文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年3月26日に公開されたものを転載しています。
1970年代の米国モトクロスシーンで活躍したCan-AMブランド!!
スノーモービルやPWC(パーソナルウォータークラフト)、そして近年では3輪のスパイダーなど、パワースポーツの分野でさまざまな製品を製造販売するBRPですが、ボンバルディア社(当時)は1970年から2輪業界に参入していた時代がありました。
1972年、ボンバルディア社は生産部門とレースのエキスパートであるスタッフのゲイリー・ロビソンと、世界モトクロス世界選手権王者に2度輝いた英国の英雄、ジェフ・スミスの指揮の下、Can-Amブランドを創設しました。
Can-Amは1972年夏に、市販車を市場投入する前からモータースポーツ活動を熱心に展開する、非常にエンスージアズムにあふれたブランドでした。モトクロスモデルのMX-1、そしてエンデューロ(デュアルパーパス)モデルのT'NTは、北米の数々のレースイベントで活躍。1974年にはゲーリー・ジョーンズ、マーティ・トライプス、ジム・エリスの3名がAMAナショナル250クラスの年間ランキングで1-2-3位を達成するという、アメリカのモトクロスの歴史に残る偉業を成し遂げています。
Can-Am製モーターサイクルは、部品の60%近くをボンバルディア社傘下の子会社で生産し、組み立てをケベック州ヴァルクール工場で行っていました。そして要のパーツであるエンジンは、1970年にボンバルディア社が買収したオーストリアのロータックス製を採用していました。
1980年ころになると、質・量ともに日本勢が2輪業界を圧倒する状況が確固たるものとなり、ボンバルディア社はCan-Amブランドのライセンスと開発および生産を英国のアームストロング-CCMへ委託することになりました。そして1987年にはCan-Am部門の運営は停止されましたが、2006年にオールテレインビークル用のブランド名としてCan-Amは復活し、今に至っています。
アルタ・モータースのレガシーが、新たなBRP製2EVに活用される!?
BRPのリリースによると、Can-Amの2輪市場再参入は同ブランドの50周年を記念する、節目のタイミングで行われることになります。そして過去に製造・販売されたCan-Am車はすべてICE(内燃機関車)でしたが、再参入の担い手となるCan-Am車はすべて2EV・・・電動バイクになります。
ホセ・ボワジョリ(BRP社長兼CEO)
「モーターサイクル業界が電動化にシフトしていく中で、私たちはモーターサイクルの伝統を取り戻し、市場に再参入する機会を得ました。この新しい製品カテゴリーは当社にとって非常に重要であり、Can-AmモーターサイクルがBRPの電動ラインアップの中で最初に消費者に確認されるEVモデルであることに感激しています。(中略)私たちの多くは、初期のダートバイクに乗った非常に楽しい思い出を持っています。そして今、Can-Amブランドの豊かな歴史を基に、新しい世代のモーターサイクリストと電気自動車の愛好家に感動と刺激を与えることを楽しみにしています」。
もっともBRPが、いずれ2EVを製品化するのでは? という予想は業界の間ではささやかれてもいました。2019年2月、BRPはアメリカの2EVメーカーだったアルタ・モータースの持つ特許や資産の一部を取得したことを発表。その前年にハーレーダビットソンとの提携が破綻したことで、アルタ・モータースは破綻したわけですが、彼らが培ったノウハウは新生Can-Am製2EVに活かされることになるのでしょう・・・。
すでに海外のメディアでは、特許情報を下にこれから登場するであろう新生Can-Amの2EVを予想する記事が公開されています。モトクロッサーやエンデューロなど、オフロードモデルが主だった旧Can-Am製2輪と異なり、新生Can-Amの2EVのラインアップはオフロードはもちろん、オンロードスポーツやスクーターなど、さまざまなカテゴリーで展開されることになりそうです。
BRPの公式YouTubeチャンネルでは、2024年半ばには発売される予定の2EVのティーザー動画が公開されています。北米パワースポーツ業界の雄であるBRPが生み出すCan-Amブランドの2EVたちが、どれだけ魅力的なモデルになるのか・・・期待したいですね!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)