2023年3月下旬に開催された東京モーターサイクルショーには、今夏から欧州で市販が予定されているコンシューマー向けホンダ製電動スクーター第一弾のEM1 e:が日本初公開されました。広東省広州市にある五羊ホンダ(Wuyang-Honda)が生産しているU-GOをベースに、EM1 e:が作られているのは周知のとおりですが、はたして両機種はバッテリーの型式のほか、何が違っているのでしょうか?
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2023年4月25日に公開されたものを一部編集し転載しています。

利便性は、オリジナルのU-GOよりも下がっているかも・・・?

多くのメディアで既報ですが、東京モーターサイクルショーのホンダブースのなかでEM1 e:はそこそこ大きなスペースを用いて展示されていました。回転式のステージの上だけでなく、跨ってスロットルグリップをひねることができる展示車も用意されており、それを試そうとする人の列ができていました。

画像: 東京ビックサイトで開催された「第50回 東京モーターサイクルショー」での、EM1 e:の展示車。手前の黒と青のボックス状のものは、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」。EM1 e:はこれを1つ搭載する方式になっています。

東京ビックサイトで開催された「第50回 東京モーターサイクルショー」での、EM1 e:の展示車。手前の黒と青のボックス状のものは、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」。EM1 e:はこれを1つ搭載する方式になっています。

画像: センタースタンドを立てて、後輪を浮かせた状態になっている展示車も。スロットルをひねって後輪を動かすことで、電動スクーターであるEM1 e:の静かさを体験してもらう試みです。こういう展示を屋内ですることができるのも、排ガスゼロの電動車ならではの利点といえます。

センタースタンドを立てて、後輪を浮かせた状態になっている展示車も。スロットルをひねって後輪を動かすことで、電動スクーターであるEM1 e:の静かさを体験してもらう試みです。こういう展示を屋内ですることができるのも、排ガスゼロの電動車ならではの利点といえます。

これまた既報済みの話ですが、このEM1 e:は中国の五羊ホンダが製造販売しているU-GOという電動スクーターをベースにしています。写真を見比べるとわかるように、ぱっと見ではどちらがEM1 e:でどちらがU-GOか見分けられない人も多いのではないでしょうか?

画像: シンプル&クリーンをテーマにデザインされた外観が与えられた、五羊ホンダのU-GO。タンデム用のフートレストは、使用しないときは側面パネル内に折りたたんで収納できます。なお日本市場に投入されるであろうEM1 e:は原付一種(50cc)枠なので、タンデム走行は不可です。 www.wuyang-honda.com

シンプル&クリーンをテーマにデザインされた外観が与えられた、五羊ホンダのU-GO。タンデム用のフートレストは、使用しないときは側面パネル内に折りたたんで収納できます。なお日本市場に投入されるであろうEM1 e:は原付一種(50cc)枠なので、タンデム走行は不可です。

www.wuyang-honda.com

大雑把な物言いではありますが、EM1 e:はU-GOをベースに、昨秋からサービスを開始した交換式バッテリーステーション網「Gachaco(ガチャコ)」にも取り入れられた、ホンダの「Honda Mobile Power Pack e:」(以下HMPPe:)と、交換機である「Honda Power Pack Exchanger e:」(以下HPPEe:)に対応できるもの・・・にしたバージョンといえます。

EM1 e:が50.26V/26.1Ahのバッテリー(HMPPe:)をシート下スペースに1つ搭載するのに対し、U-GOは異なる規格の48V/30Ahのバッテリーを、ライダーが足を置くフロアの下に格納する方式になっています。現行のICE(内燃機関)搭載スクーターの多くが、フロア側に燃料タンクを配置することで、シート下をヘルメットなどを収納するスペースにするのは、1980年代以降からずっと続くトレンドといえます。

画像: U-GOの交換式バッテリーはEM1 e:のシート下と異なり、フロア部に搭載されます。HMPPe:はユーザーが電気コネクター部に触れることなく交換できるように設計されていますが、U-GOの交換式バッテリーはユーザーがオレンジ色の配線の先のコネクターを、交換時に脱着する必要があります。 www.wuyang-honda.com

U-GOの交換式バッテリーはEM1 e:のシート下と異なり、フロア部に搭載されます。HMPPe:はユーザーが電気コネクター部に触れることなく交換できるように設計されていますが、U-GOの交換式バッテリーはユーザーがオレンジ色の配線の先のコネクターを、交換時に脱着する必要があります。

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U-GOはそれら既存のICE搭載スクーターに倣い、交換式バッテリーをフロア側収納にすることでシート下の収納スペースを確保することに成功しています。大容量のシート下収納スペースのありがたさは、この手のスクーターを使ったことがある方なら誰もが体験済みと思いますが、残念ながらEM1 e:はシート下収納スペースの恩恵に浴することはかないません・・・。

画像: U-GOのシート下収納スペースには予備のバッテリーを搭載することができ、バッテリー1つで65km以上、2つで130km以上の航続距離を稼げます。なおアルミ合金でカバーされたこのバッテリーは水深1mであれば30分浸しても大丈夫な防水性能と、1mの落下に耐える耐衝撃性能が与えられています。 www.wuyang-honda.com

U-GOのシート下収納スペースには予備のバッテリーを搭載することができ、バッテリー1つで65km以上、2つで130km以上の航続距離を稼げます。なおアルミ合金でカバーされたこのバッテリーは水深1mであれば30分浸しても大丈夫な防水性能と、1mの落下に耐える耐衝撃性能が与えられています。

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Gachacoの交換ステーション網を利用できるのはEM1 e:の大きな魅力ですが、シート下収納を使えるU-GOも魅力的に思えてしまいます。ちなみにU-GOは専用充電器を使うことで、プラグイン充電することも可能になっています。

ただ、バッテリーの交換のやりやすさ、扱いの簡単さを考えると、EM1 e:に軍配が上がるのではないかと予想されます。フロアのあたりまで屈んで、コネクターの抜き差しもしないといけないU-GOに対し、EM1 e:はそれほど大きく屈む必要はなく、コネクターのことを深く考えずに交換が可能です。老若男女、幅広い層が使うスクーターという乗り物の性格を考えると、バッテリーの交換をできるだけ楽にする・・・という方向性はアリかと思いますがいかがでしょう?

採用しているモーターは、定格出力1,200Wと思われます?

EM1 e:の詳細なスペックは明かされていませんが、U-GOのスペックを見ればどんな感じなのかは予想できます。U-GOにはモーター定格出力が1,200Wと、800Wの2仕様がラインアップされていますが、EM1 e:のモーターはおそらく1200W版だと思われます。

モーターサイクルショー会場にて、跨ってスロットルをひねれる方の展示車で試したところ、LCDのスピードメーターの表示は50km/hを超えました。U-GOの800W版の最高速は43km/hで、1,200w版のそれは53km/hと公表されています。この違いを考慮すると、EM1 e:は1,200Wのモーターなのでしょう。

画像: EM1 e:は比較的廉価な電動スクーターに多い、ハブモーターを採用しています。なおU-GOは800W版、1,200W版ともに登坂能力は14° で、EM1 e:もおそらく同値かと思われます。

EM1 e:は比較的廉価な電動スクーターに多い、ハブモーターを採用しています。なおU-GOは800W版、1,200W版ともに登坂能力は14° で、EM1 e:もおそらく同値かと思われます。

会場にて説明員の方にお話を聞いたところ、EM1 e:は基本的にU-GOのHMPPe:対応版ではあるものの、バッテリー関連以外の部分も日本でいろいろと手直ししているとのこと。それらの手直しが必要なのは、中国に比べると厳しい日本の車両に関するレギュレーションに対処するためです。

すでに法人向けに販売されているPCX ELECTRIC、そしてジャイロ系やベンリィ系の電動スクーター同様、EM1 e:も日本で発売されたら国や東京都などの自治体の、EVに対する補助金の対象になるでしょう。ともあれ、できるだけお手頃な価格で登場してくれることを期待したいですね。

画像: EM1 e: 走行映像 www.youtube.com

EM1 e: 走行映像

www.youtube.com

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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