文:中村浩史/写真:富樫秀明
よくできた空冷単気筒と癖のないハンドリング
そのGB、アイドリングすぐ上から十分なトルクが出ている特性がある。タコメーターがないから正確な回転数は分からないけど、1速や2速ギヤ2000~3000回転で車体を押し出す力がある。
カタログデータでは、最大トルク発生回転数が3000回転とあるから、回転を上げずに早め早めにシフトアップして走ると、身体に伝わる鼓動、マフラーからの排気音が心地良い乗り物なのだ。
かと言って高回転まで引っ張っても、振動が顔を出すとか、エンジンが苦しげに回る、という印象はまったくなし。1速で50km/h、2速で80km/hになると回転リミッターが効くけれど、そこまで回してもエンジンに無理をさせている印象がほとんどないのだ。
クルージング中も同じで、どんどんシフトアップしていくと、4速からトップギヤ5速に入れた時にスッと回転が落ちるのが分かる。これは5速のギヤ比をオーバードライブに設定しているからで、回転を上げ過ぎなくても、ハイスピードで巡行できる設定。
一般道の速度域から高速道路まで、振動対策と鼓動の演出、それにギヤ比のことまで、本当によく考えられている。空冷単気筒って、こうだったらいいな――そんな特性をきちんと再現しているのだと思う。
フロント19インチのハンドリングも、少し前時代的。軽くシャープと言うより、直進安定性が強くて、バンクさせて向きが変わるのにワンテンポある、そんな特性だ。リヤに17インチラジアルタイヤを履くGB350Sはもう少し軽く速くバンクする感じだけれど、リヤ18インチのGB350の「のんびり感」の方が好みだった。
ちょっと近所をひと回りするのも、半日で200~300km走るのも、何の緊張も気負いも強いないGB。よくできたエンジンとクセのない、誰にでも楽しめるハンドリングは、今だけではなく、これから10年20年と、幅広い年齢やスキルを持つライダーに愛されるだけの資質にあふれている。