スロベニアで電動オフロードバイクを開発している「フラックス パフォーマンス」は、2025年よりその製品版を市場投入するために現在準備を進めています。そんな同社に先日、電動バイク業界でその名を知らない人はいない・・・といえるビッグネーム2名が加わりました!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
--※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2024年8月22日に公開されたものを一部編集し転載しています。

ひとりは、伝説的な電動オフロードバイク、アルタ モーターズの元CEO!!

フラックス パフォーマンスのCEOであるマルコ ウコタは、オフロードレーサーとして長年キャリアを積んだ人物です。彼が電動オフロードバイクを作る会社を作った背景には、騒音などの問題によって欧州のモトクロスコースが数多く閉鎖に追い込まれているという、残念な現実があります。

もっとも動機はそれだけでなく、ICE(内燃機関)では得られないメリットを電動車に見出したことにもあります。エンジンメンテナンスに時間とコストを費やすことを、節約することが電動車はできること。そして電動車は既存のICE搭載車よりもきめ細やかなセッティングを施せるので、オフロードバイクとしての別次元への進化を狙うことができるのも、開発者にとっては大きな魅力です。

画像: フラックス パフォーマンスの「プリモ」は最高出力85馬力と、ICE450ccモトクロッサーを大きく上回る最高出力を発揮します。搭載するバッテリーは7kWhというスペックで、短時間で積み替えができる交換式となっています。 fluxmoto.co

フラックス パフォーマンスの「プリモ」は最高出力85馬力と、ICE450ccモトクロッサーを大きく上回る最高出力を発揮します。搭載するバッテリーは7kWhというスペックで、短時間で積み替えができる交換式となっています。

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フラックス パフォーマンスが市販に向けて開発している「プリモ」は、最高出力85馬力という高出力ぶりが特徴ですが、スマートフォンを利用してライダーのスキルに合った出力をカスタマイズできるようになっているところに、電動車であることのアドバンテージが発揮されています。

そのほかリアブレーキ使用時に、回生ブレーキ機能を発揮してバッテリーに充電することが可能だったり、ICE搭載車のクラッチのような効果を与える仮想クラッチを電気的に採用するところなどが、「プリモ」の特徴となっています。

画像: 低速域から大トルクを発生する電気モーターの特性を活かし、プリモは出力軸で200Nm、ホイールで750Nmという強大なトルクをかけることを可能としています。 fluxmoto.co

低速域から大トルクを発生する電気モーターの特性を活かし、プリモは出力軸で200Nm、ホイールで750Nmという強大なトルクをかけることを可能としています。

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試作車であるプリモをベースにした市販版モデルは2024年から生産を開始し、2025年からカスタマーへのデリバリー開始を予定しているとのことです。仕様はモトクロッサーのほか、公道用のエンデューロとスーパーモトの計3種類を想定しており、早期申込割引価格は1万2,000ユーロ≒195万1,400円と設定されています(通常小売価格は1万3,000ユーロ)。

7月2日、フラックス パフォーマンスはアルタ モータースの共同創設者で元CEOであるマーク フェニグスタインを、諮問委員会および投資家として迎え入れたことを公表しました。電動バイク、もしくはオフロードバイクファンであれば、アルタ モータースがかつて優れた電動オフロードモデルを製造販売し、一世を風靡したことを覚えているでしょう。

電動モトクロッサーの「レッドシフト」を発売してからのアルタ モータースの活動は2016〜2018年というわずかな期間にとどまりましたが、その高性能ぶりは大いに注目を集め、人々の記憶に刻まれることになりました。

マーク フェニグスタイン
「2019年にアルタを売却して以来、私は少なくとも1ダースのEV新興企業と会い、検討し、あるいは売り込みを受けてきた。アルタが去った後を引き継ぎ、品質、信頼性、誠実さといった必要な基準を守りながら、モーターサイクル市場を電気自動車の優位性という明らかな次の段階へと押し上げることができる事業を認識したのは、フラックスのチームに出会ってからです。フラックスの諮問委員会に参加し、私の時間と資金を投入できることになり、とても興奮している。彼らが取り組んでいることには、ただただ驚かされるばかりだ」

日本ではベンチャー企業を潰した経験をマイナスと捉える風潮がありますが、海外ではそういう人材こそ貴重と高く評価する傾向があります。大きな失敗を経験しているからこそ、その経験を新たなビジネスに生かせる人材と前向きに評価するわけです。フェニグスタインの積んできたキャリアが、フラックス パフォーマンスの開発をどのように加速させるのか・・・注目したいです。

そしてもうひとりは、スウェーデンのあの電動バイクメーカーの関係者です!!

フェニグステインが加入する前、6月25日にフラックス パフォーマンスはもうひとりの、電動バイク業界の有名人を最高マーケティング責任者として自陣に招き入れています。それはスウェーデンのプレミアム電動バイクブランドとして、2024年2月の破産まで活動していたCAKEのカール イッターボーンです。

画像: フラックス パフォーマンスCEOのマルコ ウコタ(左)と、カール イッターボーン。 fluxmoto.co

フラックス パフォーマンスCEOのマルコ ウコタ(左)と、カール イッターボーン。

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CAKE創業者ステファン イッターボーンの息子であるカールは、父とともにCAKEのグローバルブランド化に尽力した人物です。残念ながらCAKEは資金繰りの悪化により破産し、その知財はノルウェーのブラーゲス ホールディングASに買収されることになりました。しかしカールのCAKEでの経験と挫折は、世界展開を視野に入れているフラックス パフォーマンスの力にきっとなるでしょう。

カール イッターボーン
「電動モビリティでのキャリアを続けることは、常に唯一の選択肢だった。フラックスの技術をバックボーンとするマルコのビジョンは、モトクロスの展望を変えるだろう。私は常に競争力のあるフルサイズの電動ダートバイクに憧れを抱いてきたが、ここにICE搭載バイクに土埃を浴びせるパワーを持つだけでなく、本格的に競争できる航続距離を提供する最初の製品が登場した。フラックスの成長に貢献し、電動モーターサイクルの未来を形作る手助けができることを心から楽しみにしている」

画像: プリモのフレームは、人間工学をベースに設計されたアルミ合金製ペリメタータイプ。バッテリーを衝撃から守るために、セミダブルクレードル構成となっています。フロントフォークはKYB製43mm倒立式、リアサスペンションのショックユニットにはオーリンズTTXを採用しています。 fluxmoto.co

プリモのフレームは、人間工学をベースに設計されたアルミ合金製ペリメタータイプ。バッテリーを衝撃から守るために、セミダブルクレードル構成となっています。フロントフォークはKYB製43mm倒立式、リアサスペンションのショックユニットにはオーリンズTTXを採用しています。

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画像: 7月30日、フラックス パフォーマンスは欧州の大手半導体ディストリビューターであるアヴネット シリカと戦略的コラボレーションを締結。電子部品とサプライチェーンソリューションにおけるアヴネットの力を活用することで、フラックス パフォーマンス製電動バイクの開発がさらに加速されることになるのでしょう。 fluxmoto.co

7月30日、フラックス パフォーマンスは欧州の大手半導体ディストリビューターであるアヴネット シリカと戦略的コラボレーションを締結。電子部品とサプライチェーンソリューションにおけるアヴネットの力を活用することで、フラックス パフォーマンス製電動バイクの開発がさらに加速されることになるのでしょう。

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現在電動モトクロッサーの市場では、スターク フューチャーが最強マシンとして人気を博しています。日本メーカーではホンダがプロトタイプのCR ELECTRICをFIM E-エクスプローラー ワールド カップなどに実戦投入していますが、目下電動モトクロッサーを開発していることが特許情報などから明らかになっているヤマハとスズキ同様に、その市販版の登場にはもうちょっと時間がかかりそうです。

2人の協力な人材が陣営に加わった効果も発揮されて、フラックス パフォーマンスのプリモの市販版が予定どおり2025年にデリバリーされれば、スターク フューチャーの良きライバルになることが期待されます。今後のフラックス パフォーマンスの動向に、注目したいです!

画像: Flux Primo Presented- YouTube www.youtube.com

Flux Primo Presented- YouTube

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文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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