かつてない速度領域を求めて生み出されたメガスポーツ
80年代は各メーカーがレーサーレプリカを市場に投入する一方で逆輸入車の普及も進み、次々とニューモデルが投入されていった。リッタークラスにおいても高性能化、ハイパワー化の波が訪れるのである。
カワサキは86年にGPZ900Rを発展させる形でGPZ1000RXを、88年にはアルミフレームを採用したZX-10を投入。そして、90年にメガスポーツブームのきっかけとなるZZR1100をデビューさせた。
それまで市販車では不可能とされていた最高速度300㎞/hを目標に開発されたが、市街地やタイトなワインディングでも苦にならない常用域のフレキシビリティも兼ね備えていた。そのこともあり、まだまだビッグバイクが乗りづらい免許制度時代にあって、圧倒的な人気を獲得することになる。
その後、96年にはホンダが満を持してCBR1100XXを投入する。極めてスムーズで、ライダーをストレスなく300㎞/h近いスピードへといざなったが、そのスムーズでフラット過ぎるトルク特性が、リッターオーバーなのに迫力が足りないと言われてしまうことも。
その後、99年のモデルチェンジで低中回転域のトルクを増やし、中回転からトルクが立ち上がるエキサイティングな味付けとされた。そんな99年に役者が揃う。GSX1300Rハヤブサが現れたのだ。300㎞/hを目指すモデルが揃い、メガスポーツ戦線は本格的な三つ巴の戦いとなっていった。
90年代最後の最速王”ハヤブサ”【SUZUKI GSX1300ハヤブサ】
専用で開発されたサイドカムチェーン式水冷4気筒エンジンは、FIやラムエアシステムSRADなどにより、175PSを発生する。初期モデルのスピードメーターは350㎞/hまで刻まれており、1999年の本誌企画でおこなった最高速チャレンジでは実際に312.29㎞/hを叩きだした。絶対的な存在からモデルチェンジも少なく、初めてのモデルチェンジは2008年だった。
「最速」を奪取するために誕生したホンダ渾身のメガスポーツ【HONDA CBR1100XXスーパーブラックバード】
90年代前半のZZR天下に対し、ついにその牙城を崩すために投入したモデルがCBR1100XXスーパーブラックバード。新設計のサイドカムチェーン1137㏄エンジンは164PSを発揮するだけでなく、2軸バランサーを採用することで不快な振動もカットし、どの回転域からでも胸をすく加速を味わうことができた。戦闘機をイメージさせるフォルムで先進性を表現したホンダの意欲作だ。
90年代の幕開けと共に誕生した最速マシン【KAWASAKI ZZR1100】
“世界最速の座を守るため”に開発されたZZR1100。GPZ1000RX、ZX-10と発展してきたニンジャ系水冷4気筒エンジンを搭載し、市販車初のラムエアシステムを採用したエアロフォルムで300㎞/h突破を目指した初代C型。たちまち人気となり、93年にはD型へとモデルチェンジを果たし、エンジン内部構造パーツや、車体まわり、スタイリングを一新した。