文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年7月31日に公開されたものを転載しています。
どうも女性ユーザーは、電動スクーターを好ましく思っているみたいです!?
台湾のメディア、MotoBuyが報じる2021年の台湾2輪市場データによると、法人販売を除くICE(内燃機)搭載2輪車のオーナー男女比は、男性53.21%に対し女性46.79%・・・とのことです。そして電動車を対象にした場合は興味深いことに男女比は逆転し、男性48.46%に対して女性が51.54%となるそうです。
上記のデータから推察するに、排気音や振動(もしくは鼓動感)を好む"ガソリンヘッド"的な人が多い男性ユーザー層に比べると、女性ユーザーの多くは滑らかな乗り心地を持ち、排ガス、排気音、振動のない電動スクーターを、積極的に支持していることがうかがえます。
バッテリー交換プラットフォームを整備することで、台湾の電動スクーター業界のリーダーに成長したGogoroですが、じつはすでに、女性向けの電動スクーターを2018年8月に発売した経験を持っていました。
17〜18歳という若い女性の好みを分析して生み出された「Gogoro 2 ディライト ピンク」は、同社のGogoro 2シリーズをベースに、明るいメタリックピンクのカラーリングを採用。そしてシート高を下げるなど、女性ユーザーに喜ばれる改良が施されていました。
しかし「Gogoro 2 ディライト ピンク」は一定の評価を集めたものの、基本的にベースモデルの車格をそのままだっため、女性用の電動スクーターとしては依然大きすぎる・・・とも指摘されました。今年の7月にGogoroがデビューさせた新型「Gogoro ディライト」は、前作の開発の反省を活かし、より一層女性ユーザーのことを考えたモデルに仕上がっています。
台湾史上初の、女性主導で開発された電動スクーター!
新型Gogoro ディライトの最大の特徴は、台湾としては初めて「女性主導」のプロジェクトで開発を進めたことです。"Designed by Her, for Her"(女性のための、女性による設計)というコンセプトの下で編成された"By Her"プロジェクトに集められた11名は、Gogoroの各部門で働く女性たちでした。
2021年に編成されたプロジェクトメンバーたちは最初に、女性が電動スクーターに盛り込みたいと考える機能をすべてリストアップするとともに、女性が2輪車を使うときに気になってしまうこともすべてリストアップしました。
そして重要視されたのは、車体の「軽さ」で使いやすさを向上させ、女性ユーザーの安心感を向上させてリラックスして使える電動スクーターに仕上げることでした。この目標を達成するために、Gogoro ディライトは既存機種より軽量コンパクト化され、シート高も低く抑えて設計されています。
シート高については単純に高さを低くしただけでなく、女性のライディングポジションの特徴を分析してきめ細かくシート形状を選定。停車時には地面にしっかり足が着けるように工夫されています。また、乗降時やライディング中に膝がボディパネル内側に当たって痛い思いをすることがあるという指摘から、「エアクッシュ」というクッショントリムを新たに開発・採用しているのも特徴です。
女性ならでは・・・の視点で盛り込まれたアイデアの数々
新型Gogoro ディライトのユニークな点は、およそ男性では思いつかなそうなアイデアが、各部に採用されているところです。暗い場所に停車した後、しばらく前方を照らしてから自動消灯する「エスコート・ライト」、シート下トランクを開けたときに、心地よい香りを放つ「トランク・フレグランス」、そして最も触れる機会の多い部位を抗菌仕様にして清潔さを保つ「アンチバクテリアル・グリップ&トランク」は、いずれもすべての女性ユーザーに歓迎されるであろう機能です。
なお新型Gogoro ディライトに用意されたカラーリングは4種類で、青は自己発見を象徴する色、緑は女性の独自性を表す色、そして金は自由とリラクゼーション、白は純粋な性質の象徴として採用された色・・・とのことです。
上述のとおり、台湾の2輪ユーザーの約半分の600万人が女性ということですが、新型Gogoro ディライトがどれくらい期待どおりに女性ライダーたちに受け入れられるのか・・・? 非常に気になりますね。もし目論見どおりの成功を市場でおさめることができたら、女性による、女性のための2輪つくりという試みが、今後ひとつのメソッドとして定着していくことが期待できるでしょう。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)