夢を実現するための試金石、それがコンセプトモデル
ナンダコレハ……? モーターショーで、そんな光景に出くわすことは少なくない。
前回の東京モーターショーではヤマハの「ライダーに歩み寄ってくる転ばない自立2輪車」モトロイドや、同じくホンダの2輪車自立技術「ライディングアシストe」に度肝を抜かれたし、ヤマハはバレンティーノ・ロッシとバトルするライディングロボット「モトボット」を公開したこともあった。
荒唐無稽のようでいて、実は実現可能なアイディアが詰まっていたり、一部のメカがすぐに実用化したり――それがコンセプトモデル、ショーモデルだ。
オートバイのコンセプトモデルとして、やはり忘れられないのは、1985年の東京モーターショーで初公開された、スズキの「ファルコラスティコ」だろう。
低く構えたフォルムに、フロントカウルにつながったタンク、ハンドルと連結されないフロントタイヤ、飛行機の操縦桿のようなハンドルグリップ――。
2年後のモーターショーでは「ヌーダ」に昇華した、30年が経過した今でも、夢とロマンにあふれたショーモデルだ。
しかし、この夢だらけのショーモデルからも、ハンドルボタン式シフトチェンジや前後スイングアーム式サスなど、後に実用化された技術も少なくない。
夢だらけ、けれど決して夢だけじゃないのもショーモデルの存在意義なのである。
スズキ FALCORUSTYCO(1985年)
今なお色褪せない伝説のショーモデル
1985年の東京モーターショーで衝撃的デビューを果たしたスズキのコンセプトモデル、ファルコラスティコ。
日本で、モーターショーにコンセプトモデルやショーモデルを出展するサプライズが本格スタートしたのがこのモデルだと言っていい。
4ストローク500㏄のスクエア4エンジンを搭載し、前後ともセンターハブステアリング、油圧パワーステアリングとガングリップハンドルをもち、駆動はチェーンレスの液圧ドライブ。
フレームレス構造で、一切公開されてはいないが、このファルコは実働したのだ! ファルコラスティコとは「白隼」の学名で、30年以上たった今でも伝説のコンセプトモデルだ。
すでに様々な形で実用化されている電動スクリーン。クルマのパワーウィンドウを考えればしごく簡単なシステムだが、現代のオートバイでも手動と固定が主流だ。
スズキ NUDA(1987年)
ファルコを一歩、現実に近づけた!
ファルコラスティコの独創的ステアリングシステムを進化させた、やや現実味を帯びたモデルがヌーダ。
これはモーターショーでも実走ビデオが流された。こちらは2輪駆動、スイング式シートなどを採用した、より現実に近づいた1台だ。
レポート:中村浩史