その創業は1963年。古くは国内外のバイクを販売し、1990年からはH-Dディーラーとして関西のバイク屋街として知られる兵庫・尼崎で看板を掲げ続けた老舗・寺田モータース。そんな同店は、2019年からは改めてカワサキZ系の中古車販売とメンテ&チューニングを再開している。若い頃からそんな現場を見続けてきたという二代目・寺田史郎代表に、ショップの歴史から見えるZの“今”を聞いた。
※本企画はHeritage&Legends 2021年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

著名H-DディーラーがZの販売をスタートした

「小学生の時分は、親父のZ2の後ろに乗せてもらったりして、“大人になったらZに乗ろう”って思っていたのを、今も覚えてます」

寺田モータースの二代目、寺田史郎代表はそう語り始めた。

同店は1963年の創業(寺田さんの生まれた年だ)。寺田さんは高校卒業と同時にショップを手伝うようになるが、当時は国産車からラベルダ、モトグッチ、BMWといった輸入車まで、幅広く取り扱うショップだったそう。’90年からはハーレーの正規ディーラーになり、ここで紹介する本店(尼崎店)のほか、県内の伊丹市にハーレーダビッドソンプラザ伊丹(伊丹店)も展開してきた。

画像: ▲寺田モータースの寺田史郎代表(左)と専務の吉岡秀明さん。寺田さんはZ1000Rを、吉岡さんはZ1を普段から足として走らせる。

▲寺田モータースの寺田史郎代表(左)と専務の吉岡秀明さん。寺田さんはZ1000Rを、吉岡さんはZ1を普段から足として走らせる。

「2019年の秋からはHDJ(ハーレーダビッドソンジャパン)との契約の切り替えもあって、本店をハーレーと国産車の中古車販売店に改装したんです。もともと、ハーレー専売店になった後も、それ以前からのお客さまのバイクのカスタムや整備は変わらず面倒を見させていただいていまして。言ってしまえば裏メニュー(笑)的な感じ。専務の吉岡(秀明さん)が無類のZ好きだったもので、口コミで彼を頼って来店してくれるZユーザーも多かったんですよ」と、寺田さん。

ひと言で国産中古車の販売を始めるといっても車種はやはり、おふたりの大好きな’80年代車。中でもカワサキZシリーズに絞って注力しているのだという。

「車検やメンテナンス、チューンに関しては、同じ’80年代の人気モデル、ニンジャやカタナだって受け付けているんですが、中古車として売るには、やはり車両をきっちり仕上げなければならない。私たちショップは“バイクを走らせて楽しんでもらう”のが目的。お客さまに購入いただいた後も、ちゃんとメンテナンスができて、直し続けられるバイクでなければならない。Zはその点、ドレミコレクションやPMCなど多くのメーカーがリプレイスパーツを用意してくれていますから、安心して販売できる車両なんです」(同)

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Zは国産車では希有の後世に残せる遺産的存在

先の通り、古くから(小学生時代から!)眺め続けてきた寺田さんの目で見て、Zのマーケットは今、どう映っているのだろう。

「最近のお客さまはノーマル、オリジナルのスタイルに興味を持たれている方が多いんじゃないかな。’90年代はカスタムしたZがほしいというハナシをよく聞いたものでしたが、今はノーマルで程度のいい車体を探していらっしゃる印象。そこからノーマルらしさを崩さない範囲でのカスタムをリクエストされます」と、寺田さん。

画像: ▲創業1963年という老舗・寺田モータース本店は、現在も兵庫県尼崎市で看板を掲げ続ける。

▲創業1963年という老舗・寺田モータース本店は、現在も兵庫県尼崎市で看板を掲げ続ける。

同じ質問を専務の吉岡さんに振ると、「リヤショックのレイダウン……なんて話題になっても、フレームのカットオフはNGと言われたりします。考えれば、ハーレーのパンヘッドあたりでお客さまに言われる話に近づいてきている気がしますね。大げさに聞こえるかもしれませんが、もう自分だけのモノじゃない、後世にちゃんと引き継いでいくバイク。クラシックハーレーにお乗りの皆さんも、そんな感覚があるんです。’90年代だったら、外装が色褪せれば迷わずリペイントしたZだけれど、今はオリジナルペイントを大事にするオーナーさんもずいぶん増えているようですね」(吉岡さん)

画像: ▲ショップ内にはH-DやカワサキZなどの中古車がディスプレイされる。

▲ショップ内にはH-DやカワサキZなどの中古車がディスプレイされる。

「昔は普通のバイクだったのにね」とおふたりは笑うが、オールドハーレーには及ばないもののデビューから50年が経ったZも、そんなコレクターズバイクの域に入り始めたと見る。そう考えると、先のリプレイスパーツを駆使すれば新車同様に仕立て直せるZは、国産車では希有の存在だろう。なにせ廃番となって久しかったシリンダーヘッドをメーカーが再生産、供給するほどなのだから。

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デッドストックEGやオリジナルパーツも販売

そんな寺田モータースのトピックとして採り上げたいのは、ショールームに飾られるZ1の“デッドストックエンジン”だ。

「カワサキのディーラーがストックしていたモノが段ボールに入ったまま売りに出た、と聞いて、アメリカの業者から買い取ったものなんです。もちろん、売りモノですよ(笑)。これを使って新たに1台、仕上げるも良し。愛車に載せ替えていただくもよし。どんなご相談にも乗らせていただきます」と、寺田さんは言う。

画像: ▲取材時はたまたま、Z1-RとZ1000Rが置かれていたが、もちろんZ1も含めZシリーズ全般を扱う。最新の在庫はHPで確認してほしい。

▲取材時はたまたま、Z1-RとZ1000Rが置かれていたが、もちろんZ1も含めZシリーズ全般を扱う。最新の在庫はHPで確認してほしい。

博物館級の掘り出し物と見て、エンジンはばらさず、プラグホールなどからファイバースコープを差し入れて内部チェックを行ったところ、当たり前と言えば当たり前だが、シリンダーにはクロスハッチが残り、バルブまわりも新品のまま。プライスタグは税込み、220万円が掲げられる(取材当時)。

「実際に動かすとなるとガスケットやシール類など、経年劣化部品の交換は別途必須となりますから、現実的ではないのかもしれません。今やメーカー廃盤となったパーツも新品のまま入ってますから部品取り用? それももったいない(笑)。ディスプレイなどで使ってもらうのがむしろ現実的かな」(同)

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ここから1台を組むか、ディスプレイとして楽しむか。使い方はアイデア次第のデッドストックエンジン!

画像1: ここから1台を組むか、ディスプレイとして楽しむか。使い方はアイデア次第のデッドストックエンジン!
画像2: ここから1台を組むか、ディスプレイとして楽しむか。使い方はアイデア次第のデッドストックエンジン!
画像3: ここから1台を組むか、ディスプレイとして楽しむか。使い方はアイデア次第のデッドストックエンジン!

ショールームで展示される、Zのデッドストックエンジン。梱包されていた段ボール箱もそのまま、保存されている。形式から判断すると、1972年型Z1から1976年型KZ900まで構造変更なしで使用可能という。憶測と言うが、部品番号:79462-001が初期型Z1のブラックエンジンで、この79462-002は1974年以降のシルバーエンジンではないか、とも。もちろん外観はオイル染みひとつないミントコンディションだ。

取材協力:寺田モータース

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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