文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年8月30日に公開されたものを転載しています。
G.シャタヌが7位に入り、ランキング10位の座をキープしました!
フランス・カオールで開催されたトライアルGP第5戦は、蒸し暑いハードな気候のなかで行われました。斯界の最高峰クラスであるトライアルGPクラスを目指す、野心あふれる若手ライダーが集まる激戦区のトライアル2クラスですが、優勝ソンドレ・ハーガ(減点10)、2位ロレンゾ・ガンドーラ(同14)とベータ・ファクトリー・トライアル・チームが1-2フィニッシュを達成する結果に終わりました。
ライダーのガエル・シャタヌにとっても、メーカーのEMにとっても、ホームGPにあたるフランスの一戦はさぞや気合が入ったことでしょう。12のセクションを2ラップして、G.シャタヌは16のクリーンをマーク。見事減点27で7位となり、9ポイントを獲得することでランキング10位の座を守ることに成功しました!
残る1戦・・・最終戦となるイタリアGPは、9月16〜18日にロンバルディア州のポンテ・ディ・レーニョで開催されます。電動車とICE搭載車が初めて"ガチ勝負"した、記念すべき2022年シーズンでG.シャタヌとEMが有終の美を飾れるか・・・注目したいです!
無念!! 2ラップ目にTY2.0にトラブルが発生・・・
一方・・・もう1台の電動車であるヤマハTY-E 2.0でフランスGP・トライアル2に挑んだ黒山健一選手にとっては、非常に悔しい一戦となってしまいました・・・。
黒山選手は1ラップ目序盤の第2セクションで減点5を喫するものの、その後減点を抑え25番手前後をキープ。第11・12セクションでも減点5となるものの、なんとか減点41で1ラップ目終えました。そして2ラップ目は第1セクションで減点5と幸先悪いスタートだったものの、第2セクションで初クリーンを記録! 第4セクションでも2度目のクリーンをゲットしましたが・・・なんと第7セクションでマシントラブルが発生してしまいました・・・。
TY-E 2.0はピットに戻されることになり、チームクルーたちが懸命な修理を試みました。しかし残念ながら修復はならず、残りセクションをエスケープすることでなんとか完走・・・。2ラップ目の減点は47点で、トータル88点で黒山健一選手は36台中31位という成績でした。
黒山健一選手(31位)
「3年ぶりの世界選手権、グランプリ全体がヤマハに注目していることを肌で感じながら、世界レベルのライバルと真っ向勝負するのは、やはりいいものです。僕にとっては、前回とは比べ物にならないハイレベルなセクションを、一つでも多くTY-E2.0で攻略し、一つでも上位を走るというチャレンジでした。しかし、久々の世界選手権ということで、1ラップ目は私自身がバタバタしてしまいました。2ラップ目は落ちつきを取り戻したのですが、第7セクションでトラブルが出てしまい、最後まで走りきれなかったのは残念です。一方で課題は、クラッチの耐久性や、トラブルを見据えた整備性など明確になりました。モーターのトルクとパワーは十分で、車両トータルのパフォーマンスも高く、難しいと思ったところもほとんどがいける、戦えるバイクになっていました。これからも私たちのチャレンジは続きますので、全日本と合わせて期待していただけるとうれしいです」
佐藤美之監督
「今回はシングルフィニッシュを目標にしていました。しかし、最高峰のTrialGPを目指す若手ライダーが多数参戦し、高難度のセクションが設定されているTrial2。黒山選手もこれだけのセクションをTY-E2.0で走り続けた経験がなかったことなど、その壁は高かったというのが印象です。またマシントラブルが発生し修復できず、残りはエスケープしてレースを終えたのは本当に悔しく、黒山選手やヤマハの参戦を楽しみにしてくれたファンの皆様には、大変申し訳なく思います。しかし、今回の一番の目的は、課題をできるだけ多く持ち帰ることだったので、それができたのは大きな収穫です。また今回、ファンやライバルたち、主催者の皆さんが、ヤマハの復帰を歓迎してくれました。その期待に応えるためにも、今回の経験を生かしバイクの進化を推し進めていきますが、すぐ目の前にある課題、カーボンニュートラルにつながる技術開発もしっかりと見据えて活動を続けていきたいと考えています。ぜひ、ご期待ください」
注目の電動車対決は、EMに軍配が上がるかっこうになりましたが、トライアルGPの世界で電動車の旗を掲げ続け、孤軍奮闘中のEMにとってはヤマハのスポット参戦は大いにモチベーションを高めてくれる、いわば"エール"になったみたいですね。
目標はトライアル2のトップ10を維持することで、その目標は達成されたと言えます。また、ヤマハの存在もモチベーションを高めてくれました。ヤマハのマシンと比較することで、自分たちの進化を確認することができました。
※エレクトリックモーション公式Instagramより
日本から大電圧・大容量バッテリーを輸送する手段が限られるなど、日本のヤマハチームが欧州のトライアルGPの場で戦うことのハンデはいろいろありますが、ぜひともヤマハには今後も欧州遠征にチャレンジしてほしいと思います。EM、ヤマハ・・・電動トライアル車の可能性を追求する両メーカーの、切磋琢磨をこれからも期待しましょう!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)