燃費性能そして航続距離「D.T.E.」は海外では大きな評価基準
燃費なんて気にして走ってんじゃねーよ! と言う方がいる一方で燃費はとても気にする、と言う方もいる。そのどちらでもない方もいるだろうが、私は気にする方だ。
バイクでもクルマでも好きで乗るんだったら、自分の価値判断でいい。燃費志向か、そうではないかは自分で考え、自分で行動をとればいい。ここは良い悪いの話ではなく価値判断のことを少し。
なんで私は燃費志向か。ロングランするからだ。大きな都市とその近郊ならガソリンスタンドはそこそこあるけれど、人がいないところを走ってリザーブランプが点灯するとちょっと心配が始まり、それが定休日だったり、夜遅いために営業時間外だったりしてますます焦ってしまうことがたまにある。
日本全国、バイクレッスンのためにあちこちへバイクで出かけていると「あれー、この前やっていたのに廃業しちゃっている」という光景を何度も見かける。
地方の過疎化は想像以上に進んでいる。クルマのハイブリッド化や電気化を含めた省エネ志向が強くなる環境変化の中でタンク容量の少ないバイク達はガソリン難民になりはしないか、少なくとも私はこの傾向が日本各地で少なからず加速しているように感じている。
航続距離はタンク容量と燃費で決まる。
欧州をはじめとして大陸を走るバイクユーザーは、カタログの燃費数値よりもバイク雑誌に掲載されている実質航続距離を重要な評価ポイントとしている。
少なくとも私がよく見ているスペイン、イタリア、フランスのメジャーなバイク雑誌は例外がない。正確に言うと燃費というよりも満タンによる実質航続距離D.T.E.(Distance To Enpty)だ。
D.T.E.はバイク性能の重要なチェックポイントのひとつと私は思う。
燃費は乗り方でかなり異なる。ゆっくり走れば良くなるってもんじゃない。速いからといって燃費が一概に悪くなるわけではない。目の前に広がるシーンひとつでもそれぞれ走り方が異なるだろう。
場所の選択とタイミングの調整で安全空間を確保しつつ、落とすべきところはちゃんと速度を落とし、安全なところではきっちりと加減速とコーナリングで最大のグリップを生み出しながら、ライダーの疲労とバイクへの負担や無駄をいかに少なくするか。
この楽しみを最大限に引き出しながら実質航続距離を伸ばすように走るのは、私にとって最高のゲーム。
乗り方をKRSというスクールであれこれ教える私の視点はかように複合している。
でも、個々の受講生の志向をそれぞれに汲み取りながら、バイクレッスンは楽しい! 役に立つ! とシンプルに思っていただけるようにレッスン内容の改善をこれからも重ねていきたいと思っている。
変速ショックのないシフトワークがシームレスな走りとなり、低燃費化を促進しつつ実は速い走りへ繋げられるかもしれない。
逆にクラッチを長い時間、切った状態での走りも、低燃費だけではなく、車体の動きなどいろいろ試せる。
加速方向への駆動力、減速方向への駆動力で曲がり方が変わるけれど、クラッチを切った状態での曲がり方は実に素直な走りが楽しめる。
もしも、クラッチを切って曲がったら危ないという考え方があるようだとしたら、そう簡単に決め付けない方がいい。
あなたの常識はもはや過去のものかもしれない。少なくともひとつやふたつ、あなたにそんな常識があるかもしれない。
共に発見できたらいいですね。常識という名の偏見や嘘を。
文・写真:柏 秀樹
KRS(柏 秀樹のライディングスクール)公式サイト
公式YouTube「KASHIWA CHANNEL」
柏 秀樹 プロフィール
大学院生(商学研究課博士課程)の時代に、作家片岡義男氏とバイクサウンドを収録した「W1ツーリング~風を切り裂きバイクは走る~」を共同製作。大学院修了後にフリーのジャーナリストとして独立。以降、ダカールラリーを始めとする世界中のラリーを楽しみながら、バイク専門誌の執筆活動や全国各地でトークショー出演などを行っている。
バイク遍歴60台以上、総走行距離100万キロ以上、そして日本中の主要ワインディングロード、林道のほか世界の道を走ってきた経験をもとに2003年に始めたライディング・アート・スクールをリニューアルして2009年から新たにKRSこと柏 秀樹ライディング・スクールを開校。バイクやクルマの安全と楽しさを一人でも多くの人に熱く伝えることを生き甲斐にしている。