2023年シーズンから、電動バイクのロードレース選手権「FIM エネル MotoE ワールドカップ」に車両供給をするドゥカティですが、早くも開発中のマシンの姿が公開されました。詳細なスペックは明らかにされていませんが、細部を観察する限り「軽さ」に重きを置く仕様になっていることがうかがえます。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年12月21日に公開されたものを転載しています。

今年10月の発表から、約2ヶ月後には早くもテストの模様を紹介!

MotoGPクラスに参戦を続けるドゥカティが、2019年のクラス開設初年度からMotoEへ競技車両を供給するイタリアのエネルジカに代わり、2023年度からその役目を担うという衝撃的ニュースが報じられたのは、今年の10月のことでした。

そして約2ヶ月後の12月・・・ドゥカティはミサノで開発中のMotoEマシンを早くも公開! その仕上がりぶりからは、ドゥカティの電動車開発がだいぶ前から始まり、順調に進んでいたことがうかがえます。

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この電動バイクのプロトタイプは、「V21L」というコードネームが与えられています。ドゥカティのMotoGPマシン、デスモセディチの命名法から推察するに「21」はモデルイヤー・・・2021年型を意味するものと推察されますが、「V」と「L」が何を意味するのかは今のところわかりません。V21Lの開発はレース部門であるドゥカティ コルセ チームと、ドゥカティeモビリティディレクターのロベルト・カネが率いる、ドゥカティR&Dのエンジニアたちが担っています。

画像: イタリア・ミサノを疾走するV21Lと、ドゥカティテストライダーのミケーレ・ピロ。 www.ducati.com

イタリア・ミサノを疾走するV21Lと、ドゥカティテストライダーのミケーレ・ピロ。

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ミケーレ・ピロ(ドゥカティテストライダー)
「MotoEプロトタイプをサーキットテストすることは、とてもスリリングなことでした。なぜなら、これはドゥカティの歴史における重要な章の始まりを意味するからです。バイクは軽く、すでに良いバランスを持っています。そしてスロットルの開け初めのつながりや、人間工学に基づいた設計は、MotoGPマシンに非常によく似ています。もしこの静粛性と、今回のテストで出力を本来の性能からわずか70%に制限した、という事実がなければ、"自分のバイク"に乗っているような錯覚に陥ってしまうほどです」

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画像: V21Lのスペックは公表されていませんが、ボディワークはカーボンファイバー製で、リンク式モノショック方式のリアスイングアームもカーボンファイバー製です。クラッチレバーやシフトペダルが存在しないことから、モーター直結のシングルスピード仕様であることがうかがえます。 www.ducati.com

V21Lのスペックは公表されていませんが、ボディワークはカーボンファイバー製で、リンク式モノショック方式のリアスイングアームもカーボンファイバー製です。クラッチレバーやシフトペダルが存在しないことから、モーター直結のシングルスピード仕様であることがうかがえます。

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ロベルト・カネ(ドゥカティeモビリティディレクター)
「私たちは今、本当に素晴らしい瞬間を体験しています。これが夢ではなく、現実であることが信じがたいほどです。ドゥカティ初の電動車のサーキット走行は、そのユニークさだけでなく、パフォーマンスの目標と、極めて短いタイムスケールの両方において挑戦的な取り組みである点でも、例外的なものです。だからこそ、このプロジェクトに携わるチーム全員の努力は素晴らしく、今日の結果は、ここ数カ月の努力に報いるものだと思います。確かにまだ完成したわけではありませんし、前途はまだまだ長いのが現実ですが、その過程の最初の重要なひとつの「レンガ」を、私たちは積み上げたのです」

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V21Lを母体とする、公道用電動バイクの誕生を期待したいですが・・・

M.ピロが「自分のバイク」・・・普段テストで乗るMotoGPマシンと錯覚する、とコメントしたことから、開発中のV21Lはかなり軽量に仕上がっていることが予想されます。現行MotoEマシンのエネルジカ・エゴ・コルサは、動力性能と信頼性の高さは評価されるものの、250〜260kgというロードレーサーとしてはかなりヘビーな車重がネガとしてあげられています。

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V21Lはフェアリングやダミータンクだけでなく、シートレール一体型シートやスイングアームに、軽量素材のカーボンファイバーを採用。そして2輪EVの重量増の原因となりがちなバッテリーについては、カーボンモノコックシャシーのストレスメンバーとしても活用されていると思われます。この手法は、近年公道用市販2輪EVでも試みられる例が多いですね。

バッテリーを含むモノコックシャシーの前後には、アルミ合金製のステアリングヘッド部と、スイングアームピボットおよびリアショックマウント部が取り付けられています。ハンドリングのセッティングには、これらアルミ合金部の箇所を変更・調整することで対応する・・・という設計思想なのでしょう。

画像: カーボンファイバー製フェアリングの開口部からは、ラジエターの存在を見ることができます。このことから、モーターは液冷式を採用していることが推察されます。 www.ducati.com

カーボンファイバー製フェアリングの開口部からは、ラジエターの存在を見ることができます。このことから、モーターは液冷式を採用していることが推察されます。

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ドゥカティはプレスリリースのなかで、MotoE車両開発における最も重要な課題は、バッテリーのサイズ、重量、航続距離に関すること・・・と述べています。また目標として「高性能で軽量という特徴を持つ電動車両を、MotoE全参加者に提供すること」を掲げています。

またこのプロジェクトの焦点としては、性能向上、重量抑制、そしてによってレース中の一貫したパワーデリバリーの実現の3つをあげ、そのために冷却システムの開発には細心の注意を払っていると明かしています。

MotoE車両開発経験は、市販製品の研究開発の基本的な"支え"になるという考えを、ドゥカティはプレスリリースのなかで記述しています。そして技術が可能になり次第、すべてのエンスージャストを満足させられる、スポーティで、軽量で、エキサイティングな公道用電動バイクを作り出すことがゴールである・・・とも記しています。"その日"が来るのは、早くてもV21Lが公式デビューする2023年シーズンが始まってから・・・以降になると思われますが、できるだけ早く私たちのもとに公道版V21Lが届けば嬉しいですね! 今後のドゥカティの動向に、注目しましょう!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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