※本企画はHeritage&Legends 2021年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
文:中村友彦/協力:アクティブ
その爽快感と高揚感はリッターSS以上だ!
ノーマルで十分に魅力的なのだが、Ninja ZX-25Rはカスタムでさらに魅力が増すバイクである。今回、アクティブのデモ車を試乗するにあたって、パーツの合計金額が108万円、車両代込みで約200万円という事実を知った僕は、250㏄にそこまでかける人がいるのか? と感じた。200万円といったら、リッターSSが射程圏内なのだから。
でも試乗後はそんな心境も一変。もし今の自分がスーパースポーツを欲していて、200万円の予算を自由に使えるなら、リッタークラスを購入するのではなく、アクティブ車の再現を目指すだろう。リッターSSを扱い切れない自身の技量不足という事情もあるけれど、同社のNinja ZX-25Rを走らせた際の爽快感と高揚感は、リッターSS以上! と言いたくなるほどだったのだ。
さて、初っ端から盛り上がってしまったが、ノーマルのNinja ZX-25Rを比較対象とするなら、アクティブ車の最大の魅力は、スポーツライディングの楽しさが劇的に向上していることだ。ライダーの操作に対する反応は忠実かつ俊敏で、コーナー進入時のブレーキングとライン取りは自由自在。コーナーの立ち上がりでは早い段階から思い切ってスロットルを開けられる。ただし、どのパーツがどんな挙動に作用しているのかは具体的には書きにくい。
と言うのも、例えばライダーの操作に対する反応の変化はハンドル+ステップの置換が大きいと思うけれど、忠実にして俊敏な動きにはホイールやマフラーの軽量化も貢献しているだろう。また、ブレーキングの好感触の主役は、全交換された前後マスター/キャリパー/ディスクだが、タイヤと前後ショックがノーマルのままだったら、ここまで自由自在というレベルではなかったかもしれない。
いずれにしてもアクティブが手がけたNinja ZX-25Rは、交換したパーツが見事な相乗効果を生み出し、あらゆる面でノーマルを凌駕していたのだ。この状態でコンプリート車が販売され、多くのライダーがこれを体感したら、かなりの反響があるはずだ。
なお、今回の試乗の舞台はサーキットだったけれど、アクティブ車の効能はストリートでも体感できるだろう。前述したように、このバイクはスポーツライディングの楽しさが劇的に向上しているのだが、シビアやデリケートという雰囲気は微塵もなく、むしろノーマルよりフレンドリー。
部分的な話をするなら、クラッチは指1本で余裕の操作ができるほど軽くなっているし、バブルタイプのスクリーンのおかげで防風効果は明らかに向上。もちろん、路面の凹凸の吸収性や制動力、マシンのホールド感はノーマルより格段に良好になっているので、ロングランも快適にこなせるだろう。
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細いセットが理想的だが太いセットも捨て難い
Ninja ZX-25R用として、アクティブは興味深いホイールサイズを設定している。ノーマルのF:3・50×17/R:4・50×17に対して、同社のゲイルスピードでは、F:3・00×17/R:4・00×17、F:3・50×17/R:5・50×17(リヤにはレース用として4・25×17も準備)。この2種でどちらの運動性能が優れているかと言ったら、それはやっぱり細身の前者だ。
そもそも、F:110/70R17、R:150/60R17という純正タイヤサイズを考えると、ノーマルホイールは幅広感があるのだが、細身のゲイルスピードは純正と同寸のタイヤとのマッチングが良好で、端的に言うと実によく曲がる。
では逆に太い組み合わせ、F:120/70R17、R:180/55R17を履いたZX-25Rが、どんな挙動を示したかと言うと……。
意外なことに、まったく悪くなかった。ハンドリングは適度に重くなるけれど、その事実は裏を返せば安定感が抜群という見方もでき、太いほうが好みと言う人がいても不思議ではない。もちろん、見た目の迫力は細身とは段違いだから、ストリートカスタムなら、これは大いにアリだろう。
ただし、2種のタイヤ設定の両方に好感を抱けたのは、足まわりをトータルでプロデュースするアクティブのセットアップ力があったからだ。特に太い組み合わせに関しては、いわゆるポン付け状態だったとしたら現状ほどの自然なハンドリングは得られなかったと思う。
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異なる特性が味わえる! 2種類のホイール&タイヤ
純正ホイールのF:5kg/R:6.8kgに対して、アクティブ車が装着するゲイルスピードGP1Sの重量は3.00:3.25kg/4.00:4.66kg、3.50:3.7kg/5.50:5.6kg。細いセットだけではなく、太いセットでもSTDより軽くなっていることに驚く。カラーはブラックとゴールドに加えて、ホワイトも設定する。
右はホイールサイズ5.50-17、タイヤサイズ180/55ZR17、左はホイールサイズ4.00-17、タイヤサイズ150/60ZR17だ。
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スポーツ指向が強くなっているアクティブのデモ車だが、ディメンションとライディングポジションはノーマルとほぼ同じだから、とっつきづらさはまったく感じない。絞りとタレ角がノーマルよりやや強めに設定された同社製セパレートハンドルは、コーナリング中のグリップ位置が絶妙だった。スペシャルペイントはALFATECが担当。
バブルタイプのスクリーンはアメリカ・ゼログラビティのコルサを装着する。
前後ブレーキキャリパー+ディスクはゲイルスピード・ブランドのパーツでまとめている。
フォークスプリング+プリロードアジャスターとリヤショックは、アクティブが輸入発売元のオランダ・ハイパープロ製だ。ノーマルの動き出しがいまひとつだからだろうか、今回は同社独自のコンスタントライジングレートスプリングの美点を改めて実感させられた。
フルエキはアクラポビッチのレーシングライン。絶対的なパワーはノーマルと大差がないけれど、中高回転域ではノーマルとは一線を画するシャープな吹け上がりが堪能できる。今回、試乗車に装着されたのはストリート向けのJMCA認定品だったが、アクラポビッチにはサーキット専用モデルもラインナップされる。
ラジアルタイプのフロントブレーキマスター、クラッチレバー&ホルダー、アルミ削り出しのバックステップもゲイルスピード・ブランドだ。この3点で最も印象深かったのは、レバー操作が笑ってしまうほど軽くなるクラッチレバー&ホルダーだが、マスターはコントロール性、ステップはホールド感の向上に大いに貢献していたはずだ。
POM:ポリアセタール樹脂+アルミによるフレームスライダーもアクティブのオリジナルだ。
アクティブ製のフェンダーレスキットとLEDナンバーサイドウインカーを装着することで、リヤまわりはノーマルよりスッキリしたルックスに仕立てられる。