文:ノア セレン、横田和彦/写真:南 孝幸
790DUKE VS GSX-8S|スポーツ走行性能比較
スポーツNKの資質を峠の走りで見極める!
800ccパラレルツインエンジンのほどよいパワーは、ワインディングでどのようなパフォーマンスを発揮するのか!? ノアと横田がくだしたスポーツ走行の評価が気になるところ。
倒立フォークにラジアルマウントキャリパー! ミドルクラスも充実装備!
かつてミドルクラスは経済性(廉価性)も求められていたこともあり、フォークは正立タイプ、キャリパーはピンスライドといった装備が一般的だったが、今は倒立フォークにラジアルマウントキャリパーといったリッタークラスと変わらない装備を採用する。さらに790DUKEはマスターシリンダーもラジアルポンプタイプだ。いずれもフォークに調整機能は持たないが、そのぶん汎用性の高いセッティングで走る場面を選ばない。GSX-8Sのエアバルブはストレートタイプだが、790DUKEはL字タイプでエアチェックが容易だ。タイヤサイズはいずれも一般的な120幅を採用。
リアサスのリンクの有無を除きとても似ているリアまわり
リアタイヤはかつての690DUKEやSV650よりも太く、大排気量車では一般的な180幅。790DUKEはMAXXIS製、GSX-8Sはダンロップ製で、それぞれ車両に合わせた専用チューニングを施したタイヤとなっている。スイングアームは790DUKEが外側から補強部材が見えるKTMお馴染みのデザイン、GSX-8Sは専用設計のアルミ製を搭載する。リアサスはいずれもプリロード調整機構のみを持つシンプルかつ必要十分なものだが、GSX-8SはKYB製のリンク式で、790DUKEは軽量なリンクなしタイプのWP製を装着する。
クイックシフター標準装備のGSX-8S
試乗車には両方ともクイックシフターがついていたが、GSX-8Sは純正装着なのに対して790DUKEの方は「TECH PACK」というオプション設定(10万8013円)。作動性は790DUKEの方がタイムラグや動力の間引きなくシフトチェンジをしてくれる印象で、GSX-8Sの方はわずかなシフトショックが気になってしまう。なお両車ともクイックシフターをOFFにすることもできる。
790DUKE
GSX-8S
ノア セレン CHECK
スポーティ感バリバリの790DUKEだが、実はGSX-S8の方がハイペースだった!?
マシン構成は激似! でも全く異なる2台
高速道路や街中では、2台ともかなり似た印象だったが、ワインディングを走り回るとコレがけっこう違っていて面白かった。
一番の違いは着座位置だろう。タンクが長く感じて、前後輪の接地点に対して後方/下方に座っているGSX-8S(以下:8S)に対して790DUKE(以下:DUKE)はもっと前方の高い位置に座る印象。DUKE単体で乗っていればそれほど極端には感じないものの、8Sから乗り換えるとモタード感を強く感じる。とくにコーナリングに熱中しペースが上がり始めると前輪に乗っかってグリグリとコーナーを切り取っていくようなアグレッシブさがあった。
対する8Sは、実はホイールベースはDUKEよりも短いにもかかわらずかなり安定した感覚がある。サスも初期作動がしなやかで路面からの感覚を把握しやすいし、DUKEに比べると後輪荷重を感じながら余裕をもってペースを上げていける。
とくに公道ではありがちな予想外の路面のギャップなどで車体が振られた時には、DUKEではオオットト! となってステダンがついていることに感謝するような場面がある一方、8Sは車体全体が適度にたわんで軟着陸し、すぐにアクセルを開けていける。また8Sのブレーキが強烈に効くのも特に印象が良かった。
良いタイヤを履いて、サーキットを走るならダイレクト感あるハンドリングと高回転域パワーに勝るDUKEが楽しそうだが、公道やワインディングならば外乱に対してしなやかな車体と、中回転域でトルクが豊かな8Sに軍配かな!
横田和彦 CHECK
リズミカルにカーブを抜ける! 質が違う軽快感にビックリ
安定した挙動のスズキ、モタード指向のKTM
2台のキャラクターの違いを強烈に感じたのがワインディングだ。それまでは割と似た雰囲気だったが、ペースを上げると違った表情を見せる。
GSX-8Sはタンクが長めでやや後ろに座るイメージ。ライダーの動きは基本的に左右方向になる。コーナーへのアプローチで横方向に荷重移動すると即座にバンクしていくが、常にタイヤの接地感が伝わってきて不安感がない。バンク中も気持ちにゆとりが持てるほど。そしてコーナーの出口でアクセルを開けると狙ったラインを軽快に立ち上がっていく。どこかで体験した感覚だぞと考えると、従来のスズキのネイキッドバイクの延長線上にあることに気付いた。見た目や車体構成は先進的だが、ハンドリングは従来のバイクの持ち味を継承している印象なのだ。
対して790DUKEはタンクが短くライダーとハンドルの距離が近い。峠道でペースを上げていくと、シート上で左右のみならず前後にも動くようになる。コーナーへの進入では近く感じるフロントタイヤをガツンと突き刺すようなイメージでブレーキングし、荷重移動とハンドルへの入力を併用して素早くバンキング。フロントを軸にする感覚でクルリと旋回すると、パラツインエンジンの鋭い吹け上がりとともにダッシュで立ち上がっていく。モタードのようにライダーが積極的に荷重移動し操っていくのがKTM流だと感じる。
つまり従来の大型バイクから乗り換えても違和感なく操れるのがGSX-8Sで、大型バイクらしからぬ乗り方で楽しめるのが790DUKEだと表現できるだろう。
【注目ポイント】GSX-8Sはコンパクトさを強調するショートマフラーを採用
マフラーの取り回しにも違いがある。790DUKEがアップマフラーなのに対し、GSX-8Sはスイングアーム下で完結するショートタイプ。重量物を中心に寄せることと、低重心化を両立している。同時に停車時に第三者が触れて火傷することを防止するというメリットもある。