文:太田安治、横田和彦、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
「Ninja ZX-25R SE」vs「CBR250RR」スポーツ性能比較(太田安治)
軽快なCBRに対して、爽快な加速が光るZX
250ccモデルの中でも際立ったスポーツ性能を持つこの2台。数値的にはZX-25Rが48馬力で車重184kg、CBRは42馬力で車重168kgとかなりの差がある。これは4気筒と2気筒の特性、構造の違いだ。
スロットル全開時の絶対的なパワーが決め手になる最高速とゼロヨン加速ではZX-25Rが優位。月刊オートバイの定地テストでも数値差が確実に反映されたデータを記録している。
しかし、スポーツライディングの舞台となるサーキットでも全開になる時間は想像以上に少なく、ストレートの短いミニサーキットではさらに少ない。そこでモノを言うのが立ち上がり加速と車重の軽さ。この点ではCBR250RRに明らかな優位性がある。全日本選手権のJP250レースでZX-25Rを寄せ付けない強さを見せつけているのがその証拠だ。
つまり、峠道を駆け回るならCBRのほうが扱いやすく、結果的に速い。特に2023年2月にモデルチェンジした現行型は中間加速の鋭さが増したうえに、前後サスペンションの絶妙バランスによってブレーキング~コーナリングでの速さも引き上げられた。2~3速までしか使えないタイトターンが連続し、上り下りもある峠道ではCBRの乗りやすさ、ヒラヒラ感が強力な武器になる。
対してZX-25Rは大型車的な落ち着いたハンドリングと、1万8000回転まで伸びるエンジンの爽快感、唯一無二の超高回転サウンドが魅力。CBRとは質の異なる、体で感じるスポーツ性にあふれている。
エンジン特性とハンドリングの好バランスでライダーのスキルと走る場所に関係なく楽しいCBR。スロットルワーク、ブレーキングからターンインまでの操作次第で走りの質が大きく変わるZX-25Rの面白さ。今回、2台を乗り比べてキャラの違いを改めて実感した。
【太田安治のまとめ】
Kawasaki Ninja ZX-25R SE
前モデル以上に高回転域での伸びが鋭くなり、回し切って走る爽快さが増した。加えてフロントフォークの変更で路面追従性が上がり、乗り心地も良くなっている。落ち着いたハンドリングはZX-25Rの持ち味だが、ホイール幅や前後サスの減衰特性を変えて、250ccスポーツ車らしい軽快な味付けにしてもいいように思う。
Honda CBR250RR
初代に比べると前後サスペンションのバランスが格段に良くなり、フルブレーキングからのフルバンク、クイックな切り返しのすべてにおいて接地感が上がった。エンジンも高回転での吹き詰まり感が解消されたことに加えて中回転域での力強さがさらに増している。高速クルージングでの快適さと併せ、完成の域に達したという印象だ。
「Ninja ZX-25R SE」vs「CBR250RR」街乗り&快適性比較(横田和彦)
ストリートでの楽しさに各車の持ち味が活きる
250ccスポーツの中でも注目度が高いCBR250RRと、ZX-25Rの最新モデルを市街地で乗り比べた。
並列2気筒エンジンの細部を見直して最高出力を高めたCBR250RR。このエンジンはトルクバンドが広く、市街地で多用する回転域で力強さが感じられる。正直、街中ではパワーアップを体感しにくいが、アクセル操作に対するレスポンスやトルクの盛り上がり感などはさらに洗練された印象。
特筆すべきは新採用された倒立フォークのしなやかな作動性。衝撃吸収性が高まるとともに接地感がしっかり伝わってくる。街中ではブレーキが不安なくかけられ、高速道路走行では安定性が向上。さらに高回転まで力強く伸びていくエンジン特性とも相まって、高速道路を使ったツーリングもストレスなくこなせる。
ZX-25Rは、サイレンサーが別体になり出力が48PSに向上。爽快な吹け上がり感はさすが直列4気筒といった感じだ。低回転域での押し出し感は弱いが、鋭い吹け上がりでカバーする。瞬発力よりも中回転域からの伸び感が楽しめる特性に磨きがかかった。7000回転以上になるとレスポンスは鋭くなるが、車重があるため挙動は比較的穏やか。しなやかなピッチングモーションを感じながら、狙ったラインをスムーズにトレースする。
高速道路ではレッドゾーン付近までパワー感が持続するようになったことを体感できる。回転域によってはステップなどに微振動が伝わることがあるが、基本的に滑らかなエンジン特性なので、クルージングは快適だ。
市街地でも軽い車体をグイグイと押し出すトルク感を活かし積極的に操る楽しさが味わえるCBRに対し、高周波サウンドを聞きながら落ち着いた挙動の余裕ある走りを堪能するZX-25Rエンジンの違いがキャラクターを明確に分けている。
【横田和彦のまとめ】
Kawasaki Ninja ZX-25R SE
出力アップのほかメーターがクッキリと見やすいTFTフルカラー液晶に変更され、倒立フォークにプリロード調整が追加された。ボリュームある車体とよく動くサスペンションによる軽すぎず手応えのある挙動からクラストップレベルの安定感が得られるので、アクセルも開けやすい。スポーツ走行からツーリングまで幅広く対応する。
Honda CBR250RR
ツインらしいスリムなシルエットはそのまま、フルカウルやシートカウルなどをエッジあるデザインに変更。フロントフォークにはショーワ製SFF-BPを採用している。市街地では上質な乗り心地が味わえ、峠道ではリニアな接地感が伝わってくるため、トルクバンドを活かしながらアクティブにコントロールするのが最高に楽しくなった。