1992年に衝撃の初登場をして、姿かたちを変えながら発売30年のロングセラーに。いくつも時代が流れたというのにそれでもCB1300はスポーツバイクのド真ん中にいる。それがザ・CB。ニッポンのオートバイ。
文:中村浩史/写真:松川 忍
画像: Honda CB1300 SUPER FOUR SP 30th Anniversary 総排気量:1284cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:790mm 車両重量:266kg  発売日:2022年12月15日 税込価格:195万8000円

Honda CB1300 SUPER FOUR SP 30th Anniversary

総排気量:1284cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:790mm
車両重量:266kg

発売日:2022年12月15日
税込価格:195万8000円

【歴史解説】1991年、東京モーターショー「CB1000SF」の衝撃

サプライズという言葉が相応しい初代スーパーフォアの登場

あの衝撃は、今でもきれいに覚えている。1991年、第29回東京モーターショー。プレスデー初日に、ぼくらメディアが知らないモデルが壇上に燦然と光っていたのだ。

これはネタバラシでも何でもないんだけれど、通常はモーターショーや新発売のモデルについて、僕らメディアには予めメーカーから資料提示がある、というのがルールだ。

ニューモデルの場合は「こういう日程でナントカというニューモデルを一般発表します。何月何日までは公開厳禁」と。これが、ニューモデルに関する、発売日と情報解禁日というもの。

これが、モーターショーの場合は「ウチは次のモーターショーにコレとコレ、それにコレとコレの計〇台を出展します。ショーの何日前までは公開厳禁」となります。これが事前告知。

モーターショーの場合は、こういう事前告知があって、情報解禁日に一般公開。ショー開催の前日には「プレスデー」というものがあって、一般公開よりも先に取材が可能、それをみんなにお知らせする――という流れだ。

1991年のホンダモーターショーの目玉は、楕円ピストンNRの市販バージョンNR750と、新世代900ccスーパースポーツCBR900RR。

もちろん、写真資料はもらっていても、実車を初めて見るぼくらメディアも心ウキウキでショー会場に撮影と取材に出かける。NR、楕円ピストンかぁ、CBRはとうとう900ccで、しかもRがふたつかぁ、なんて。

画像: 【歴史解説】1991年、東京モーターショー「CB1000SF」の衝撃

しかし、会場のホンダブースに見慣れない1台が! 展示ステージのいちばん目立つところに鎮座していたのは、白赤のホンダカラーも鮮やかな、見たこともないビッグバイク。それが上に掲載した写真だ。

なんだあのバイク?――大げさでなく、ホンダブースがざわついて、取材陣はその「謎の一台」に殺到。サイドカバーには「CB1000プロジェクトBIG-1」とネームが入り、車両前に置かれていたプレートに「CB1000 SUPER FOUR」と表示。ここに、ホンダBIG-1プロジェクトが初めて公開されたのだ。

僕らメディアがクギづけになったくらいの衝撃は、一般公開が始まった日からは、今度は来場したライダーたちのド肝を抜くことになる。当時はもちろんネット環境などはなく、現代のように、プレスデーの模様がすぐに速報されるなんてこともなくて、一般公開日に来場したファンも、CB1000SFの存在にクギづけ。

ついには、壇上で輝いていたCB1000SFは、たしか公開日2日目からは低い位置に降ろされ、来場したファンに、もっとよく見えるポジションに展示され直したほどだったのだ!

ホンダが作りたかったのはデカい、重いオートバイ!

1991年10月24日木曜日。まずはファンの反応を見てみよう、と東京モーターショーで世界初公開されたCB1000SFは、やはり大きな反響を呼び「参考出品」としての出展から、ホンダ社内で「市販前提車」へと昇格。そして初公開から約1年後の1992年11月10日に正式発売が発表され、11月25日に販売を開始した。

当時の二輪事情と言えば、750ccを超える「オーバーナナハン」モデルが国内でも正規発売されるようになり、オーバーナナハンへの注目度が高まっていた時期。それでも、大型二輪免許が教習所で取得できるようになるのはまだ少し後、1996年のことで、CB1000SFは、そう易々とは手が届かない憧れのビッグバイクとなったのだ。

初めて乗った時のことも、また鮮明に覚えている。とにかくデカい、ズッシリ重いバイクで、ホンダが狙ったコンセプトのひとつである「太い走り」をしっかり実感できたのだ。

なにせ、CB1000SFの車両重量は260kg。同じ東京モーターショーでデビューしたCBR900RRより50kgも、同時期にラインアップされていたCB750(空冷エンジンのRC42)よりも20kgも重かった。

さらにボディの大きさでいえば、まずファンのハートを射止めたかっこいい燃料タンクは、23Lという容量が確保された大ボリューム。全長サイズよりも大きさが分かりやすいホイールベースは1540mmと、同じくCB750よりも45mm、1000ccフルカバードツーリングバイクCBR1000Fよりも40mm、CBR900RRに対しては135mmも長かったのだ。

シート高は800mm、シート幅も堂々と広く、足つき性だってお世辞にもいいとは言えなかった。

大きく重く、ゴロンゴロンと走るビッグバイク。けれども僕は、それをちっともネガだとはとらえなかった。取り回しでは確かに重く大きかった車体だって、いざ走り出せばその重さは薄れて感じられたし、堂々としたボリュームのビッグバイクを振り回して走る喜びだってあった。

ビッグバイクをコントロールする誇り、自己顕示欲、今でいうドヤ顔さえできるオートバイだった。オレのバイク、デカいだろう――実際に購入して、そういう気持ちで乗っていたファン、少なくなかっただろう。

街乗りでも、高速道路でも、ツーリングでも誇らしい。ホンダは、こういうバイクを作りたかったのか!

ビッグバイクを操る喜びからさらに動力性能を上げたビッグバイクへ

太く雄々しい走りのCB1000SFは、発売から5年を過ぎて排気量アップ、CB1300SFにフルモデルチェンジする。これは、CBのライバルモデルであるカワサキのZEPHYR1100、ヤマハのXJR1200、そしてスズキのGSF1200のビッグネイキッドが出揃ったとき、1000ccのCBは、ライバルに比べて排気量が小さく、非力だという声が出始めたからだった。

型式名SC40、1300ccの前期モデルといえるCB1300SFは、出力が93PSから100PSにアップし、重量は15kgほど重くなったものの、前後17インチホイールを装着するなど、運動性が飛躍的にアップ。

+300ccの威力を充分に見せつけ、デビューの1998年に販売ランキングトップの座を奪取。堂々としたボリュームを持つビッグバイクに動力性能を持たせていく方向に舵を切ったのだ。

さらに5年後には、1300cc化でヘビー級となったボディをシェイプし、約20kgもの軽量化を果たした、通称1300cc後期モデル・SC54へとフルモデルチェンジ。この型が、現行モデルまで継続している世代だ。

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