レーサーレプリカの流行を加速させオートバイブームを牽引したヤマハの力作
良好とはいえない燃費や排出ガス浄化の問題などから、衰えていた2サイクルスポーツの人気をRZ250/350で復活させたヤマハが、新たなシリーズとして市場に投入したのがTZR250である。
初期型となる1KTの機種コードNo.を持つモデルは、1985年11月に発売されたが、ヤマハは秋以降に発売される機種を次年度モデルと呼ぶ習慣が1980年代から現在に至るまであるため、今回の巻頭特集もこれに準じて最初期モデルは1986年型とした。
最大の特徴は市販レーサーTZ250と並行して開発したことで、アルミ製デルタボックスフレームにクランクケースリードバルブを採用した並列2気筒を搭載。フルカウルを装備する外観はレーサーにきわめて近く、それまでの2サイクルレプリカとは明らかに一線を画するデザインや各部の構造などから、ヤマハのヤル気が強く感じられた。
1986 TZR250/1KT
<SPEC>TZR250/1KT
全長/幅/高:2005/660/1135mm
シート高:760mm
車軸距離:1375mm
車体重量:126kg(乾)
燃料消費率:43.0km/L ※定地走行テスト値
燃料容量:16.0L
エンジン:水冷2サイクル二気筒
総排気量:249cc
最高出力:45ps/9500rpm
最高トルク:3.5kg-m/9000rpm
変速機:常時噛合式6速リターン
タイヤサイズ:前100/80-17(52H) 後120/80-17(61H)
スプロケ:前14|後41
チェーンサイズ:520|リンク110
発売当時車体価格:54万9000円(税別)
最初期モデルは、1985年11月に発売された白×赤(塗色名はホワイト)と、1986年4月に追加された写真のファラウェーブルーの2種がある。この青×黄の塗色は、当時のレースチーム、ゴロワーズ・ヤマハのマシーンをイメージしたもので、前後ホイールは赤からゴールドへと変更される。
なお、いずれの塗色とも機種コードNo.は1KTとなる。全長/全幅/全高は2005/660/1135㎜、ホイールベースは1375㎜を資料に記載。乾燥重量は126㎏を公称した。ホイールは前後17インチで、リム幅はフロントが2.15、リアが2.50。タイヤはバイアスで、F:100/80-17、R:120/80-17が標準サイズ。
純正指定銘柄は、ダンロップのK430とヨコハマの205だった。前後一体のダブルシートは、今ではレプリカらしさがあまり感じられないが、当時としてはタンデムスペースのクッション材を薄くした形状が新鮮、非常にスポーティに見えた。
この部分を覆うシングルシートカバーをオプショナルパーツとして用意、価格は1万2000円だった。左右ステップは軽量化のためアルミパーツを多用するが、シフトペダルのみスチール製として転倒でダメージを受けても走行不能となるのを回避。
タンデムステップのブラケットを別体化、サイレンサーステーとしても機能させるなど、細部にわたってレーサーTZ250に可能なかぎり近い外観を得る工夫が凝らされた。
ステアリングヘッドパイプとスイングアームピボットを備えるプレートを直線的に結ぶ左右スパーは、引き抜き材ではなくプレス材を溶接で合わせたモナカ構造で、十二分な剛性を確保しつつ軽量化を実現した手法はワークスレーサー開発グループとの協力により生み出されたものだ。
26度/96㎜のキャスター/トレールも変わらず。前後ホイールは同様に17インチだが、リム幅をF:2.15→2.75、R:2.50→3.50と大幅にワイド化し、フロントに100/80R17、リアに130/70R17のラジアルタイヤを装着。
クランクケースリードバルブ並列2気筒は、TZ250に倣ってシリンダーに補助排気ポートを新設して排気効率を向上。シリンダー内壁にセラミックコンポジットメッキを施してスリーブレスとし、軽量化と放熱性を高めることに成功。
リードバルブは従来の6葉から8葉としてより滑らかな吸気を獲得、右手への反応も優れたものとした。
TZR250の関連記事はこちら
連載【心に残る日本のバイク遺産】をまとめて見る
MOOKのバックナンバーはこちら「日本のバイク遺産 2サイクル250史」
モーターマガジン社 (2017-08-31)
売り上げランキング: 208,176
Powered By Bikers Station