2025年2月28日に今年のMotoGPが開幕しましたが、1995年以来、MotoGP成立以前から長くスポンサーだったレプソルに変わり、今年からホンダのスポンサーとなったのは英国のオイルブランドであるカストロールでした。そのカストロールは昨年より、台湾のGogoroと組んでビジネスを展開しており、2月18日には両社が合弁会社を設立し、ベトナム市場におけるバッテリー交換式電動スクーター事業を展開することを発表しています。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2025年3月1日に公開されたものを一部編集し転載しています。

モータースポーツ業界における、ホンダとカストロールの長い付き合い

カストロールとホンダの、モータースポーツ業界における結びつきは長いです。1959年の世界ロードレース世界選手権(現MotoGP)参戦開始から、いわゆる第1期ファクトリー活動停止の1967年まで、ホンダは高性能4ストロークマルチシリンダー車で幾多の栄光を手中におさめました。当時のホンダRCレーサーたちの潤滑を担ったのは、ひまし油ベースのカストロールRシリーズでした。

画像: Welcome to Honda HRC Castrol - A New MotoGP Adventure www.youtube.com

Welcome to Honda HRC Castrol - A New MotoGP Adventure

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その後もカストロールとホンダの協力関係は、F.スペンサーによる史上初・唯一無二の250/500ccダブルタイトル獲得(1985年)や、世界スーパーバイク選手権制覇(1997年、2000年、2002年)など、さまざまなモータースポーツのカテゴリーで成功をおさめてきました。今年、ホンダのファクトリーチームの車両にカストロールのロゴが入ってことに、懐かしさを覚えるオールドファンも多いのではないでしょうか?

画像: 「Honda HRC Castrol」のホンダRC213V。カストロールカラーのMotoGPマシンは、2015年マレーシアGP以降「Castrol Honda LCR MotoGP™ Team」によって使われてきましたが、レプソルが去った今シーズンより、ファクトリーチームのマシンにもカストロールのロゴがあしらわれるようになりました。 global.honda

「Honda HRC Castrol」のホンダRC213V。カストロールカラーのMotoGPマシンは、2015年マレーシアGP以降「Castrol Honda LCR MotoGP™ Team」によって使われてきましたが、レプソルが去った今シーズンより、ファクトリーチームのマシンにもカストロールのロゴがあしらわれるようになりました。

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ともあれMotoGPの世界で、近年低迷しているホンダがカストロールとのパートナーシップによって、今シーズンは上向きになることを期待したいですね!

昨年カストロールは、Gogoroに最大5,000万ドル投資することを公表

一方で実業の世界では、BPグループ傘下のブランドであるカストロールが、バッテリー交換式電動スクーターのビジネスモデルを確立した台湾企業、Gogoroとのパートナーシップが話題となっています。

昨年6月にカストロールは、Gogoroに最大5,000万ドルを出資することを発表。2050 カーボンニュートラルに向け、多くのオイルビジネス当事者は脱オイル時代のビジネス確立を志向していますが、カストロールとGogoroのパートナーシップもその一例であり、潤滑油事業以外の「多角化」を強く意識したものです。

画像: www.gogoro.com
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そして2月18日、Gogoro暫定CEOの姜家偉は、カストロールと合弁会社を設立してベトナム市場へ進出することを発表しました。合弁契約は17日に合意に至り、Gogoroがバッテリー交換式電動スクーター技術の設計と提供を担当し、カストロールが販売と運営を行うことになります。

台湾に2,695のバッテリー交換ステーションを整備し、90%に達するカバー率を誇るGogoroは、積極的に海外進出を進めています。姜家煒は海外投資の分散から方向転換し、今後はビジネス資源の集中ということで東南アジア地域を重点市場にすると、18日の発表の場で述べてもいました。2025〜2030年の間、東南アジア地域の電動スクーター販売は年平均で30%を超える成長率になると、Gogoroは試算しているとのことです。

ベトナムも2輪EVの潜在的需要が高い市場とGogoroとカストロールは考えており、今まで日本のメーカーが支配してきた東南アジア地域におけるスクーター市場に、電動への移行期を利用して食い込んでいくことを彼らは考えているのでしょう。

しかし、Gogoroも順風満帆というわけではないみたいです・・・

アイオネックス(キムコ)やガチャコなど、Gogoroが確立したサブスプリクション式バッテリー交換ステーションのアイデアを後追いしたフォロワーたちに対し、海外展開やユーザー数などでGogoroは優位に立っています。ただ、斯界のリーダーたるGogoroもすべてが見晴らし良好というわけではなく、2024年第四半期決算は7,300万ドルと、前年度同期比で20%減少。年間売上高も11.2%減少の3,105億ドルでした・・・。

上述の、海外投資を東南アジア地域重視という方針も、Gogoroの財務報告書の数字を改善させるために決まったものといえるでしょう。そのほかにもGogoroは、業績改善のために2つの戦略を打ち出しています。

1つは、製品ラインの整理です。現在Gogoroは9つの電動スクーターをラインアップしていますが、その内訳はハイエンドモデル2機種、ミドルクラス5機種、入門モデル2機種となっています。これをGogoroは今後、順に1機種、3機種、1種の合計5種類に絞り込み、そのプラットフォームを通称Gogoro連合ことPBGN(パワード バイ ゴゴロ ネットワーク、Gogoroのバッテリーを使えるスクーターを製造するメーカー群)各社に提供する予定です。

画像: 最高出力9.0kW、0〜50km/h加速3.05秒というGogoroの高性能スクーター、「パルス」。 www.gogoro.com

最高出力9.0kW、0〜50km/h加速3.05秒というGogoroの高性能スクーター、「パルス」。

www.gogoro.com

モジュール化を進めることで電動スクーターのコストダウンを図るとともに、手頃な価格で車両を提供することでユーザー増をねらうという戦略は、ライバルメーカーたちとの競争に勝つには欠かせないものといえるでしょう。

もう1つの戦略は、今後成長が期待されているエネルギー貯蔵市場のビジネスです。近年、世界的に増加している再生エネルギーですが、太陽光パネルなどで発電した電気が余剰になったとき、その電気を貯める大規模、小規模を問わず貯蔵プラントの整備に対する需要も増えています。

電動スクーターの動力として使われるGogoroのバッテリーですが、劣化することが避けられないリチウムイオン電池の特性上、いつかは動力用としては退役を強いられることになります。しかし余剰電力などを貯蔵する役目としては、「第二の人生」的にそれらのバッテリーは使用することができます。現在Gogoroは貯蔵システムに関するテストを行なっており、将来の収益源にすることを進めているそうです。

はたしてGogoroの戦略は目論見通りうまくいくのか? 今後の動向に注目したいです!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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