イギリス・ハリス社にフレームをオーダーして特性を一新

Z登場以前のカワサキは2ストローク車主体のメーカーで、そのトップモデルたる500SS(H1)と後に登場した750SS(H2。H1のクランクケース/クランクジャーナルに手を入れた発展版としていい)には、それぞれを元にしたレーサー、H1RとH2Rが存在した。H1が’69年、H1Rが’70年春、H2が’71年に登場した後、H2Rは’73年1月に市販が開始された。

画像1: イギリス・ハリス社にフレームをオーダーして特性を一新

そのH2Rを20年近く後になる’90年代当時に再現し、かつ一般公道で楽しめるように作られたのが、ワン&ワン・インベストメントが手がけたこの車両だった。フレームはH2Rの実物を測定した上で、構成パイプの肉厚を上げたりダウンチューブの左右スパンを広げるなど、元の特徴を崩さずに有益な改良を加えるよう、イギリスのフレームビルダー、ハリス社にオーダーして製作。これにKYB倒立フロントフォークやオーリンズのリヤショックなど、現代的な足まわりを組み合わせていった。エンジンはH2/H2Rの空冷3気筒を元に、ピストンバルブからピストンリードバルブ化したスペシャル。

このフレーム変更によって、ハンドリングは当時とはまったくの別物となり、タイヤがバイアスからラジアルになったことなども合わせて、高速域での安定性は格段に向上した。もちろんブレーキも製作当時の最新仕様へと大幅に強化されていた。

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H2RのベースとなったH2というとまっすぐ走らない、曲がらない、止まらないという印象が強かったが、これはそれらのネガを解消し、エンジンの持ち味を生かした楽しいマシンに仕上げられている。こうしたベースの底上げ=フレームの見直しも、後に一般的になっていった。その意味でも、注目すべき存在だった。

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画像1: Detailed Description 詳細説明

PITSCH製の電気式タコメーターを中央に置くコクピット。左には220km/hフルスケールの小型スピードメーターが配置される。トップブリッジはヨシムラの刻印が入る、GSX-R系のパーツだ。カウルやタンク類はH2Rの造形をベースにしながら保安部品をきちんと追加している。

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空冷2ストローク直列3気筒のエンジンはチャンバーをできるだけ中央に寄せるため、1番と3番シリンダーを入れ替えて組んでいるのも大きな特徴だ。

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シリンダーへの吸気通路にDENCO製のリードバルブを新たに追加。ワイセコ製ピストンのスカート部に穴開け加工を施して組み、吸気ポートに補助掃気孔を追加して、ピストンバルブからピストンリードバルブ化し、扱いやすさも加えた。右2本、左1本出しの排気チャンバーはオリジナルで、フレームはH2Rのフェザーベッドタイプとディメンションを引き継ぎつつ改良を加えてハリス社にオーダーした。

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NISSINのロゴも見えるシンプルなリヤブレーキキャリパーはヤマハワークス車用の対向4ピストン。サイレンサーはカーボンシェルタイプを装着。

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スイングアームもハリス製アルミでリヤホイールはマービックの4.50-18サイズ。フロントホイールはテクノマグネシオ17インチでフロントキャリパーはISR製だ。

取材協力:ワン&ワン・インベストメント(活動終了)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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