このトリシティは自立する! コンセプトは「めざせ、ころばないバイク」
先日閉幕した東京モーターショー2019で世界初公開されたヤマハ「トリシティ300」がイタリアミラノで開幕したEICMA2019でも公開されています。
東京では発表されなかった主要諸元等、詳細が見えてきましたので教えらせします!
はじめにスペックからご覧ください。
YAMAHA「TRICITY300」(欧州仕様)の主なスペック
全長×全幅×全高:2,250×815×1,470mm
ホイールベース:1,595mm
シート高:795mm
車両重量:239kg
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
総排気量:292cc
ボア×ストローク:70.0×75.9mm
圧縮比:10.9
最高出力:20.6kW(28PS)/7,250rpm
最大トルク:29N・m(3.0kgf・m)/5,750rpm
燃料タンク容量:13L
タイヤサイズ(前・後):120/70-14M/C 55P・140/70-14M/C 62P
ブレーキ形式(前・後):267mmシングルディスク・267mmシングルディスク
気になったのは、まず総排気量292ccの水冷単気筒エンジンではないでしょうか。
これは、欧州向けスポーツスクーター「XMAX 300」のBLUE COREエンジンをベースにしているとヤマハは正式発表。燃焼速度の向上やロス低減を図る仕様の最適化が施され、トリシティ300に搭載されました。
大きな特徴としては、専用設計の「LMW機構」が採用されたこと。
LMWとは「リーニング・マルチ・ホイール」の略。簡単に言えば、二輪車のように傾きながら曲がる3輪以上の乗り物を示す単語です。
「トリシティ」という名を冠していますが、トリシティ125や155よりも構造的には、前2輪の大型スポーツモデル「NIKEN」(ナイケン)に近いもの。
ナイケン同様に操舵軸とリーン軸をオフセットする“LMWアッカーマン・ジオメトリ”を採用しています。この機構は、四輪に採用されているハンドルを切った際、コーナーの内側にあるタイヤの切れ角が大きくなるように動くメカニズムを前二輪に採用したもの。
コーナリング時、前二輪の旋回の中心点が同心円上に揃うため、スムーズな旋回ができるというのが特長です。
LMWアッカーマン・ジオメトリの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
さらにトリシティ300には、「めざせ、ころばないバイク」というキャッチフレーズも。これが何を示すかというと、このトリシティ300、機械的に自立するのです!
その機構が、ヤマハの市販予定車として今回初めて採用された「チルトロックアシストシステム(TLA)」。
LMW機構の上部にあるアームに取り付けたディスクを、電動のキャリパーでロックし、車両の自立をアシストする仕組みとなっています。
このTLAは、サスペンションの機能とは分離しているため、押し歩き時の小さな段差にも対応。取り回しがすこぶる安心になり、さらに低速走行時の安心感もグッと増しています。
フレームも新設計。細径パイプと板材を組み合わせて、強度と剛性を最適化。ステアリングパイプとフレームの接合部をボックス型とすることで高い剛性を確保し、ライダーに安定感としなやかな乗り心地をもたらすと、ヤマハは解説しています。
フレームへのエンジン搭載方法はリンク式を採用。搭載位置の最適化を図り、走行時にライダーに伝わる振動を低減させているとのこと。
ブレーキには、ABSとともにUBSも採用。ABSは三輪すべてに備わっています。UBSとは統合ブレーキシステムのこと。リアブレーキを操作した際、システムのイコライザーがフロントブレーキと連動し、制動力の前後配分を最適化することで、制動時の車体挙動の低減を図っています。
デザインコンセプトは、「My Right Arm(ビジネスを支えてくれる右腕)」。TRICITYシリーズの代表的なブランドアイコンであるフロントの逆三角形を、上位機種にふさわしい立体感で表現しています。
さらにLMW機構が稼働する範囲に空間を設けることで軽快感を演出、ライダー中心のマス集中とサイドビュー・フロントビューでの“ハ”の字スタンスにより、LMW特有の踏ん張り感が織り込まれました。
そのほか、トラクションコントロールの搭載、ブリヂストン製専用開発タイヤ、フットブレーキペダル、ラチェットタイプのパーキングブレーキ、大きなLCDメーター、LEDヘッドライト、スマートキーなども採用。シート下ラゲッジスペースは、大容量43.5Lを確保したと発表されました。
すでに展示車両の完成度は高く、発売情報が待ち遠しい状況です。続報が入り次第、すぐにお知らせします!
レポート:西野鉄兵