カワサキ・オフロードの序章「2ストロークトレール 250TR」
1970 250TR(F8)
カワサキは1963年に125㏄ワークスモトクロッサーの市販モデルともいえるB8Mを発売。1967年には90㏄市販モトクロッサーのG1Mと同じく250㏄のF21Mがデビュー。
国内外のモトクロスレースで活躍する。それらの技術をフィードバックして1970年に登場したのが、90㏄、125㏄、175㏄(175は輸出専用モデル)、250㏄、350㏄のTRシリーズだ。
250TRは350TRをベースにロータリーディスクバルブ単気筒のボアを縮小して誕生。その後、1972年型で250㏄専用に開発したピストンバルブ単気筒を改良型フレームに搭載するフルモデルチェンジを実施。
ただし、2サイクルトレールの流れは海外でこそ1978年に登場したKE250に受け継がれるが、国内では同年発売の4サイクルトレール、KL250にその座を譲った。
ところがカワサキの2サイクル250トレールは1991年登場のKDX250SRで復活。日本でも流行していたエンデューロレースで大活躍した。
1969年にアメリカで発売(日本での発売は1970年)された350TRビッグホーン(大角羊)をベースに、ロータリーディスクバルブ単気筒のボアを80.5→68㎜に縮小(68㎜のストロークは変更なし)することで排気量を247.0㏄として誕生し、1970年に発売された250TR。
350のF:21/R:18のアルミリムホイールをF:19/R:18のスチールリムホイールに変更するなどによって乾燥重量は120→123㎏とやや重くなったものの、ヤマハのDT-1とスズキのハスラー250が出力18.5psを公称する中、23.5psを誇った。
なお発売された当初、250TRにはバイソン(アメリカ野牛)というペットネームが付けられていたが、すでに4輪メーカーの登録商標となっていたため、1971年以降は使われなくなった。
1972 250TR(F11)
ロータリーディスクバルブと比べるとクランクケースの幅を狭くすることができるピストンバルブを採用した新型エンジンは、最高出力は従来と同じ23.5psながら、最大トルクは2.64→2.81㎏-mへと増大。
スリム化したエンジンに合わせてフレームの形状も変更、アルミリムを採用したF:21、R:18インチのホイールを装備。後にZ1にも採用されたボブテールリアフェンダーを備えている。
1975 250TR(F11)
カワサキの市販モトクロッサーは国内外で活躍。競技専用のトライアル車も登場した
1967 F21M
カワサキの市販モトクロッサーの歴史は1960年代の前半から始まる。中でもエポックメイキングだったのが、1967年に発売されたF21Mだ。専用フレームを持つ国産初の250㏄市販モトクロッサーで、全日本選手権で3連覇を成し遂げるなど、圧倒的な速さを誇った。
1973年になると、250TRのピストンバルブをベースにしたエンジンを搭載する250MXがデビュー。1975年からKX250と車名を変え進化を続けたが、2008年を最後にKX450Fにその座を譲った。
一方1975年には、やはり250TRと同系のエンジンを搭載したトライアル車のKT250が登場。国内では翌年に250TXの車名で販売された。
1974 250MX
1975 250TX
2007〜2008 KX250
1991 KDX250SR(DX250F)
国内でも人気を集めていたエンデューロレースに対応した、ナンバー付きのエンデューロマシーン。
競技専用車のKDX250Rと共通のペリメターフレームと前後サスペンションに、クラス最強の39psを発揮する249.8㏄水冷ピストンリードバルブ単気筒を搭載。
このエンジンも基本設計はRと同じだが、バランサーを内蔵したクランクケースはSRの専用設計で、排気ディバイスのKIPS(カワサキ・インテグレーテッド・パワーバルブ・システム)はRの3ウェイに対し、2ウェイを採用する。
2002 250TR(BJ250F)
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