCのプランですが、将来的には警察だけでなく救急医療などのファースト・レスポンダー市場での展開も目論んでいるとのこと。EVよりも部品点数は増えるものの、航続距離の長さや燃料補給の容易さでは現時点では圧倒的に上なハイブリッド方式のWMC300FRは、排出CO2を手早く削減できる、時代の要請に対する解答といえる存在なのかもしれません。
現在市場に供給されている2/3輪ハイブリッドの多くは、ICE125cc相当クラスのものが多いですが、趣味の乗り物である大型車の分野でも増えたら面白いだろうな・・・と思うのですが、いかがでしょう? ともあれ、電気を使った2/3輪車の、さまざまな可能性を追求するWMCの今後の動きに、今後も注目していきたいです!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)