文:中村浩史/写真:島村栄二
絶版車の修理事情|純正パーツがなければリプロパーツに頼る
カタナはエンジン整備で開けても閉められないって??
通常、クルマやバイクの純正パーツは、製品の市販から約15年をメドに、補修パーツを供給しなきゃいけない、というルールがあります。
カタナに関しては1981年発売2000年生産終了なので、まぁ2015年には徐々に純正パーツが買えなくなっていくものが、カタナは2020年くらいまで、あまり純正パーツの供給に不安はありませんでした。
それが2021年あたりを境にどんどんパーツが廃番になっていき、入手可能でも超高価、なんてことになっていたんです。たとえば純正ミラーは左右セットで、約5万円! 20年前には確か8000円くらいだった? 純正ウィンカーが1コ1万円とか、完全ノーマルにこだわる人にはエラい大変な時期に入って来ていたんですね。
「それどころか、たとえばエンジン整備するのに絶対必要な、ガスケットやシールという、細かい部品もなくなっていったんです。カタナは今では、エンジンのオーバーホールをしようとシリンダーを割ったら、ガスケットがなくて、オイルシールがなくて組み立てられない、なんてことになってた」とはカタナ専門店のオオノスピード大野団長。
大物外装パーツなんかは、中古部品を修復、再塗装して使えるし、ブレーキやマフラー、サスペンションなんかは、純正にこだわらなきゃカスタムパーツがある。それでも、ガスケットやシールなんて「整備に絶対必要なもの」がないと、カタナというバイクに乗り続けられなくなってしまう。だから大野団長をはじめ、いろんなショップが、ノーマル同等品を独自に業者に発注し、再生産するわけです。これが「リプロダクションパーツ」です。
もちろん、現物の設計図もなければ製造業者も知らないところからスタートして、今では最低限の補修パーツは確保しつつあるようです。
「カウルやタンクはカスタムパーツの延長で製作できたけど、ガスケットメーカーやスクリーンを作る樹脂成型は、業者を片っぱしから調べるところから始めなきゃならないからね。今までに経験したこともない作業がずっと続いてるんだ、ガハハハ」(大野団長)
クルマやバイクっていうのは、整備や修理とともに「カスタム」って作業がつきもので、ノーマルよりもコストをかけた、性能の高いパーツを組みつける、って文化があります。
けれど今、絶版車に関しては、その「カスタム」じゃなくて、ノーマルのまま乗り続けることの方が、こんなに困難な時代。例えばカタナをはじめとした空冷エンジン車の整備の要、キャブレターでは、オーバーホールに必要な内部部品が廃番になってしまうとどうにもならない。けれどFCRやTMRというレーシングキャブの方が補修部品があったり、なんて逆転現象も。
ブレーキやキャリパーなんてパーツに関しては、純正部品はすでに入手不可能だけれど、サンスターが絶版車用のディスクローターを作り続けてくれているし、ブレンボの鋳造キャリパーなら、パッドやシールという補修部品供給も(今のところ)心配ない。
僕のようにカスタムしたいわけじゃなく、ノーマルで乗り続けたくても、それが出来ない時代はすぐそこ。これは絶版車に乗るということが今まで以上に難しく、費用のかかる趣味になってきている、ということです。
今回の修理で使用したパーツ
まとめ|絶版車とのバイクライフは専門店がカギとなる
今回は、たまたま私がカタナオーナーってことで、カタナのリプロダクションパーツを紹介しましたが、この世界の先輩はもちろんカワサキZ! PMC、ドレミコレクション、ブルドックモーターサイクル他の何社もが、絶版純正パーツのリプロダクションはもちろん、チューニングパーツを手掛けてくれています。
ホンダCBは、ナナハンやFなど、純正パーツの供給事情も悪くなく、ショップやオーナーは海外製パーツのネットワークも豊富だ。
本文中にも書いたけれど、絶版車と付き合っていくには、専門店とセットで、が心配なく乗り続けられる基本だと思います!
文:中村浩史/写真:島村栄二