文:インタビュー・濱矢文夫/写真:鈴木広一郎/試乗インプレ:山口銀次郎/撮影協力:パワービルダー、モグラハウス
試乗インプレ(山口銀次郎)
乗りやすさと特質なコーナリング特性
20年以上前に、パワービルダーの#29ピンクニンジャや230馬力のターボニンジャに試乗させてもらったことがあった。強烈な直線ド加速モンスターと、スーパースポーツモデルの様なハンドリングと扱いやすさを備える両極端な仕様に、ニンジャを知り尽くしさらに個性をまるっきり変えてしまう技術や発想を有していると、パワービルダー針替さんのポテンシャルに感心したことを今でも鮮明に覚えている。
20年以上前に試乗したピンクニンジャの仕様を簡単に説明すると、フレームのネック角がかなり立っており強烈に軽快なハンドリング特性となっていた。タイトなコーナーを有する筑波コース1000に於いても、クイックに向きを変えてしまう、レーサーレプリカに慣れた人なら受け入れやす個性となっていた。グッとまとまり軽快な車体は、エンジンそのものにでも乗っているかの様な、特異でレースへの執念に満ちたものだった。
針替さん曰く「当時のフレームはネックが立ちすぎて直進安定性が悪く、ライダーの山根さん以外乗れない仕様になってしまった。現在の仕様は、コーナーのターンポイントでパワーを掛けてもフロントが浮くことがなく、ゼロアングルカウンター(ハンドルを切らないカウンター)で向きを変えていく仕様になっている。また誰でも乗りやすい車体になっていると思う」。
乗りやすくて向きを変えやすい、というと率直にありがたく感じてしまったものの、果たして自分は理解しているのか疑問しかなかった。
絞りの浅いセパレートハンドルに強烈なバックステップ、そして軽快過ぎる車体は当然のことながらストリートモデルとは別物ではあるが、どことなく落ち着いた車体にニンジャらしさが伺える。たしかに、以前試乗したフレームよりも大らかな姿勢で、フレンドリーであることは間違いない。また、太く豊かなトルクも低回転域より発生し、エンジンのツキも癖がなく、「乗りやすい」という言葉通りの感触に好感度は爆上がりであった。
が、しかし。自分なりにペースを上げてゆくと、とてもギコチナイ。うまく曲がれない……。大雑把に言うと、「ガツンとブレーキを掛けて、スロットルをバカッと開けて向きを変える」仕様を突き詰めているために、コーナリング中の中途半端なスロットル操作に車体が反応し、通常の“曲がる姿勢”が崩れてしまうのだ。正直、今までに体験したことのない車体の動きに困惑せざるを得なかった。
お、お、おかしい? 普通に流している時はあれだけ乗りやすかったのに、いざ攻めてみたらそれまでの走りの流儀(何の気なしに走らせているだけですが)が通用しないし、おぼつかないし、上手くいかない。私の様にコーナー中にのらりくらりと煮え切らない操作をしていると、言うことを聞いてくれない感じで、マシンとのシンクロ率の低いこと低いこと。本来は、ひとつひとつのコーナーでのアクションを簡潔に行う必要性があるようだ。それは、ハーキュリーズクラスにてシノギを削り、筑波コース2000で57秒台を切らんとするライダー山根さんのロジックが活きている車両であると、半ベソをかきながら周回する私はしみじみ理解するのであった。(山口)
各部装備・ディテール解説
文:インタビュー・濱矢文夫/写真:鈴木広一郎/試乗インプレ:山口銀次郎/撮影協力:パワービルダー、モグラハウス