ゼファーシリーズには多くのデモ車を製作し、カスタムへの提案を行ってきたしゃぼん玉。その提案は今どう捉えているのだろう。そして多くの車両が整備やカスタムに入庫する中で、手を入れるべきポイントは変わっているのか。また、新しい作業やパーツはどうか。かつてのデモ車やエンジン全バラ作業を改めて見ながら、これからの展望も教えてもらった。

振り幅のある歴代デモ車、そのエッセンスが生きる

2輪用品・洋品の大型販売店にして、ライトからヘビーまでこなすカスタムショップでもある、しゃぼん玉。前者についてはハードパーツに特に強みがある。後者については、そのパーツノウハウをセッティングやカラーバランスといったところまで踏み込んで投入できる強みを持っている。

画像: ▲しゃぼん玉にはハードパーツやゼファーへのカスタムノウハウが豊富にあり、滝川泰史社長はそれを支える中心となっている。

▲しゃぼん玉にはハードパーツやゼファーへのカスタムノウハウが豊富にあり、滝川泰史社長はそれを支える中心となっている。

ゼファーは得意車両のひとつで、2010年代には毎年カスタムデモ車両を製作し、東京モーターサイクルショーを筆頭に各地で展示した。下写真の赤い車両はその最たるもので、歴代デモ車のノウハウを集約した頂点に位置する1台として’17年に製作。それ以後も店内のカスタムコーナーに随時展示され、同店の謳うカスタム、しゃぼん玉SS(ストリートスペシャル)の見本としても目を惹いている。

画像: ▲2017年に作られたしゃぼん玉ゼファー1100は、同店が手がけた歴代ゼファーのひとつの到達点と言えるもの。後軸約130PSをマークし、コーナーでのライン取りも自由でトラクションも効かせやすいという、余裕の走り性能を加えた。

▲2017年に作られたしゃぼん玉ゼファー1100は、同店が手がけた歴代ゼファーのひとつの到達点と言えるもの。後軸約130PSをマークし、コーナーでのライン取りも自由でトラクションも効かせやすいという、余裕の走り性能を加えた。

そして歴代のデモ車を見ると、どれもがフルペイントされて、例えば’10年型の白は決まりにくい白をスマートに見せるなど、カラーリングへの提案も行っている。

ハード面でもモリワキφ80mmピストンによる1258cc仕様を主流としながら、オーバーホールのみの純正1062cc仕様も提案したり(これは一般の人が普通に手を入れたならという身近さがテーマの’13年版)、そのひとつ上の1mmオーバーサイズピストン/1091cc仕様(’11年版)もあった。

車体も同様にフロント17インチ+ショートオフセットステムにリヤワイドリム+スイングアーム変更もあれば、純正17&18インチでライトカスタムもと、振り幅が大きい。つまり、どんなユーザーにも興味を持ってもらえるような仕様がどこかで提案されてきたということ。同時に、しゃぼん玉の懐の深さも見えるわけだ。

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気になるエンジンまわり、その対策は今のうちに

そんなしゃぼん玉とゼファーの関係だが、お客さんにも多くのユーザーがいる。そして多くのエンジン作業も行われてきた。写真は以前に同店で撮影する機会に恵まれた中古エンジンだ。3~4万km走行したと思われるもので、各部のダメージも改めて見てみた。

既に多くのパーツが廃番化していると聞くが、今エンジンをバラしてオーバーホールなどを考えると、どうなるのか。しゃぼん玉の社長を務める滝川さんに聞いた。

画像: ▲以前しゃぼん玉に入庫し、各部チェックするべく全バラされたゼファー1100のエンジン。走行3~4万kmと推定されるエンジンの内部を見てこれからの対策を考える。

▲以前しゃぼん玉に入庫し、各部チェックするべく全バラされたゼファー1100のエンジン。走行3~4万kmと推定されるエンジンの内部を見てこれからの対策を考える。

シリンダーヘッド裏=燃焼室表面にはカーボンスラッジが堆積し、対になるピストンの上にも同様に堆積していた。ほかは見てのようにほとんどダメージも摩耗もなかったが、ここからひとつひとつ確認する。

「やはりパーツがないという点で構えてしまいますけど、そうも言ってられないので対策はしています。ピストンはまだ選択肢がありますし、これは何とかなります。

ミッションやシフトドラムは廃番で、すぐ換えられるものはないです。しかもギヤ抜けの修理で入庫するものが今も多い。ドッグの数が少ない前期型は特にです。いずれにしてもできるだけ修理で対応します。ギヤのクリアランスを調整するシムを0.1mm厚や0.5mmなど作っておいて使ったり。

画像: ▲シリンダーヘッド裏=燃焼室表面にはカーボンスラッジが堆積し、対になるピストンの上にも同様に堆積していた。ほかは見てのようにほとんどダメージも摩耗もなかったが、ここからひとつひとつ確認する。

▲シリンダーヘッド裏=燃焼室表面にはカーボンスラッジが堆積し、対になるピストンの上にも同様に堆積していた。ほかは見てのようにほとんどダメージも摩耗もなかったが、ここからひとつひとつ確認する。

最近多いのが、外側のオイルパイプですね。金属製の細いもので、交換したいけどない。当店ではストックしていたものもありますのでそれを使いますが、何とかしたい。

当店の常連さんはひと通りそうした修理系は終わっていて、これからもっと長く乗りたいということで、そのための各パーツへのWPC処理など耐久性向上も勧めてます。できるならオリジナルパーツも増やしていきたいですけど」

画像: ▲元が中古だったとしても開けて状態が分かれば対策はできるし、いい状態を作った上でのリスタートができる。このデモ車エンジンのように何をどう組んだかも分かれば寿命も長く出来る。

▲元が中古だったとしても開けて状態が分かれば対策はできるし、いい状態を作った上でのリスタートができる。このデモ車エンジンのように何をどう組んだかも分かれば寿命も長く出来る。

人気がある車両には、同時にそれを楽しむ、難点を回避する方法も用意されていた。エンジンだけではないですけど、と滝川さん。

「フレームも15年、30年と経っているので、オーバーホールなどでエンジンを下ろした際、単体に出来る時にチェックして再塗装するといいと勧めています。実際にも多いです。オリジナルの補強もあるのでそれは別途聞いていただいた方が良いかと思います。

実際にゼファーに乗っておられるお客さんは40~50歳代の方が多く、これに一生乗るんだと全バラ→エンジンにフルに手を入れてフレームをきれいにするという方が二桁で効かないくらいいます。“壊れる、壊れているわけではないんだけど心配をなくしたいから(作業を)やっておいて”と依頼されるんです。先に言ったようなエンジンなど純正パーツのなさを肌で感じてそう思われるのでしょう」

手を入れるなら今。リセットをすれば、そこから何万km、何年も走れる。滝川さんの言うような対策も含めていれば、その数字はもっと伸ばしていけるはずだ。

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独自性も提供しながら楽しめる提案を続けたい

ところでしゃぼん玉ではパーツは販売するだけでなく、使われ方や好みの傾向も把握する。その上で、今は何を提案するのだろう。

「定番ですけどフロント17インチ化。ちゃんとデメリットも潰せます。車高が下がったりオーバーステアになったりするようなことなく、ステムを換えてセッティングもきちんと出す。自信はあります。

リヤショックもメーカーに縛られず、用途に合わせて選んでもらって、それをちゃんと合わせます。ハイパープロでもオーリンズでも何でも。用途や要求はどんどん店頭で言ってもらえばいいんです。ゼファーで“何でもいい”という方は少なくなって、やりたいことをきちんと言う方は増えた。それでいいんです。合わせるのはこちらでやりますから。

あとお勧めは当店オリジナルのフルチタンマフラー。同じくオイルクーラーも人気なんですが、今はコアがなくてお待たせしています。申し訳ないですが、もう少々お待ちいただければと思います」

画像: ▲ゼファー1100用しゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾースト・ウエルドチタンは店内に展示されているデモ車にも装着。

▲ゼファー1100用しゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾースト・ウエルドチタンは店内に展示されているデモ車にも装着。

ゼファーの弱点も知り対策し、長所は伸ばす。それを豊富にあるパーツ選びからも行えるから、ゼファーユーザーがやってくる。その上で、さらに先も滝川さんは考えている。

「オリジナルパーツを増やします。ひとつはメインハーネスです。前期はないので今は後期用の組み直しなどで対応していますけど、ショップさんからの期待もあるようなので応えようと。ゼファーとNinja用はやろうと思います。

もうひとつは流行りの乾式&スリッパークラッチ。CTSさんが作っているもので、当店でも何台かに組んでいます。CTS製品も取り付けします。その上でしゃぼん玉でモディファイした製品も用意する。面白くなると思います」

飽くなき追究心。ベースが先細りするからそれに合わせるのでなく、こうした新パーツからも新たなサポートを考え、世界を広げる。そこに面白みがより加わるのだ。

画像: ▲デモ車も店内展示されるから、来店して実車を見て相談するのもいい。

▲デモ車も店内展示されるから、来店して実車を見て相談するのもいい。

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しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る

画像1: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る
画像2: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る
画像3: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る
画像4: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る
画像5: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る
画像6: しゃぼん玉の歴代ゼファー1100デモ車両を改めて見る

歴代のしゃぼん玉デモ車両。’10年は2台を製作、緑は1258cc仕様+前後17インチに角型ビキニカウルのヘビーカスタム。もう1台は白色とカスタムの相性を探る1258cc車。’11年型は1091cc仕様と色の提案。’13年型はゲイルスピードホイール(リヤ幅は5.50に)を履きつつエンジンなど多くを純正スペックで構成したライト改の提案。’15年はリヤ6インチ幅に520チェーン、Gストライカースイングアームに1258ccという最新パーツで可能性を探った。’16年は1062ccエンジンにオーバーホールと対策を行い、幅広い層が’80年代風味を楽しめる17インチ仕様だった。

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定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

画像1: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像2: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

上で紹介した全バラされたゼファー100のエンジンの細部。距離は伸ばしていないようでカム、カムチェーンとも問題なし。

画像3: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像4: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像5: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

ピストンと燃焼室は4気筒とも多くのカーボンが堆積。ピストンサイドにも回り込んでいた。①定期的なプラグ交換やエアクリーナー清掃がされておらす、混合気が濃くなった。②十分暖気せずに、短距離で低回転域を使い続けていた。③スロー系などキャブレター不調等が原因と思われる。バルブステムまわりに問題となるガタはなかったので、①の混合気が濃かったと推測される。

画像6: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

このピストンヘッド/燃焼室のカーボン堆積の原因はこの点火プラグの電極の丸まり具合からも推測できた。おそらくこれまで一度もプラグのチェック、交換がされなかったようで、点火も弱まって混合気が濃い状況に近くなったとも言える。「空冷エンジンのヘッドまわりは熱が集まりますから、10000kmも走ればゴム製外皮の純正プラグコードがカチカチに熱で劣化します。リークなどトラブルを出さないためにも、シリコン系コードに換えておきたいですね。同様にゴム製のカバーガスケットの硬化が原因で、ヘッドまわりからオイルが滲む例も多数見ています」ともいう。

画像7: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

クラッチハウジングへのクラッチのアタリはまだわずか。そう走り込んでいないか、おとなしい乗り方だったと推測できる。

画像8: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

クランクメタルは3番に目立つ傷を発見した。ゼファーのクランクはトラブルは少ないが、こうした部分も見ておきたい。

画像9: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像10: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

しゃぼん玉に入庫するゼファー1100で変わらず多いのが、2速のギヤ抜け。「初期型A1/A2に多く、乗り方が荒いと簡単に抜けグセがつきます。ひどいとコーナリング中にギヤが抜けるということもある。2速ギヤ左右にシムを入れて、フリクションにならない程度にクリアランスを詰めてギヤの左右センターを出すことで対処します」。とのこと。A3でドッグ(噛み合い部)が変わり、症状は出にくくなったという。

画像11: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像12: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

その他のポイントも見ていこう。排ガス規制前(写真上)後(写真下)の車両をエンジン外観で見分けるには、2次エア吸入口カバーを見る。ほかに’01年型(A6)の排ガス対策車以降ではキャブへのK-TRIC(スロットル変位検知機構)追加や、’04年型(A9)以降はエンジン外観が黒になるなどしている。当初93PSだった国内仕様のカタログ上の最大出力もA6から91PSに、A9からは86PSとなっている。

画像13: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像14: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

ゼファー1100でぜひ確認してほしいとしゃぼん玉が勧めるハーネス類とフレームの干渉。干渉での接触不良やハーネス折れは避けたいのだ。ゼファー1100のメインハーネスならステアリングヘッドまわり(写真上。この車両は写真で分かるようにフレキシブルホースをカバーとして装着して擦れ対策済み)と、写真下の後ろ側タンクステーの下をくぐるあたり。強い擦れがあれば対策するか交換だ。

画像15: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像16: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
画像17: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

ノーマルスイングアームでリヤ6インチ幅ホイールを履く際にチェーンラインとタイヤの干渉を避けるオリジナル3mmオフセットスプロケット(530サイズ、9900円)とリヤスプロケットスペーサー(ゲイルスピードホイール用、4180円)も注目パーツだ。

画像18: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく

ゼファー1100へのおすすめは上のしゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾースト・ウエルドチタン。規制後車両にはJMCA適合のしゃぼん玉NEWセンターコレクトUPマフラーも用意される。25万3000円。ノーブレスト共同開発のマシニングオイルパン付きは32万7800円。

画像19: 定期交換が必要な内部パーツの状態に気を配っておく
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前後サスも豊富で用途や好みでセッティング出しまで対応。

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オリジナルショートオフセットステムは17インチ仕様に最適。フレーム加工や再塗装もおすすめだ。

取材協力:しゃぼん玉 本店

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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