※本企画はHeritage&Legends 2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
基本を抑えながら時代も取り込んでいく
ゼファー1100/750はもう10年、20年というレベルで扱いの中心にある、しゃぼん玉。弱点対策も早くから手を付け、カスタムも多くを手がけてきた。だから車両を見れば、同店で何を勧めているか、勧めてきたかが分かるわけで、今回紹介するゼファー2台はまさに今のそれ=お勧めを表している。
「どちらも、ノーマルスイングアームで6インチ幅のホイールを履けるようにしているんです」。こう言うのは、しゃぼん玉でマネージャーを務める滝川さん。
「3mmオフセットタイプのフロントスプロケットを用意して、これに合わせたリヤホイールスペーサーも作り、チェーンラインを揃えつつ左側のタイヤ干渉を避けます。右側はトルクロッドが干渉するので逃げ加工を施しました。
アクティブ製サポートを使ってキャリパーが下に来るようにした車両用ですが、ボルトオンできないものをボルトオンできるようにしたというパッケージになります。元々4.50ホイールで160幅タイヤだったゼファー1100を、フロントホイールを17インチにしてリヤを5.50にすると180。時代でタイヤも変わってきてますから、今なら190を履きたい。そこに6インチホイールを装着して対応します」
スイングアーム変更は先の話としても、ワイドタイヤを履いてみたい。そうした要望に大幅加工なしに対応しているのは、パーツや車両への経験ゆえだ。続けて、その他のお勧め要素を聞こう。
「フロント17インチには前提として軽量ホイール、フォークオフセット35mmのステアリングステム。純正はオフセット40mmで、そのまま17インチ化するとトレールが減って不安定になるので換える。オイルクーラーにマフラー、それからハンドルというパッケージを勧めます。
パートとしては今までと大きくは変わりませんが、先ほどのタイヤのように細かい部分は変わりますから、そこは押さえます。マフラーもそのひとつです。ラインナップが変わる中で、性能やルックスがいいものを選ぶ。ベース車両の年式によっては規制適合という要素が入りますから、それも」
まだ多くのアフターパーツが現れるゼファー。スペックやディメンションといった数値的なものは確立されても、実際に見て、使った時にパーツの違いや個性はある。それで進化は出来るわけだ。
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次の世代にも車両への興味を持ってもらいたい
お勧め要素をパッケージ化した両車は、取り回しも軽く、車両がコンパクトになったように思える。これは今までにゼファー1100に手を入れてきた人なら分かる感覚だろうが、それが洗練されたような手応えもある。両車で角度は異なるが、ハンドルのホールド性がいいのは共通のようだ。
「ハンドルバーは〝タッキーバー〟です。もう15年は売っています。元々ZRXのカスタムにベストなハンドルをと作ったものですが、ゼファーの17インチにも合います。
ただマニアックなパーツで、ノーマルにポンと付けると乗りづらくなる。この2台のようにカスタムを進めて、もっと乗りやすくしたいとなった時に効きます」。その効果が現れていると見ていい。
ところでこの2台、ともにオーナーは30歳代。今のバイク界では若い。滝川さんは若い人がこうしたカスタム、そしてゼファーに興味を持つことを大事に考えている。かつて空冷Zがそうだったように、現役時代を知らない世代でも興味を惹き、手を入れることで、さらに後世に残る。そんな立ち位置への期待感も、ゼファーにはある。
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ゼファーは走らないというイメージを持たせたくない
その期待感も含めて、今あるゼファーにはどう接するといいのだろう。ベース車そのものや純正パーツの状態も気になってくる。
「エンジンは手を入れる人が多いですね。オーバーホールしてハイカムや鍛造のハイコンプピストンを入れるケースも増えました。ピストンはいくつか選べますし、換えない場合でもピストンリングは換える。開けたならきれいにして、ヘッドO/Hとポート研磨、面研、クランクバランスも取るのがハイパフォーマンスと元気良さ、延命につながります。
ハーネスやミッションも気になりますが、後期型パーツを使うなどでまだ手が施せるので、状態確認を含めて相談してほしいです。
ここでエンジンに手を入れたなら、メーター変更も勧めたいです。ノーマルケースにスタックなどステップモーターメーターを組み込むビルトインサービスがあります。せっかく元気良くなったエンジンですから、回転計ギヤの抵抗も外してあげたい考えからです。
車体に関しては、フレームも足まわりも特に問題はないです。ただ、17インチ化した時には車体の調整をしっかりしてほしいです。フロントフォークの突き出し量、リヤショックの長さ、ハンドル高さ。これで乗り味ははっきり変わります。750は元から前後17インチですからあまり問題ないですけど、1100は元々リヤが低いので、上げたくなるんですね。でもツインショック車はリヤを上げ過ぎて乗りづらくなることが多いですから、適切な高さにする。
ノーマルからショックを換えるという場合でも、ゼファー適合品でなくZRX用を使うことも多いです。今回の2台もそうで、ZRX用で1.5cmほど上がっています。DAEG用だとさらに上がりますが、このくらいが目安になります。スイングアームを換える場合は高くなりがちなので注意が必要です。迷うようなら私たちに相談していただければいいですよ」
こんなゼファーへの展望と、滝川さんの考え。その根底にあるのは「“ゼファーは走らない”というイメージを持たせたくない」という思いだ。多くの車両、パーツに接するからこその提案。それは同店の“しゃぼん玉SS(ストリートスペシャル)”にもつながる。
ユーザーの考える、速く、格好良くという要素。それだけなら無制限の何でもありだが、SSの名の通り、あくまで公道を走ること、ナンバー付きでどこまでやれるかを考えて、カスタム化を図る。
今回の2台の車両は、いわば現時点での同店お勧め=定番をパッケージ化したもの。また新たな発想やパーツが現れれば、それらを取り込んだ車両も出てくる。ゼファーの魅力は、まだ引き出せていけるのだ。
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乗りやすさや扱いやすさも求めた上でカスタム感も満足させる提案群
しゃぼん玉でのゼファー用メニューやパーツは多くが蓄積されてきた。その中で1100に今加わったもの、あるいは基本としてやっておくといいというお勧めメニューをまとめてみた。
●フロントを17インチ化する際にはオフセット35mmへのステアリングステム換装を
しゃぼん玉ではゼファーのフロント[18→]17インチ化とそれにともなうステム換装は鉄板メニュー。フォークオフセットはノーマルの40mmから35mmにするのが標準で、しゃぼん玉ショートオフセットステムキットTYPE2(上)、トップブリッジをウイングタイプとした同TYPE3(下)もオリジナルで用意。
●軽量鍛造ホイールへの変更は操縦性もルックスも燃費も向上
17インチ化にはホイールの変更が当然となる。鍛造品を主に軽量ホイールが勧められるが、タイヤ選択自由度が広がること、軽くなることがメリット。これでコーナリングやブレーキング、加速性とバイクの動きが向上し、燃費も良化と同店では加える。換装時にはサスも動く方向に振りたいとのこと。
ゼファー1100へのSTACKタコメータービルトイン加工。エンジンから駆動を取らずスマート化と低抵抗化を図る。メーター別途用意、組み込み費3万3000円。ここでは速度計もK‘S製(別料金)としている。
●マフラー変更も基本のひとつ年式や好みでも選んでいける
ゼファー1100用
ゼファー750用
ゼファー1100用[JMCA]
軽量化と高効率化ができるマフラー換装もお勧めのひとつ。上2点はしゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾースト・ウエルドチタン。上が1100用(コニカルチタンV3サイレンサー仕様で44万5500円)、中は750用(グレネードチタンV2サイレンサー仕様で44万5500円)。サイレンサーは選べる。排出ガス規制適合の2002年A7以降では下のしゃぼん玉NEWセンターコレクトUPマフラー(JMCA認証品、21万8900円)も選べて高人気だ。
空冷モデルとしてエンジンオイルコンディションにも気を遣うこと。そのためにオイルクーラーも推奨品。しゃぼん玉ではこのデモ車での装着例、今回紹介の2台のように、オイルが満ちる上入れ上出しタイプを勧めてくれる。
●17インチ化しカスタムを進めた上で効果のあるオリジナルハンドル
ハンドルは滝川さんが自身のZRX1100カスタムでテストを重ねた〝タッキーバー〟が定番。ステム変更時でもハンドルロックが使える。ノーマルではなく、カスタムを重ねた車両に合うという1本で、販売中だ。
●ノーマル160幅から190幅への要望変化に対応するオフセットスプロケット&加工
ゼファー1100のノーマルスイングアームでリヤ6インチホイールを履く際に、チェーンラインとタイヤの干渉を避けるオリジナル3mmオフセットスプロケット(530サイズ、16T。9900円、値上がり予定)とリヤスプロケットスペーサー3mm(4180円。写真はゲイルスピードホイール用)も販売。
リヤキャリパー用トルクロッドの逃げ加工。
アクティブリヤキャリパーサポートを使う際はこれでボルトオンで6インチホイールが履ける。もちろんタイヤとの各部干渉はない。