前傾姿勢はお腹が邪魔して辛そうだけど、眼が追いつくうちにSSの片鱗だけでも味わいたい中年ライダーにも最適なストリートファイター。先進&個性のMT-10か? 秘伝のタレ継ぎ足し熟成風味のGSX-S1000か? 新橋モーター商会の店主・丸山淳大が各部を徹底分析!
文:丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温

ヤマハ「MT-10 ABS」VS スズキ「GSX-S1000」|各部チェック

画像: YAMAHA MT-10 ABS 総排気量:997cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:835mm 車両重量:212kg 税込価格:192万5000円

YAMAHA MT-10 ABS

総排気量:997cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:835mm
車両重量:212kg

税込価格:192万5000円

画像: SUZUKI GSX-S1000 総排気量:998cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:810mm 車両重量:214kg 税込価格:143万円

SUZUKI GSX-S1000

総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:214kg

税込価格:143万円

1.エンジンまわり

画像1: YAMAHA MT-10 ABS

YAMAHA MT-10 ABS

画像1: SUZUKI GSX-S1000

SUZUKI GSX-S1000

エンジン三軸、三角形の秘密はね

どちらもエンジンのクランク、メインシャフト、カウンターシャフトの三軸が三角形にレイアウトされ、前後長のコンパクト化が図られている。MT-10のメインシャフト軸は地面から50cmもありかなり高い位置だ。GSX-S1000のエンジンはGSX-R1000K5ベースなので、K5のスズキ純正エンジンパーツは今後十数年は絶版にならないはず! つまり、GSX-R1000K5の中古は熱い! ってすぐ考えちゃう私病気ですか?


2.オイル交換と整備性

画像2: YAMAHA MT-10 ABS

YAMAHA MT-10 ABS

画像2: SUZUKI GSX-S1000

SUZUKI GSX-S1000

夏場は厳しそうなMTと意外と経済的なGSX-S

大型ラジエターとオイルクーラーを備えるMT-10は熱的に厳しいエンジンだと推察される。それもあって、MT-10はオイル量が多く、フィルター交換時は4.1Lも必要。4L缶ひとつでは微妙に足りず。GSX-S1000はオイルクーラー非装備で、フィルター交換時のオイル量は3.2Lと、意外と少食。だけどエキパイの狭い隙間からオイルフィルターを外すのは知恵の輪状態になりそう。


3.足まわり

画像3: YAMAHA MT-10 ABS

YAMAHA MT-10 ABS

画像3: SUZUKI GSX-S1000

SUZUKI GSX-S1000

ストリートファイターの個性は足元にも

ムッキムキでたくましく見えるMT-10のスイングアームだが、上から見ると非常に薄型でドリフのセット状態。軽さと適度なしなりを求める新トレンドか!? 最近の子は足もシュッとしてはります。GSX-S1000の方は全方位イカツめスイングアームでここにも00年代SSの残り香が漂う。この足まわりひとつとっても、MT-10の方が先進的だが、公道で乗るならどちらも不足を感じることはないはず。


4.乗車時の快適性

画像4: YAMAHA MT-10 ABS

YAMAHA MT-10 ABS

画像4: SUZUKI GSX-S1000

SUZUKI GSX-S1000

ツーリングモデルではないがSSよりもはるかに快適

GSX-S1000はハンドルがラバーマウントでMT-10はリジットマウント。また、GSX-S1000はシート下収納スペースもある程度確保されるが、MT-10は皆無に近いスパルタン設定だ。MT-10のシート座面はやや前下がりだが、グリップの良いバックスキン風表皮を採用。デカ盛りグルメで満腹&オネムなツーリング帰りに、ブレーキングのたびにお尻が前にズレてうんざりする例のヤツにも悩まされないはず!

ヤマハ「MT-10 ABS」VS スズキ「GSX-S1000」|総合評価

画像: 素材のままを味わいたいMT-10と好みに味付けしたいGSX-S1000!

素材のままを味わいたいMT-10と好みに味付けしたいGSX-S1000!

老害グレーゾーン目線で2台の魅力を考えてみた

人間歳を重ねると好みも変わってくるもので、サザエの黒いとことか、正体不明の発酵食品とか急に難解な味のものを欲したりする。バイクにもそれは当てはまるところはあって、経験値が上がると、わかりやすくシンプルなものより奥深い魅力をたたえるものに惹かれがちだ。

そうした意味でMT-10のアバンギャルドなデザインやクロスプレーン型クランクのエンジンフィールは、少し触れたくらいでは腹落ちせず、もっとじっくりその魅力を探求したいと思わせた。

一方のGSX-S1000は超合金、ファミコン、ガンダムなど昭和生まれの必修科目を残さず履修してきた人ならスッと受け入れられるデザインだ。パワーやレスポンスは激烈だが、直4らしい気持ちの良い伸びやかなエンジンフィール自体は、90年代以降の水冷直4ビッグバイクブームだったあの頃のマシンと変わらぬお味をお届けしてくれる。

画像5: SUZUKI GSX-S1000

SUZUKI GSX-S1000

電子制御が並盛なのでサスペンションなどセルフメンテできる範囲は広い。オイル量も中型バイク並みなので維持費は抑えられるはず。その分、先進性は控えめ。デザインもMT-10ほどの強烈ではないが、ひと目でそれとわかる個性あり。

画像5: YAMAHA MT-10 ABS

YAMAHA MT-10 ABS

他メーカーにはないクロスプレーン型クランクシャフトのエンジンを筆頭に独自性が光るMT-10はIMUや電サス仕様を設定するなど先端装備が満載。その分メンテナンスの手は出しにくい印象だ。ショップに依頼すれば維持費もかさむ。

ヤマハ「MT-10 ABS」VS スズキ「GSX-S1000」|スペック・価格・製造国

MT-10 ABSGSX-S1000
全長×全幅×全高2100×800×1165mm2115×810×1080mm
ホイールベース1405mm1460mm
シート高835mm810mm
車両重量212kg214kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量997cc998cc
ボア×ストローク79.0×50.9mm73.4×59.0mm
圧縮比12.012.2
最高出力122kW(166PS)/11500rpm110kW(150PS)/11000rpm
最大トルク112N・m(11.4kgf・m)/9000rpm105Nm(10.7kgf・m)/9250rpm
燃料タンク容量17L19L
変速機形式6速リターン6速リターン
キャスター角24°00′25°
トレール102mm100mm
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17・190/55ZR17120/70ZR17・190/50ZR17
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・ディスクダブルディスク・ディスク
燃料消費率 WMTCモード値15.6km/L 1名乗車時17.0km/L 1名乗車時
製造国日本日本
メーカー希望小売価格192万5000円(消費税10%込み)143万円(消費税10%込み)

文:丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温

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