文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
カワサキ「Ninja ZX-6R」インプレ(宮崎敬一郎)
スーパースポーツなのに抜群の上質さと優しさ!
かつてミドルスーパースポーツたちは全速力で競走することに注力した挙げ句、取り扱いが神経質になった。そんな中、プラス37ccのゆとりを与え、扱いやすさに集中したSSがカワサキのZX-6R。その威力は絶大で「絵に描いた餅」のようなSSの走りをずっと身近なものにしてくれた傑作モデルだ。
いまさら、そんな生い立ちを紹介したのは、今回の新型6Rが常識的なSSの概念を覆すほどにフレンドリーだったから。まず、どのようにでも使える魔法のエンジンと、SSのハズなのに、どこでも快適な乗り心地を生む足まわりを持っている。
しかもそのクオリティは非常に高く、そこらのツーリングスポーツモデルに見習わせたいほどのレベルだ。さすがにライポジはSSだが、その強前傾を恨めしく思うほど万能な走りをこなすのだ。
ピークパワーは122PS。200kgを切る車重にこのパワーだから、開けた時の動力性能は並みのアッパーミドルスプリンターの上を行く。だが、驚くのはそのパワーの使いやすさ。フルパワーの「スポーツ」モードであろうと、レスポンスはスロットル操作に優しく、全回転域でもたつきや息つきなどもない。広く見れば8000~1万5000回転というパワーバンド内でも、その応答性は必要以上に敏感なものではない。力の核は1万回転以上だが、その数字に身構える必要はない。スムーズなのでストレスなく回せるのだ。
もちろんフヌケたパワーじゃないし、パワーバンドを使えば猛烈に強力で、見合ったスキルさえあれば相当速く走れる。
さらに信じられないことに、6速で1800回転ほども回していれば35km/h強でノッキンクもせず、結構な坂を登ったり、クルマの流れをリードしながら街中を流せたりできてしまうのだ。
トルクがある……なんて簡単な表現では伝えにくい。全回転域を通して振動が少なく、風のように回るエンジンなので、回していることにストレスを感じないのも魅力だ。
ハンドリングは素直なだけでなく、低速域では極めて軽快だが、80km/hほどになると上質な節度がハンドルや車体に生まれる。上質というのは、体重移動や前後荷重の変化……つまり、スポーティなコーナリング操作をする時はすこぶる俊敏に身を翻し、リーンする。典型的なSSのハンドリングだ。
さらにハイグレードな前後サスの初期作動が極めて滑らか。ただ走っているだけでも心地よく、上質感が味わえる。大きな凸凹だとさすがに突き上げられるが、ギャップに強く、乗り心地がいい。それでいて、いざスポーツした時はさすがSS、スタンダードスポーツなどでは対応できない高荷重に耐えて路面の荒れを吸収する。
ベースとなる車体レイアウトの設計は2世代ほど変わっていないが、その分長く熟成されており、エンジンやサスの味付けは実用性に富むだけでなく、極めて上質。普通に使えるSSという点では、全クラスを見渡してもトップレベルだと思う。姿はSSだが、ライポジなどに少し手を加えれば、ニンジャ1000のようなキャラクターになってもおかしくない適応力が魅力だ。
カワサキ「Ninja ZX-6R」カラーバリエーション
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