取材協力:ブルーサンダース/まとめ:ヘリテイジ&レジェンズ
※本企画はHeritage&Legends 2019年7月号に掲載されたものです。
LTDなら外装とホイール換装でZスタイルも味わえる
Zシリーズは1973年型Z1から1979/1980年型Z1000Mk.IIまでの8年展開し、後期型ZたるZ1000J系に移行する。Z1は知っての通り空冷直列4気筒エンジンや現代的な鋼管ダブルクレードルフレームによって、以後に続くスタンダードロードスポーツのスタイルを確立したと言える。
既に半世紀近くを生き抜きつつも、それ以前のモデル群に比べて古びないし、手の入れようがいくらでもあるという点で人気は衰えない。けれど逆にそれが、昨今の価格の高止まりにもつながった。名の通ったコンプリートカスタム車やレストア車ならいざ知らず、ノーマル中古車に手を出しにくいという状態。もっと気軽にZを楽しめないものだろうか。
そう考えた時に、派生モデルのLTDが思い浮かぶ。当時アメリカで流行ったチョッパースタイルのモディファイを施した、いわゆる〝ジャパニーズ・アメリカン〞の祖的なモデル。Zが発展したKZ900/1000を元にプルバックハンドルとキング&クイーンシート、リヤ16インチホイール等を備え、タンクもスリム化した。そしてこのLTD(Z900LTD/Z1000LTD)を元に、外装をZやMk.IIに載せ替えたという車両の話も多く聞いてきた。
「いいところに目を付けてると思います。LTDはZ系の中でも価格は安めです。乗り出しで120〜130万円と、現実的。それに、LTDは車体もエンジンも割と程度の良いものが多いですよ」とブルーサンダース・岩野さん。
そこで岩野さんにじゃあ外装を換えると……? と聞いてみると「タンクはそのまま載りますし、そうしてZやMk.IIみたいにして楽しむ。Z1じゃなきゃダメとかいうのでなくて、あの雰囲気がリーズナブルに味わえればいいというのなら、いいと思います。ただ、事故等での査定はZ並みにはなりません。同じ200万円、300万円かけて自分の納得するものができたなあと思ってても、Z1ならそれなりの査定額が出ますが、LTD改だとそうならないんです。ベース車代程度しか出ないとか。Z1なら修理するけれど、LTDだと廃車扱いになる。その違いは忘れずに、です」と答えてくれた。
確かにリーズナブル。でも同じように、高く売るようなケースは起こりにくいということになる。それでも、と岩野さんは続ける。「Zの形にするのはひとつの選択として、気軽にというのなら、LTDそのものを楽しんでしまえばいいと思いますよ。むしろ、そっちをお勧めしたいくらい。乗り味自体はZとLTDでそう大きく変わらないので、形よりも実の部分をZに近づければいい。そのままでも十分いいんですけどね。
Zとの違いを挙げながら言うなら、リヤサス、それからサイドスタンドが短いのでこれをZ用にすれば、リヤが上がってZぽくなる。LTDのリヤホイールは16インチですが、タイヤ外径も考えるとじつは18インチのZとあまり変わらない。見た目の印象で変わっている感じです。エンジンも細かい部分を除いてほぼZですから、手に入れて何か加工しないといけないというようなこともないですよ」
Z900/1000LTDの○と×
〇価格が手ごろ⇔×リセールバリュー低め
〇質や作りがちょうどいい(車体・エンジン)
△よくも悪くもレアなモデル
◎気に入るのならそのままで十分楽しめる
Z900/1000LTDの全体感をまとめた。Zシリーズの中ではZ1/900/1000やMk.II、Z1-R等に比べてマイナー感があるが、カワサキにLTDというクルーザーブランドをもたらした重要なモデルでもある。その質や作りはZの改良版的な部分もあり、手堅い選択肢とも言えるシリーズだった。
Z系のコンセプトを生かしたZ1000LTDの歩み
LTDはLimited=限定に由来する名前。1976年にZ900を元にキャストの19/16インチホイールを履かせプルバックハンドル等を装備したZ900LTDを北米で限定2000台で生産したのが始まりだ。1977年にはZ1000をベースにレギュラー化してZ1000LTD(B1。写真はB2/B3とも当時の北米カタログ)が登場。グラブバーや低めの左右出しEXを備えてのチョッパースタイル、と記される。それでいてキャスター26度や約90㎜のトレール、サイドカバー/テールカウルがZ1~1000に同じ点にも注目しておきたい。
▲1977 MODEL(B1)
▲1978 MODEL(B2)
▲1979 MODEL(B3)
取材協力:ブルーサンダース
まとめ:ヘリテイジ&レジェンズ
※本企画はHeritage&Legends 2019年7月号に掲載されたものです。