※本企画はHeritage&Legends 2021年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
内容と経過が分かるからこそ有利になるリメイク
「このエンジンはウチの“1号機”で、元々はもう25年以上前に作ったもの。レース(TOTの前身、TOF。DOBARモンスタークラスなどに参戦した)にもストリートにも使って、その後、秋田のお客さんが購入してくれたものです。
それが今回20年越しで帰ってきて、今度は東京のお客さんが買ってくださったんで、そのお客さんに合わせた仕様にしています。言わば“新生1号機”になるかな」
市本ホンダ/チームCB’sの市本さんがこう説明するのが下写真のエンジン。
「エンジンの中身はCB1100Rベースで、ワイセコピストンやキャリロコンロッド、1100Rカムも早くから組んでありました。それで今回オーナーさんが変わるから、全バラして内容をチェック。バルブはビッグバルブが入っていたのを擦り合わせし直して、シフトドラムやフォーク、ミッションにはトレーディングガレージナカガワさんのR-SHOT加工を追加しました。CB-Fの弱点になるギヤ抜けが起こらないし、お勧めのメニューなのでこのタイミングで加えておきました。
ほかは状態が良かったので清掃、あとはエンジン外観をシルバーからブラックにするなどしています。ブラックはセラコートでゴールドはパウダーコート+塗装。これもきれいさを維持できますね」
元々カスタムが施されていた車両を、改めて仕立て直す。使用パーツや加工などの内容については市本さん自身がしっかりと把握しているから、どのくらい劣化しているかも分かる。一から作るような部分の作業は既に行われているから、仕様変更にも無理がなく、オーバーホールと同じ感覚で進められることになる。
このエンジンでは“渋滞が多いところを走ることが増えるから”という考えでカムをRSCから1100Fノーマルに換えるなどもされるが、そんな配慮も嬉しい。このあたりは本当に長年、さまざまなCB-F/Rカスタムを作ってきた市本さんならではだ。
ところでこの1号機ではオーナーが変わることがきっかけとなったが、こうしたCB-F/Rの車両仕立て直しは、このところCB’sで増えてきているという。
「1度カスタムを作ったけど、しばらく乗ってなかったというような人が“また乗り直すから”とやる。それにオーナーさんも多くが50歳代とか、ある程度年齢が行った人も増えた。それで今を入れればあと10年、20年乗れるようになるから、最後のバイクにしようか(笑)って作り直す感じ。
そんなノリで増えてますけど、今ちゃんとしておけば壊れないし、きれいさもキープできていいと思います。パーツの寿命も伸ばせる加工や、ウチで扱っているVH(Vince and Hyde)製カムチェーンテンショナーのような対策パーツを取り込めるのも大きいと思いますよ」
車体側についても同様で、最初の製作時に既に17インチホイール化対応のディメンション設定や各部補強など、必要な機能は盛り込まれているから、以後の劣化予防のためにフレーム等を再塗装する。足まわりは必要に応じてアップデート。ポン付け仕様なんて言われることもあるけど、と市本さんは言うが、ポンとパーツが付けられるようにベース側を作り込んでいるからこそ、ポン付け/交換が出来てしまう。しかも整備性もいいわけだ。
車体側で換えるパーツはサスやブレーキ系が主となるが、パーツ個々の年月経過に対応し、進化したパーツを使うことで、より乗りやすさや使い勝手が高まる。このように、多くの利点があるCB-F仕立て直しは注目度大だ。
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個々のパーツにも使える塗装&表面処理もお勧め
CB’sでの車両仕立て直し。その大きな要素に塗装がある。外装類の再塗装、そしてここまでに述べたようなエンジン外観やフレーム、ホイールといった金属パーツへの塗装も興味深いところだ。CB’sでは派手目のカラーリングが施される車両も多いが、それは“派手なカラーで、自分のもの感を高める”という愛着の部分も込めてのことだ。純正カラー再塗装という選択ももちろんできる。
「フレームやスイングアームはパウダーコート+塗装という具合です。パウダーコートで焼き付け、その上にキャンディカラーを塗装して個性化を図る。耐久性も高い。1号機ではパープル+ブラックキャンディにしています」
黒か赤と思われていたフレームもこのように自在に色が付けられ、長く保つ。その上、塗装には新たなメリットも生まれている。
コロナ禍も落ち着いてイベント等が無理なく行える状態になれば、CBを集めて駐車する“CB ZONE”も再開してCBオーナーのサポートをしたいとも市本さん。製作中の自身用のCB1100Rも「CB’sがまた面白いの作ってるなあってノリで見てもらえばいいですけど」とのこと。完成の際には改めて紹介するが、それと並行して次々仕立て直されるCB-Fも、気になるところだ。
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Team CB’s CB750F/元々は25年以上前に作った“1号機”
本文で紹介した、CB’sで25年以上前に製作した“1号機”の元々はこのような姿(写真は1996年頃)で、エンジンは1123㏄仕様。レーサーとしてTOF・DOBARモンスタークラスに出場、吸排気系とサスセッティングの変更でストリート用としても活用された。カラーリングはCB’sらしいパープルで途中での仕様変更(写真3枚目)も行われていた。
当時の仕様はクランク/ミッションが既にCB1100Rで、カムはRSCのRS1000(CB-Fベースの市販レーサー)用、ビッグバルブ/インナーシム/チタンリテーナーをセット。
フロントフォークはRC30用φ43㎜。
ホイールはテクノマグネシオ製3.25-17/4.75-18。
スイングアームはウイリー製で当時のみ製作していた15㎜ショート仕様だ。
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ENGINE/開けて各部チェックし状態は良好。新オーナーと環境に合わせた仕様変更と外観塗装でロングライフを狙う
車体とエンジンは分けられ、それぞれ作業が進む。エンジンは全バラして状態を確認し良好な部分は清掃、弱点対策用に新たにミッション系にR-SHOT加工を施す。外観も再塗装して組み立て直された。
シリンダーヘッドカバーやシリンダーヘッド、シリンダーにクランクケース等の外観は元々のアルミ地シルバーからセラコート・ブラック仕上げに。剥がれ等に強く耐候性も高くなる。ダイナモカバー/ジェネレーターカバーは以前と同じCB1100Rスタイルのゴールドだがめっき塗装を施し他部位に合わせた。
︎ワイセコピストンやビッグバルブ/インナーシム、加工ポートなどの仕様は引き継ぎ、バルブ擦り合わせ等を行い性能を維持。元々フレキシビリティの高い仕様で、劣化もほぼなかった。カムは今後の使用条件を考慮しRSCからノーマルに変更。カムチェーン類はテンションも確認し純正を使用する。
全バラ後に各部チェックと処理を行ってシリンダーまで組まれた状態で、ピストントップも見える。このようにピストンやシリンダー、シリンダーヘッドまわりの状態は良好でそれを生かした。
CB’sで扱うVince & Hydeレーシング製カムチェーンテンショナー。折れの心配を大きく軽減する。カムチェーンは純正orアドバンテージDIDが良いとのこと。
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CHASSIS/ダメージチェック後にフレームはパウダーコート&塗装、ホイールも塗装。足まわりはアップデートも組み合わせる
エンジンを下ろすのに合わせて単体となるフレームも確認を行って再塗装。以後の劣化を抑えるパウダーコートに色を加えて個性を高める。足まわりも再塗装で外観を再生、進化したパーツを使うことで機能面の進化も実感できる。
フレームはパウダーコートの後、焼き窯で焼き付け処理され、さらにキャンディブラック&ラメ塗装を重ねて落ち着いた印象(このネック部等が仕上がり状態)が加わった。外装類だけでなくフレームも塗装することで、こうしたいっそうの個性化が図れる。
各部もリフレッシュを図るが、ステアリングステムは17インチホイール適合品が装着されていたものを清掃、メーター部も同様。ハンドルはダイレクトな操作感を重視して低めのコンチネンタルタイプバーをセレクト。ステムベアリングまわりの給脂等も行う。リヤフェンダーレスキットやテールライト手前のキャッチタンク等は当時製作したものだが今も十分使える。
ホイールは前後17インチのテクノマグネシオ製5本スポークホイールで、ブラックで再塗装する。スイングアームもウイリーの目の字断面5角アルミ材製を、バフ仕様からブラックで再塗装。フロントフォークはナイトロンNTR、リヤショックもナイトロンとなる(写真は移動用を仮装着)。