ズィーワン、あるいはゼットワン。新時代を開くと同時に究極であるという期待を込めた名を持つこの車両は、半世紀という時の流れに埋もれず、時代ごとのバイクカスタムの指針として動き続けてきた。今回は後編として2000年代以降のカスタムシーンを紹介しよう。

スピードとルックスを原動力にカワサキのZが進んだ半世紀

オーソドックスで、手を入れた成果が必ず反映される。ある程度なら失敗さえも許容し、次のチャンスを与えてくれる作り。他機種のパーツさえ取り込む純正流用も行えるし、それが一般的だと解釈できるまでに広まったのも、Zという名やその姿が生産終了後も話題に上り続けていたからだ。

生産終了から20年、30年が経つと今度は、歴史遺産としてオリジナルを保存したいという動きも強まってくる。進化の方向という路線からは逆向きにも見えるのだが、ここまで多くの仕様製作やカスタム化で培われた技術が再生にも生かされることになる。

この50年という長さでのZとカスタムの切っても切れない関係。より速く、格好良くというのは、いつの時代にも乗り物に求められる命題でもある。とくにバイクというパーソナルビークルではその傾向が強まる。自らが速くなくとも、そのイメージを採り入れたいというのでも同じだ。

画像: スピードとルックスを原動力にカワサキのZが進んだ半世紀

最新型を手に入れれば済むというわけでもない。1980年代末からのカスタムブームの際にZが中心に躍り出たのは、ある種のひねくれ根性が後押ししたからという説もある。日本にない輸出専用バイク。

大排気量。水冷・アルミフレーム全盛期にあえての空冷、鉄フレーム、ネイキッド。これで速くしてやろう、目立ってやろう。

Zのスタイルに人気が出るならと大排気量ネイキッドの時代が訪れ、Zはそれらのパーツで17インチ化され、コンプリートカスタムという新しいジャンルも成立する。すると次は現代バイクがZ時代のスタイルを……というネオレトロが現れる。時代は、繰り返す波である。Zはこの半世紀、その波の中でも隠れない、常に輝く存在だった。今後もバイクが2輪で走る限りは、そのスタンスは崩れないのではないか。「Zの前にZなく、Zの後にもZなし」。シンプルなZは、そんな位置で多くのファンを惹き付け続けるのだ。

【2000年代】カスタムパーツを駆使する手法が一般化
コンプリートカスタム車も確立した

何(他の市販車)のパーツが付くか、派手ならいい、どう作る? を手探りしていた1980~1990年代から、2000年代は排気量や純正流用の手法が定番化。Zにもリプロパーツや専用パーツが続々登場し、エンジンやフレーム側加工の手法ノウハウがまとまる。

またZに17インチタイヤを履いて現代的な走りも楽しめるようにとディメンションやエンジンスペック、足まわり等を定量化したコンプリートカスタム車も登場。ブルドックのGT-MやサンクチュアリーRCMが広く知られている。

画像: ▲MOBSTAR Z1-R 3.50-17/6.00-17と、当時でもワイド(とくにリヤ)に思えたハヤブサの純正ホイールをいち早くZ1-Rに流用しつつカフェスタイルをキープしたモブスター車。進化はまだあると思わせた。

▲MOBSTAR Z1-R

3.50-17/6.00-17と、当時でもワイド(とくにリヤ)に思えたハヤブサの純正ホイールをいち早くZ1-Rに流用しつつカフェスタイルをキープしたモブスター車。進化はまだあると思わせた。

画像: ▲DOREMI Z1 ドレミコレクションZ1は、純正代替の同社製リプロパーツや4本出しEX等の強化・対策パーツを駆使してSTD状態を作ったレストアコンプリート車。コンディションも把握できる新車Zという趣。

▲DOREMI Z1

ドレミコレクションZ1は、純正代替の同社製リプロパーツや4本出しEX等の強化・対策パーツを駆使してSTD状態を作ったレストアコンプリート車。コンディションも把握できる新車Zという趣。

画像: ▲ANNY'S Z1

▲ANNY'S Z1

画像: ▲ZX RACING Z1000

▲ZX RACING Z1000

画像: ▲WORKS Z1000

▲WORKS Z1000

画像: ▲SS ITO Z1000Mk.II 18インチ鍛造ホイール+オリジナルチタン4本出しEXでレトロ&最新ミックスのアニーズZ1、スカチューン・スタイルのワークス車。1980年代当時風レーサー的ルックスのZXレーシング車。各種ブレーキ系組み合わせに対応する自社サポート等を作るスピードショップイトウ車等、形も方向も多彩になった。

▲SS ITO Z1000Mk.II

18インチ鍛造ホイール+オリジナルチタン4本出しEXでレトロ&最新ミックスのアニーズZ1、スカチューン・スタイルのワークス車。1980年代当時風レーサー的ルックスのZXレーシング車。各種ブレーキ系組み合わせに対応する自社サポート等を作るスピードショップイトウ車等、形も方向も多彩になった。

画像: ▲HAMSTEAK-II 前編に掲載したハムステーキから12年、当時成せなかった300㎞/h超えを狙った2号機のハムステーキ2。17インチを最適化したオリジナルフレーム+1197㏄/150psエンジンで、2009年3月31日に富士スピードウェイで300.90㎞/hを記録した。

▲HAMSTEAK-II

前編に掲載したハムステーキから12年、当時成せなかった300㎞/h超えを狙った2号機のハムステーキ2。17インチを最適化したオリジナルフレーム+1197㏄/150psエンジンで、2009年3月31日に富士スピードウェイで300.90㎞/hを記録した。

画像: ▲BULL DOCK Z1[GT-M]

▲BULL DOCK Z1[GT-M]

画像: ▲AC SANCTUARYZ1[RCM]

▲AC SANCTUARYZ1[RCM]

【2010年代】Z登場40年を超え多彩なスタイルが定着し
できなかったこともがトライ可能に

Zが登場して40年を迎えようとする2010年代は、純正スタイルから17インチコンプリートまで多彩なスタイルが定着。同じZシリーズの中で好みのスタイルがより身近に楽しめるようになった。

画像: ▲DOREMI Z1 上のドレミZ1は1970年代当時のAMAヨシムラレーサーを再現、下のブルーサンダースZ1はストリートも草レースにもマルチに使える1台となった。

▲DOREMI Z1

上のドレミZ1は1970年代当時のAMAヨシムラレーサーを再現、下のブルーサンダースZ1はストリートも草レースにもマルチに使える1台となった。

画像: ▲BLUE THUNDERS Z1

▲BLUE THUNDERS Z1

画像: ▲BULL DOCK Z1-R[GT-M001]

▲BULL DOCK Z1-R[GT-M001]

画像: ▲BULL DOCK Z1 ブルドックGT-Mは内燃機の自社加工/一元管理やオリジナルブランドパーツで完成度を高めつつ進化していった。

▲BULL DOCK Z1

ブルドックGT-Mは内燃機の自社加工/一元管理やオリジナルブランドパーツで完成度を高めつつ進化していった。

画像: ▲AC SANCTUARY Z1[RCM] ACサンクチュアリーのRCMはオリジナルフレーム補強やライフ重視エンジン等、進化を続ける。

▲AC SANCTUARY Z1[RCM]

ACサンクチュアリーのRCMはオリジナルフレーム補強やライフ重視エンジン等、進化を続ける。

画像: ▲RCM USA A16-001 さらにACサンクチュアリーの関連会社RCM USAでオリジナルフレームを製作、Zエンジンで30台限定のA16も市販化された。

▲RCM USA A16-001

さらにACサンクチュアリーの関連会社RCM USAでオリジナルフレームを製作、Zエンジンで30台限定のA16も市販化された。

【2020年代】現代モデルの要素を取り込むスタイルが進み
カスタムも未踏の領域へ踏み込んでいく

画像: 2012年秋のEICMA、カワサキブースに出展されたのがこの車両。現行のZ1000を元にした「Z・40周年記念コンセプト車」だった。これを経てZ900RSが現れるが、逆に水冷やモノサス、FI等の手法がZに使えると思う向きもいたかもしれない。それは新たな原動力になる。

2012年秋のEICMA、カワサキブースに出展されたのがこの車両。現行のZ1000を元にした「Z・40周年記念コンセプト車」だった。これを経てZ900RSが現れるが、逆に水冷やモノサス、FI等の手法がZに使えると思う向きもいたかもしれない。それは新たな原動力になる。

画像: Z発表から45年を経た2017年秋の東京モーターショーで発表され、同年末に市販されたのがZ900RS。Zのスタイルを現代水冷17インチ車に投影したモデル。これも次世代のZカスタムの参考になるのではないだろうか。

Z発表から45年を経た2017年秋の東京モーターショーで発表され、同年末に市販されたのがZ900RS。Zのスタイルを現代水冷17インチ車に投影したモデル。これも次世代のZカスタムの参考になるのではないだろうか。

まとめ:ヘリテイジ&レジェンズ

※本企画はHeritage&Legends 2019年7月号に掲載されたものです。

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