長く愛されるモデルは、それなりの理由と魅力が必ずある。バイク好きなら誰もが知っている「セロー」シリーズは、どうしてここまで愛され続けてきたのか、そしてその未来はどこに向かうのか。プロジェクトリーダーにお話を聞いた。
シンプルさの追求が生んだ扱いやすさと優しさの35年
橋本貴行 氏
ヤマハ発動機株式会社
PF車両ユニット
PF車両開発統括部
ST開発部
「セローに携わる以前は、初心者向けのオールラウンダー、ぐらいのイメージしかありませんでした。担当するようになって、初めてセローブランドの重みを感じました」
そう語るのは、ヤマハ発動機の橋本貴行さん。排ガス規制に対応して「最後の変更」が行われた2018年モデルのプロジェクトリーダーだ。
「セローの担当になって、プレッシャーはすごくありました。考えて、悩んで、近藤さん(近藤充氏。セローのコンセプトを提案した生みの親)を訪ねました。セローらしさとは何か、と聞かれて、答えると『君はわかっていない』と言われて、また悩んで……。社内にある資料を片っ端から調べて学びました」
我々が思うセローの魅力、いわゆる「セローらしさ」について考えてみると、軽くて扱いやすい、足つきがいい、ハンドルがよく切れて小回りもきく……となるが、それは後から生まれた副産物のようだ。
「もともとのセローのテーマは、山登りを楽しむ、使いやすいバイクというもの。スタートはシンプルな、単機能のバイクでした。そのためには何が必要か、ということで、軽くしたり、足つきをよくしたりするうちに、お客様がそれを魅力として広く伝えてくださったのです。扱いやすい、優しいバイク、とよく言われるセローですが、それはお客様が育ててくださったからなのです」
35年という歴史の中で、セローは何度も存続の危機に立たされたという。それを乗り越えられたのは、セローファンに対する想いがあったからだった。
「排ガス規制をパスするだけなら、技術的にはさほど難しいことではありません。ただ、出来上がったものがセローと呼べるかと言うと話は別なんです。実際、社内でも『これでセローと呼べるのか?』という意見が出て、何度も細かい改良をし直しました」
多くの困難を超えて35年。いったんはファイナルだが、ファンとしては今後のセロー復活にも期待したいところだ。
「セローという名前かは分かりませんが、こうしたシンプルで使いやすいコンセプトのバイクはオフロード車には欠かせないものだ、という認識はヤマハでも持っています。このカタチではいったんファイナルですが、長く愛していただければ嬉しいです」
レポート:松本正雅/写真:柴田直行
セロー250 ファイナルエディション 主なスペックと価格
全長×全幅×全高:2100×805×1160㎜
ホイールベース:1360㎜
シート高:830㎜
最低地上高:285㎜
車両重量:133kg
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量:249cc
ボア×ストローク:74×58㎜
圧縮比:9.7
最高出力:20PS/7500rpm
最大トルク:2.1kg-m/6000rpm
燃料供給方式:フューエルインジェクション
燃料タンク容量:9.3L
キャスター角:26.40°
トレール量:105㎜
変速機形式:5速リターン
ブレーキ形式 前・後:シングルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ 前・後:2.75-21・120/80-18
メーカー希望小売価格(税込):58万8500円
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