文:佐川健太郎、オートバイ編集部/写真:DUCATI
ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」インプレ(佐川健太郎)
タフな条件ほど頼りになる冒険ツーリングの良き相棒
「4バイクス・イン1」のコンセプトを掲げて2010年に登場したムルティストラーダはスーパースポーツとオフロードバイク、長距離ツアラーと街乗りバイクの4つのカテゴリーの長所を兼ね備えた万能マシンとして生まれた。2021年には強力なV4エンジンを搭載した完全新設計モデルへと進化。最新の2025年モデルでは新機構を搭載して大幅なアップグレードを図ってきた。
アルミ製モノコックフレームはスイングアームピボット位置を1mm上げ、加速時やタンデム走行でのトラクションを向上。電子制御もさらに進化し、停止直前に車高を自動的に下げる機能のほか、新たに「ウエット」モードを追加し雨天走行をサポート。
また、前走車を自動追尾するACCやバックミラーの死角にいる車両を検知するBSDに加え、前方衝突警告機能も新たに実装されるなど、より安全で快適な方向へ深化を遂げている。
一見大きく変わった感じはしないが、フロントカウルのデザインが洗練されホイールやサイレンサーの形状も新しくなった。印象的だったのがシートの低さ。新型には自動車高低下機能が搭載され、速度が10km/h以下になるとリアサスペンションのプリロードが調整されてシート高が約30mm下がる仕組み。足がしっかりつくというのは心強い限りだ。
ライディングモードによってがらりとキャラが変わるのは従来どおり。峠道に入りライディングモードを「アーバン」から「スポーツ」に切り替えると、アクセルのレスポンスが一段と鋭くなりV4パワーが炸裂する。電子制御サスペンションも減衰が効いたスポーツ仕様へと瞬時に早変わりする。
ハンドリングは軽快さの中に19インチホイールらしい安定感があり、狙ったラインを切り取る正確さはドゥカティならではだ。それが「ウエット」モードに切り替えると一転して出力特性が穏やかになり、コーナリングABSやトラコンも最適化され、サスペンションも低ミュー路面でのグリップを優先した「ウエット」専用の設定へと自動調整される。
前後連動ブレーキも進化していて、従来のフロントからリアへの制御だけでなく、新たにリアブレーキ操作だけでも前後に最適な制動力を配分してくれるため、ほとんどリアブレーキだけで事足りてしまう。
最後に林道にもトライしてみた。「エンデューロ」モードに切り替えると、電制サスは自動的にプリロードを上げつつもストロークする設定となりオフロードバイクに変身する。アルミ製パニアを付けたままでもバランスは良好で、後輪を軽く流しながらコーナーを立ち上がる走りも可能。
最新の電子デバイスの威力は絶大で、悪天候や長旅に疲れているときほど強力にライダーをサポートしてくれる。新型ムルティストラーダV4Sは優れたパフォーマンスはそのままに、より扱いやすく安全で快適な万能ツアラーへと進化した。冒険の旅を後押ししてくれる相棒だ。
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