文:バイカーズステーション編集部、松田佳之/写真:平野輝幸
※この記事はモーターマガジンムック『空冷Z伝 完全版』に掲載した記事を一部編集し転載しています。
カワサキ「Z1-R(Z1000-D1)」特徴

Kawasaki Z1-R(Z1000-D1)
1978年
総排気量:1016cc
エンジン形式:空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒
シート高:815mm
乾燥重量:246kg
世界中のマニアを魅了したカフェレーサー・デザイン
ヨーロッパの耐久選手権、アメリカのスーパーバイクなど、レースでの活躍をZに反映させるため、“R”という文字を冠したZ1-R(Z1000-D1)は、1977年に公開された。当時、“カフェレーサー”と呼ばれるカスタムバイクが世界的に流行しており、世界中のメーカーがこれに追随したさまざまなモデルを登場させていたが、カワサキもこうした流行に加わることを決定したのである。
が、ヨーロッパ製カフェレーサーパーツの多くが曲面構成であったのに対し、カワサキはエッジの効いた直線フォルムを造り上げた。これは手の入れようがないほどに完成されていたZ1スタイルから自ら脱却するための手法でもあったが、斬新なZ1-Rの造形は、万人受けはしなかったものの世界中の熱狂的なマニアに高く評価された。高価格と発売直後のリコール、さらには強力なライバルたちが出現する中で1万7000台を生産。後のカワサキ車にも多大な影響を与えた。
Z1R-TC

アメリカではなんとターボチャージャーを搭載した"Z1R-TC"がディーラー車として市販された。初期の銀(STDと同色)は1978年度に220台、ブラック地のII型は280台が造られたという。
カワサキ「Z1-R(Z1000-D1)」スタイリング解説

直線的なデザインが、目から鱗が落ちるような衝撃を世界中のファンに与えた。カワサキとして初めて採用した4-1集合のエグゾーストも、カフェレーサースタイルに欠かせないパーツだ。当初の販売ターゲットは北米で、価格は$3695とZ1000Aより約3割高かったが、アメリカのジャーナリストたちには珠玉のスタイルと絶賛された。塗色はメタリックスターダストシルバーのみ。青みがかった銀に、細いストライプが入っている。

ビキニカウル、右1本出しのマフラー、角型ウィンカーなど専用の装備により、Z1Rは他のZシリーズとは異なる外観を得ている。他の角度から見ると、ビキニカウルのスリムさがよくわかる。

同じ1978年発売のZ1000-A2の車体を用いながら、前後18インチのキャストホイールを採用。純正タイヤサイズはF:3.50H18、R:4.00H18。専用のディメンションを設定しなかったために、操縦安定性は褒められたものではなかった。
方向安定性分を受け持つトレールが非常に小さく、18インチ化でタイヤの幅がわずかに広くなったこともあって、深刻な切れ込みが発生した。Z1000-Aの車体は、カウルや4連メーターなどを採用したことで増えたヘッドライトまわりの重量を支えられなかったともいえよう。それでもこのモデルの人気は高かった。