文:中村浩史/写真:伊勢 悟
今回の旅人は「シオーリ」茨木汐利と「アルバート」大林和恵!
ふたりともオートバイ女子部メンバーであり、月刊オートバイのスタッフ。愛車はシオーリがYZF-R3、アルバートは250TRやCRM250ARという実質ニーゴー乗り。美形のふたりですが、気性はオジサンです(笑)。
準備もなしで大丈夫‼ それも250cc旅のよさなのだ
ジェンダーフリーな世の中だとは言え、250ccの人気は、女性ライダーのおかげ、と言ってしまおう。男子に比べてどうしたって体力で劣るし「ちょうどいい」サイズを探すと250ccに落ち着く、という女子は多いはず。
我がオートバイ編集部の誇る女子スタッフだって(男子もだけど)、250ccに乗ってるケースは少なくない。
シオーリこと茨木の愛車はヤマハ・YZF‐R3。兄弟車にR25を持つ、これもいわば250ccクラスだ。「大きいバイクは動かすのも大変ですからね。アタシの場合はカッコいいのはもちろん、250ccサイズで320ccっていうのが気に入ったんです」
アルバートこと大林は、ずっとカワサキ・250TRを愛車にしてきたが、つい最近CRM250ARも手に入れた。
「TRがけっこう距離を走ってヤレてきちゃったんで乗り換えようと思って。TRはいいバイクでしたねぇ、でも直すのにお金かかるって言うから」
このふたりに、行きたい所へどーぞ、やりたいことをドーゾ、とMT-25とCB250Rを渡してみた。どんな用途にも対応できるように、ネイキッドモデルだ。
「それならツーリング行きたいよね」とアルバートが言えば「アタシ、美味しい店知ってる!」とシオーリ。仲間内でツーリングチームを作っているシオーリは、ときどき美味いものツーリングに出かけるらしく、前にクラブの仲間と行った富士宮焼きそばが忘れられないのだという。
「いいねぇ、行こう行こう」
思い立ったらすぐ動く、がこのコンビ。天気も店も、ルートの下調べも何もナシで大丈夫? と編集部をやきもきさせるほどの早さで支度を始めている。え?今日もう行くの? あ、そうかそうか、シオーリが行ったことあるから大丈夫――と思いきや、
「いや、アタシ覚えてないです。近くまで行けばわかるし、今はスマホでナビあるし」とケロリ。
おじさんたちの頃はだな、ツーリングに出かける時は前の日から準備して、地図見て、天気図を見てシミュレーションして……。おい、話を聞かんか。
「ハイハイ、行きますよ。ついてきて」
思い立ったらすぐに行く。次の予定だってすぐに立てる
東京新橋にあるオートバイ編集部をスタートしたのは雨の時間帯。この日はまだ梅雨時だっただけに、さすがにレインウェアは用意していたふたり。サッと着込んで躊躇なく出発する。やーん、雨だしぃ、こわぁい、なんてないのね、このふたり。
都内の渋滞を走って東名高速へ。行き先はシオーリがかろうじて覚えていた店名を頼りにナビをセット。それでもロクに事前確認せずに走り出す。アルバートがMT-25、シオーリがCB250Rだ。
「最近の250ccって楽ですねぇ。小さいし軽いし、パワーがあって速い。そんなに飛ばさないけど、いざというときにダッシュできるだけで安心」とアルバート。普段はYZF-R3に乗るシオーリはCB250Rの単気筒を新鮮がっている。
「R3は2気筒だから、パワーの出方が違うって言うか、CB250Rはスタタタッって小気味いいですね。R3はもっとスムーズにパワーがぐーんと高回転まで伸びる感じがします」
高速道路に乗っても、制限速度順守で走るふたり。休憩を入れて目的地を確認して、高速を降りるタイミングでスマホのナビ音声をブルートゥースのインカムに飛ばしている。旅慣れてんなぁ、って感じ。
渋滞路、高速道路を走って富士宮インターへ片道150kmほど。途中、雨も上がって快適なツーリングは、お目当ての焼きそば屋さんまで2時間半ほどで到着。午前中に編集部を出て、雨あり、晴れあり、渋滞あり、快適な高速クルージングありと、たくさんのドラマを通り過ぎてのお昼ご飯だ。
「ホラホラ、これこれ」とシオーリが指さすメニューで食事を頼むと、これはこれは、東京では見たこともない富士宮焼きそば! 麺も違うし、焼きほぐしに使う水も、焼きそばの具も地元オンリー。この「特別感」を簡単に味わえるのがツーリングのよさなのだ。
本当は、ココ寄ろうね、あそこも行きたいね、なんてルートを考えてたんだけれど、ちょっと時期的にあちこち寄る状況でもないため、ゆっくりご飯食べて、東京へ帰ろう。コロナウィルスが収まったらまた来ようぜ。
帰りにはまた雨に降られたし、日暮れは早いし、富士山スカイラインは真っ白で富士山にも会えなかったけれど、ほんの半日でふたりは「いつもの」じゃない1日をたっぷり味わった。
それも、今日初めて乗るバイクに、なんの違和感もなく乗りこなしての往復300km。この、パッと乗っても問題なし、もニーゴーのいいところ。
「大きいバイクだったら、こんなに雨に降られたら疲れちゃってたかもね」とアルバート。シオーリは自分のR3と今日のCBを乗り比べてひとこと。
「けっこう違うもんなんだな、って思いました。R3より小さくて軽いし、パワーだってそんなに非力じゃないのが意外でしたね。いいな、CB250R」
思い立ってすぐ出発、往復300kmを半日ルートで考え、ひょいと気軽に美味いものをやっつけたふたり。自由だな、快適だな、出来ないことなんかないな、そんなバイクの良さが、250ccツーリングにあふれていた。
「次はどこ行こう。アタシまだ行きたい店のストックあるよ」とシオーリ。
またすぐに出かけたくなっちゃうのも、250ccの大きな魅力なんだね。
文:中村浩史/写真:伊勢 悟