スーパースポーツに匹敵する運動性能を兼ね備え、街乗りも気軽にこなすフレンドリーさが魅力
引き締まったボディと、ハードなライディングにも耐え得る強靭な足まわりで、スーパースポーツモデルさながらの高次元の運動性能を予感させるCB1000R。
フェアリングの類いを帯びないネイキッドスタイルだが、ファイティングスピリット溢れる攻撃的なスタイリングとなっている。その佇まいは、獲物を狩る寸前の気迫の籠った、野性味を感じさせる独特のオーラをまとっているかのようだ。
また、丸目ヘッドライトにバーハンドル仕様は、ネイキッドモデルのセオリーに従ったトラディショナルな構成だが、それはあきらかに次世代を往くネイキッドスポーツモデルのコンポジットの構築に成功しているといえるだろう。
シンプルであるにも関わらず、圧倒的な存在感でたじろいでしまいそうになるのだが、いざ跨がれば窮屈さを強要することは一切なく、エルゴノミクスを追求したかの様な自然な乗車ポジションを提供してくれる。
アップライト且つ幅の広いハンドルは、不慣れなライダーには抵抗に感じることがあるかもしれないが、繊細なハンドリングをコントロールするのに意外と相性が良かったりするのだ。
上体の姿勢は立ち過ぎず、若干前傾となるため、日常の街乗り程度の加速では身構える必要は一切ないのが嬉しい。
いざ走り出すと、見た目の印象通りに引き締まったアスリートばりの筋骨量で車体をささえ、また繊細なロードインフォメーションを把握可能にしつつ、外乱をスピーディ且つバランス良く収束させるといった、上級モデルならではの贅沢な造りだということが分かる。
ショックアブソーバーの動きは、フワフワとした余分なストロークは一切なく、幅広い速度域に於いても穏やかな居住空間を提供してくれる。
これは、ラグジュアリーでありつつ、ライディングに集中出来る環境が整えられているといえよう。
パワーに圧倒されたり、過度なレスポンスに振り回されていたのでは、「乗り手を選ぶバイク」というレッテルが貼られてしまうのだが、このCB1000Rは違う。
スーパースポーツ譲りのパワーユニットを搭載するが、とてもフレンドリーである上にその獰猛さを堪能出来るパッケージとなっている。
まるで相反することを言っている様に思えるかもしれないが、その実態は出力やトルク、そしてエンジンブレーキ特性などのコントロールを、任意でチョイスすることが出来るパワーモードによって実現されているのだ。
極端にマイルド且つ穏やかなモードから、ワインディングでの鋭さを発揮するモードなど、3タイプのプリセッティングの他、好みの特性を組み立てるオリジナルセッティングのモード枠も用意されている。
これはつまり、走行状況や気分で、バイクの性格をガラリと変化させることが可能となっている。
高いポテンシャルをフレンドリーな車体で満喫出来るパッケージは、ある意味フラッグシップの懐の深さがもたらすマージンなのかもしれない。
文:山口銀次郎/撮影:松川 忍