内燃機加工業を営む、埼玉・川越の井上ボーリング。エンジン・オーバーホールに関わる各種作業と、それに関連したオリジナルパーツ開発で知られる同社の最新トピックと言えば、エバースリーブⓇだ。同業の内燃機加工業者やバイクショップ向けに、同社独自のICBMⓇアルミめっきスリーブ完成品を販売するもので、2021年秋にスタート。当初はカワサキZ向けを謳ったが、この1年で数多くの絶版旧車向けラインナップを拡充している。ここではその有用性を改めておさらいしておこう。
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
※本企画はHeritage&Legends 2022年12月号に掲載されたものです。

画像: 簡単な設備があればスリーブ入れ替え可能!井上ボーリング「エバースリーブ」が対応車種を拡大中
井上ボーリングはエバースリーブ販売のほか、Zエンジンにはシリンダー/ヘッド面研、シートカットやクランク芯出しなど多彩なメニューでユーザーをバックアップ中だ。

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エンジンへの不安を除去するマストアイテムになる

これまでも各誌やWEBで紹介されてきたから井上ボーリングのICBMめっきスリーブについてご存じの読者も多いことだろう。今回はそのICBMめっきスリーブを完成品として販売するエバースリーブの話題。現在では下表の通り多くの車種向けが展開され、同社HP内のショッピングページで購入できるようになっていることをご存じだろうか? もちろん一般ユーザーも気軽に購入でき、近場の内燃機屋やボーリング設備を持つバイクショップに持ち込めば、愛車への導入が可能になっているのだ。

ではここから両品をご存じない方のために、その製品概要を今一度、おさらいしておこう。

まずはICBM。6061-T6アルミ材からマシニングセンタでスリーブを削り出し、その内壁に独自のニッケルシリコンめっきを施した上でプラトーホーニング仕上げしたもので、これまで4ストエンジン向けはもちろん、スリーブにポート穴の空く2スト用にも多くの製作実績がある。井上ボーリングではその納品実績の中で、ICBMを原因としたクレームは1件もないという。耐摩耗性が非常に高いことが特長で、そのICBMスリーブが使用限度を超えて摩耗した場合、再めっき修理を無償で施す永久無償修理まで打ち出している。

そして同社がICBMスリーブの取り扱い過程で発見したのが、嵌めこんだICBMスリーブが圧入後に同じアルミ材のシリンダーにすぐに圧着してしまうこと。

これはアルミスリーブとアルミシリンダー、熱膨張率が同じ素材で起こる現象で、エンジンに火を入れると膨張したアルミ同士が押し合い圧着するもの。さらにそれまで常識だった嵌め合い代を取らずに冷間圧入しても、エンジンの熱で一度膨張圧着したスリーブとシリンダーは冷えても元のように隙間が生じることもない(鋳鉄スリーブは焼き嵌めが基本。それでも冷えると膨張率の違いからアルミのシリンダーとの間に隙間が生じる)と気づき特許申請、2021年秋に取得を果たす。そしてこれがエバースリーブ発売への足がかりとなった。

エバースリーブにはあらかじめ、ICBMによる内径仕上げとプラトーホーニングが施されていて、使用時にはシリンダー側をワ0.05mmの隙間代でボーリングしてスリーブ差し込み、その後にわずかに嵌め合い代を取ったリングを圧入、スリーブ上端を押さえた上でシリンダー上面を面研して整えればOK。冒頭の通り、内燃機屋やボーリング設備を持つバイクショップなら、井上ボーリングで施工されるものと同等のクォリティでICBMスリーブへの入れ替えができる。

井上ボーリングには別表の車種とサイズについては常に2〜3セット以上の在庫を常備しているというから納期も早いし、それまでシリンダーをやりとりしていた往復の運送費などコストも下がる。ユーザーにも加工に携わるショップにもメリット多数というわけだ。

例えばZ用には昨秋の販売スタート当初、別表中のφ64mmからφ69mmが用意されたが、今ではφ70mm(純正ストローク値なら1015cc)とφ73mm(同11055cc)も加わっている。マーケットで認知され、それだけニーズが広がっているということだろう。’80年代のエンジンをを不安なく維持するための減らないスリーブは、これからのマストアイテムになるはずだ。

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ICBM施工済み。手軽に使えるエバースリーブ

画像1: ICBM施工済み。手軽に使えるエバースリーブ
画像2: ICBM施工済み。手軽に使えるエバースリーブ

上はエバースリーブとそれを押さえる嵌め込みリング。下のグラフは面粗度計で見たプラトーホーニング。グラフ中央はスリーブ内壁面を示し、左がスリーブ本体で、右はピストン摺動側。スリーブ本体にはオイル溜まりの深い溝を刻みつつ、摺動面は平滑を保つ。オイル保持性がと初期馴染みが良好となるもので、ICBMめっきスリーブに施される。

画像3: ICBM施工済み。手軽に使えるエバースリーブ

エバースリーブを嵌め込む手順。0.05mmの隙間代を取ったシリンダーにスリーブを差し込み(人力でOK)、ツバまで差し込んだら、わずかに嵌め代を取ったリングを圧入。上面を面研して整えるだけだ。ICBMの7大メリット、ビッカーズ硬度2000(鋳鉄は高くても140程度だ)というシリンダー内壁へのニッケルシリコンめっき処理による耐摩耗性(❶)とフリクション低減(❷)、焼き付きにくさ(❸)、アルミスリーブへの置換による軽量化(❹)、膨張率均一化(❺)と放熱性向上(❻)、錆の不安解消(❼)が享受できる。

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Z用でスタート! 以降、車種対応はさらに拡大中なのだ

画像: Z用でスタート! 以降、車種対応はさらに拡大中なのだ

Z用ばかりでなく車種バリエーションを広げるエバースリーブ。ほかにもオフロード車やミニバイク、輸入車への対応もある。価格は車種や排気量など問わず、すべて4万4000円/1本。Zなら4本が必要で、17万6000円になる計算だ。

取材協力:井上ボーリング

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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