文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
スズキ「GSX-8S」インプレ(太田安治)
誰でも「スポーツ」を楽しめる原点回帰モデル
1000ccクラスのスーパースポーツやスポーツネイキッドが先鋭化している現在、ほとんどのライダーにとって楽しさと爽快さを享受できるのはミドルクラス。GSX‐8Sに試乗し、その思いはさらに強くなった。
新開発のエンジンは低中回転域でのトルクが太く、ゼロ発進でも3000回転以下からの加速でも気を遣う必要なし。270度クランクの不等間隔爆発で2気筒らしいパルス感はあるものの、振動は戸惑うほど少なく、一定速度での走行中は4気筒エンジン並みにスムーズ。ちなみに6速・100km/h時は約4200回転で、タラララッ……と穏やかに回っている。そこからの追い越し加速も力強く、シフトダウンを意識することすらない。ごく軽い前傾姿勢、直進安定性の高さと併せ、100km/h程度までのクルージングではツアラーモデルに迫る快適性を備えている。
市街地と高速道路クルージングが圧倒的に乗りやすいだけに、スポーツライディング性能にはさほど期待していなかったのだが、峠道のコーナーを5つほどクリアした時点で見込み違いに気付かされた。まさに意のままに止まり、曲がり、加速するのだ。
スーパースポーツのようにフロントから切れ込むように曲がるのではなく、コーナーの始めから終わりまで前後タイヤがシンクロして旋回する感覚。抑えめのペースだと安定志向に感じるが、本領を発揮するのは減速G、コーナリングGを受けてある程度サスペンションが縮んだ状態。旋回力がグッと増し、バンクセンサーが接地するバンク角でも不安のない安定性を見せつける。同社のSV650も同じ傾向だが、オートバイとライダーとの一体感、コーナリング中にギャップを踏んだ際の収束性は明らかにGSX-8Sが勝っている。
峠道を駆け回っていて、タコメーターを見ていないことにふと気付いた。パワーバンドを探ると、4000回転あたりで充分に力強く、加速力とレスポンスが最も活気付くのは6000回転から8500回転。そこから先は10000回転まで軽く回るが、この範囲はあえて余裕として取ってあるフィーリング。本来は100馬力超えの実力を持つエンジンだと思う。
アップライトなポジションと、全回転域で力強いエンジン特性。素直な旋回性で、ライダーのスキルを問わず、しかもライダー主導で走りを楽しめる仕上がり。GSX-8Sはスポーツバイクの「原点」に回帰したといえるキャラクターだ。
スズキ「GSX-8S」カラーバリエーション
ボディカラーは全3色の設定となる。
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