※本企画はHeritage&Legends 2021年1月号に掲載されたものです。
ゼファー1100/750は基本丈夫、だからこそ注意したい
「ゼファーで何か起こるのが一番多いなと思えるのは、電気系なんですよ」。ストライカーワークスの店長・鈴木さんはこう言う。
同店は国際級ライダーとして知られる新 辰朗さんが主宰する、カラーズインターナショナルのサポートショップ。2019年10月にストライカーシステム横浜から改称したが、同店にはゼファー1100/750のユーザーも多く訪れている。
「燃料タンクの下のスペースが狭いんですね。ゼファー1100はその上、ツインプラグでプラグコードは8本、コイルも4つと入るものが多くて、ハーネスも全部ここを通るのでごちゃついてしまう。だから、なにかの拍子でイグニッションコードがスポッと抜けたりすることが多い。まずはそこを見ます。
コイルやコードも使っていけば中身は劣化するんですけど、何かのついででタンクを外した時に“電装もウオタニSP2にしようか”と交換する。それで結果的に新品にリフレッシュされて、自覚はないけどそんなトラブルを避けられたという方も多いと思います。まあこれが先頭に出るくらいですから、一般にはマイナートラブルに気をつけてくださいという感じです」
鈴木さんの説明はとても丁寧でスムーズだ。そう言われてタンクを外してみると、フレームにはセンターチューブがなく、ツインスパーのように左右1本ずつのメインチューブがある。この間のフラットなスペースにメインハーネスやイグニッションコイル等が入るので、先のトラブルも無理のない話と言えそうだ。
「一方、750の場合はスプロケットカバーを社外品に交換する際に、ステーターコイルからのカプラが剥き出しになります。ここは水や泥、油がかかりやすいので、そのままだと配線もカチカチ、接続部も汚れて充電不良が起きます。要対策です。1100はオルタネーター別体ですから、ここは大丈夫ですね」1100/750ともども、特有と言われる症状は少ないようだ。
今回取材したゼファー1100はオーナーが長年大切にしていた車両
ここで紹介するゼファー1100はオーナー自身が手を入れて楽しんでいるもの。ダイマグ3本スポークホイールで前後17インチ化(3.50/5.50幅)され、オーリンズフロントフォーク&リヤショックをセットしスイングアームはウイリー製。ブレーキはAPレーシング4ピストンキャリパー+プラスμディスク。左右マスターシリンダーはブレンボ・ラジアルで、シートはスプリームシート、キャブレターはFCRφ37㎜、マフラーはストライカー・フルチタンのリミテッドエディション等、カスタムとしても参考になる1台だ。
SHORAIリチウムバッテリーやその周辺に積まれる自選車載工具など、常日頃からよく面倒が見られていることも分かる。
またエンジンは現状でヨシムラピストン等を組んでいるが、今回ストライカーワークスでJEまたはコスワースピストンでのオーバーホールに進む。普段は自分でいじり、こうした重整備をプロショップに依頼するというのも確かな方法で、この車両のようにオーナーそれぞれが大事にいじるバイクというのが、今のゼファー1100/750の傾向のひとつのようだ。
特に気をつけたいのは電気系とタンク下だ
左右のフレームメインチューブに挟まれた長い箱状の空間(タンク裏もこれに合った形状)にメインハーネスや各部配線類、そして気筒当たり2本のプラグを持つツインプラグとして4つのイグニッションコイルが収まるゼファー1100。このスペースと電気系が注目点だ。
タンク本体をチェックしてその下のスペースも整理する
燃料タンクまわりの整備性自体は、旧車同様でシンプル。ただタンクが載る部分は、上の写真の同部分を角度を変えてみると、上下のスペース的にあまり余裕がないことが分かる。タンク裏もこれに合わせて平たく成型されているしエンジン熱の影響もあるので、せめて配線はすっきりさせたい。
タンク自体も内部汚れや錆に気をつければ燃料系へのトラブルも引き起こさなくて済む。
コードの劣化やカプラーの抜けは起きやすい
左右それぞれのメインチューブ内側に2個ずつ、計4個が収まるイグニッションコイル(写真ではASウオタニ製に換装)。このような換装車では装着の際に配慮する機会があるが、ノーマルの場合チェックの機会も少なく、下イラストのように抜けてしまう。
配線に無理があってコード(リード線)に力がかかるとこういうことが起こりやすいので気をつける。もちろん大前提として、配線やカプラーの劣化にも気をつけよう。