まとめ:RIDE編集部
第一世代(1999年)
Hayabusa(GSX1300R)1999年式・輸出車
急降下するファルコンを見た。日本では彼をハヤブサと呼ぶ
スズキが目指したのは、クラスやカテゴリーにとらわれない「最強」のオートバイ、それがアルティメットスポーツ、ハヤブサだ。最速ではなく、最強。たとえ数年後に、ハヤブサより動力性能に勝るモデルが出現しようと、存在感を失わない――そんな1台だ。
1998年、ハヤブサ登場時の英文紹介に、こんな記述がある。
「ある金曜の午後、日本のスズキ本社でミーティングしていた商品開発のプランナーたちは、カテゴリーにとらわれない、耐久レースやドラックレースを参考にしたストリートバイクを定義しよう、という結論を導き出した。それがアルティメットスポーツだ」
エンジンは出力を確保しながら耐久性を損なわない仕様で、世界最速を目指すに必要な175PSを絞り出す1300cc。どんなにチューニングしようと、たとえばターボキットを後付けしても大丈夫な耐久性を担保した。
スズキにとっても1300ccの大排気量4気筒は未経験だったが、車体構成はオーソドックスなもの。1300ccにしては軽量コンパクトな水冷4気筒エンジンをアルミツインチューブフレームに搭載し、倒立フォークにリンク付きリアサスペンションをセット。
ブラッシュアップしたボディはロング&ファットに見えたものの、同時期にラインアップしていたGSX-R1100よりも10mm長く、15mmスリムで75mm低いというサイズ。車両重量は6kgも軽量に仕上がっていた。
それよりも、世界中のファンの目を引いたのが、レーサーレプリカ群とは明らかに違うエアロフォルムだった。
「開発チームのエンジニアが休日に山登りをしていたとき。崖の上に見かけたファルコンが、ものすごいスピードで急降下するのを見た。彼は、空気のトンネルを切り裂いて186MPHに届く。決して全力ではない、楽なパフォーマンス。快適な超高速こそが新しいモデルのコンセプトに相応しいのではないか――。このファルコン、日本ではハヤブサと呼ぶ」(前出英文リリースより)
ここに記された時速186マイルとは、キロ表示すると300km/h。快適な最高速キングのために、空力特性を最大によくすることで、空気の壁をブチ破るのではなく「利用する」エアロフォルムを作り上げたのだ。
ビッグシルエットのフロントフェンダー、可能な限り低くマウントされたヘッドライト、それを可能にする超薄型メーターなどが新作され、スズキのモデル史上最高のCdA値(空力性能の指標)を持つハヤブサが生まれたのだ。
国内外で行なわれた最高速テストでは、ハヤブサがZZ-Rやその後継モデルZX-12R、ブラックバードを圧倒。ミラー装着のままの市販状態で300km/hオーバーをマークし、この後の競争過熱を防ぐためにも、300km/hスピードリミッターが装着され、スピードメーターは「300」という数字を明記しない、という自主規制まで生まれてしまった。それもみんな、ハヤブサの歩んできた軌跡なのだ。
第二世代(2008年)
Hayabusa (GSX1300R)2008年式・輸出車
どんなに時代が変わっても、ハヤブサはハヤブサであり続ける
世界中にハヤブサパニックを巻き起こしたスズキのストリートスターは、2008年、誕生10年で初めてのビッグチェンジを受ける。しかし、その「第二世代」ハヤブサも、スタイリングは一新されたものの、やはり誰が見てもハヤブサはハヤブサだった。
エンジンは、ストロークを2mm伸ばして1299ccから1339ccに排気量アップ。デュアルスロットルバルブ、ツインフューエルインジェクター、チタン吸気バルブなどを採用して、第一世代の最高出力175PSは、パワーアップして197PSと表記された。
さらに電子制御が追加され、A/B/Cの3種類に選択可能になったパワーモード、その後のマイナーチェンジでABSを標準装備。第二世代が登場して6年後には、待望の日本正規仕様も発売。国内販売される正規モデルで、過去最高のパワーを発揮するフルカウルスポーツモデルが誕生したのだ。
この日本仕様は、海外仕様とほぼ同じ諸元を持つという異例なケースだったが、これは当時ちょうど改正された騒音規制が、ヨーロッパと足並みをそろえる規制値に緩和されたため、これまで日本の方が厳しい規制値だったものを、ヨーロッパ仕様をそのまま販売できるようになったためだった。
この第二世代は、スタイリングと同じくパワーフィーリングも洗練され、大排気量車にありがちな唐突なトルクの出方が皆無。スムーズにパワーが湧き出てきて、そこまでもどこまでも回転が伸びていくようなパワーフィーリングは健在だった。
ハンドリングは、高速寄りの安定性を高めた印象。その分、日本で使うスピード域でどっしり感が増し、第一世代以上の手応えを感じることもあった。
隼(ハヤブサ)2014年式
国内仕様で197PS!
2008年にフルモデルチェンジ、第二世代に進化したハヤブサは、2014年から国内モデルとして市販を開始。海外仕様、そのままのスペックで発売され、その最高出力はなんと197PSのまま。発売当時価格:156万4500円。
第三世代(2021年)
Hayabusa(ハヤブサ)2021年式
2021年には、ハヤブサは現行モデルの第三世代に進化。ここでも、ハヤブサは誰が見てもハヤブサ。けれど第一世代から第二世代へ進化した延長線上に第三世代はなく、第二世代とは違う方向へ進化したのだという。
「第三世代は、第二世代が背負っていた、世界最高馬力でなければならない、世界最速でなければならないという縛りから脱却して、今の時代に合わせたハヤブサのあるべき姿を具現化しています。ハヤブサらしさって何だろう、というところから開発をスタートしました」というのは、ハヤブサの開発チームメンバーであるスズキ二輪第一技術部の安井信博部長。
開発スタート時には、動力性能を重視するあまり、6気筒エンジンやターボチャージャーにもトライした第三世代のハヤブサ。フレームやサスペンションも、スーパースポーツ的運動性能を持つ仕様にもトライし、実際にプロトタイプも製作したのだという。
「けれど、いろんな方向性にトライした末に、この形に落ち着きました。ハヤブサって、オーナーさん、ファンのみなさんをはじめ、開発も生産も、販売も営業も、みんな大好きなバイク。ハヤブサ愛って深いんです」(安井さん)
時代が変わってもハヤブサはハヤブサ。次の世代も、きっとそうだ。
世代別のスペック・価格
年代・世代 | 1999 GEN.01 | 2008 GEN.02 | 2014 GEN.02国内 | 2021 GEN.03 |
---|---|---|---|---|
車名 | Hayabusa(GSX1300R) | Hayabusa(GSX1300R) | 隼(ハヤブサ) | Hayabusa(ハヤブサ) |
全長×全幅×全高 | 2140×740×1155mm | 2190×735×1165mm | ← | 2180×735×1165mm |
ホイールベース | 1485mm | 1480mm | ← | ← |
車両重量 | 215kg(乾燥) | 220kg(乾燥) | 266kg(装備) | 264kg(装備) |
シート高 | 805mm | ← | ← | 800mm |
排気量 | 1298cc | 1339cc | ← | ← |
最高出力 | 175PS/9800rpm | 197PS/9500rpm | ← | 188PS/9700rpm |
最大トルク | 14.1kgf・m/7000rpm | 15.8kgf・m/7200rpm | ← | 15.2kgf・m/7000rpm |
燃料タンク容量 | 22L | 21L | ← | 20L |
キャスター/トレール | 24.2°/97㎜ | 23.25°/93㎜ | ← | 23°/90㎜ |
タイヤサイズ前 タイヤサイズ後 | 120/70ZR17 | ← | ← | ← |
190/50ZR17 | ← | ← | ← | |
発売当時価格 | 輸出車 | 輸出車 | 160万9200円 | 215万6000円 |