文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年8月27日に公開されたものを転載しています。
世界市場の開拓に、力を入れているCAKE
2022年CAKEは、世界各国での事業拡大に力を入れています。6月にはフランス・パリにポップアップストアをオープンするとともに、今年後半の仏国内でのフルサービスを開始する予定であることを公表。そして7月にはドイツ市場についても、フランス同様に展開中のポップアップストアだけでなく、フルサービスを今年後半にスタートさせると予告しました。
パリは市内中心部の自動車移動を制限する法律の導入を、2023年後半からの施行で計画していますが、もし新法が実現した場合は、10万台/日の自動車が市内の路上からいなくなると試算されています。CAKE製の電動車はその法律による規制の対象外なので、CAKEとしてはこれは大きなビジネスチャンスになります。
またパリでは、9月1日よりICE(内燃機関)搭載2輪車は駐車料金の支払い対象になりますが、電動2輪車については引き続き無料で駐車ができます。さらに2023年1月からの2年間、フランスのエコロジー移行省はパリ市内などに設定されている「低排出モビリティーゾーン」に住む低所得者や、同地域でビジネスを展開する零細企業を対象に、低公害車への買い替え支援策であるゼロ金利ローンの実証実験を実施することを発表しています。これらフランス国内の「潮流」は、いずれもCAKEのような企業にとっては、プラスにはたらくことになるでしょう。
フランスほど急進的ではありませんが、EU圏のほかの大都市同様にドイツ・ベルリンでも、ICE搭載車に対する都市部乗り入れ規制が進む機運は高まっています。今年初旬には、ベルリン中心部で自動車使用を事実上禁止することを求める誓願書署名が5万筆以上集まり、現在は州憲法裁判所の審査を受けているそうです。
600万人以上の人が住む「ベルリン広域圏」で、将来ICE搭載車が使えなくなったら・・・。それは代替となる電動車を作るCAKEにとっては、事業拡大の好機となります。
アジア市場はまずは韓国から・・・。もうひとつの進出先が気になります!?
CAKEがアジア進出の、最初のパートナーに選んだのは韓国のコーロン・オートモーティブでした。財閥のコーロン・グループに属する同社は、BMW、ロールス・ロイス、ボルボ、ポールスターなどの高級車ブランドのディーラー網を韓国国内で展開している企業です。なお欧州および北米市場でCAKEはネットおよび電話通販でユーザーに直販していますが、アジア市場についてはディーラー方式で、ユーザーに製品を提供する展開をする方針とのことです。
「EF EPI 英語能力指数」でシンガポール、フィリピン、マレーシアを除けば、英語力が低いと判定されているアジア諸国でCAKEがビジネスを行うには、それぞれの国の言葉で応対してくれるディーラーのオペレーターを介した方が理にかなっています。その点で、すでに韓国内に4輪高級車のディーラー網を整備しているコーロン・オートモーティブは、その方針にマッチしたパートナーといえるのでしょう。
ステファン・イッターボーン(CAKE創業者兼CEO)
「アジアの多くの主要市場で、市場成長とCAKEに対する確たるニーズに同期し続けるため、選択したこのパートナー戦略は、迅速な参入と確実な発展を可能にします。コーロンは高品質のプレゼンスと進歩を確保するために、必要な能力、文化、市場へのリーチを示す素晴らしい例です。製造、流通、販売、ブランディングの経験を持つ彼らが、プレミアムカーや高級カーブランドと、ハイエンドのアウトドア消費者向けビジネスを行うことは、素晴らしいマッチングの証明になるでしょう」
非常に気になるのは、CAKEは今回のパートナーシップ締結の発表のなかで、他のアジア市場の提携については今年後半に発表する予定・・・とアナウンスしている点です。
韓国に次ぐCAKEのアジア市場進出先は、電動車の普及率は低いもののアジアのマーケットとしては無視できない日本なのか・・・。それとも、人口ボーナスを背景に今後の経済発展が期待できる東南アジア諸国なのか・・・。おそらく後者かなぁ? と予想していますが、ともあれCAKEからの発表を楽しみに待ちたいですね。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)