文:中村浩史/写真:柴田直行
スズキ「Vストローム1050DE」インプレ(中村浩史)
すでにデビューから20年超、熟成を極めた長旅仕様モデル
2002年に登場。エンジンのルーツを辿れば、TL1000やSV1000といったVツインロードスポーツに行き着くのが、Vストローム1050だ。やはり一番のアピールポイントは強烈な走りで、2014年と2020年のモデルチェンジで、特にエンジンのスムーズさが増して、現行モデルでは低回転域から高回転域まで扱いやすいアドベンチャーモデル、ロングツーリングモデルへと進化している。
ベーシックモデルの1050は19/17インチキャストホイール+オンロード向きタイヤ、対してDEはオフロード性能を上げるべく、同21/17のスポークタイヤにアドベンチャー向きのチューブレスタイヤを履くのが主たる差異だ。
跨ってまず気づくのは、Vストロームの大柄さだ。全長2390mm、ホイールベースは1595mm、車両重量252kg、そして880mmというシート高は、身長180cmのライダーでようやく安心できる、というレベル。ライバルのBMW R1300GS、ホンダ・CRF1100Lアフリカツインより長く、高く、重い。
逆に言えば、日本市場でかなり重要視される取り回しの良さ、シート高の低さよりも大事にしたいことがある、とアピールするボディサイズなのだ。もちろん、これは兄弟車、Vストローム800DEが存在するからこその割り切りだと思う。
エンジンは、幾度に渡るマイナーチェンジでかなり洗練された印象。初期のころは、まだ高回転型のハイパワーエンジンという印象があって、特に低回転域でのバラつきが目立ったけれど、現行モデルではアイドリングのすぐ上から、扱いやすいトルクを取り出せるエンジンキャラクターだ。
ボディサイズも走り出してしまえば気にならない。街中の渋滞路を走行する時でも、低いギア、低回転域で徐行運転するのも気遣いのいらないスムーズさがある。もちろん、高めのシート高による足着きには注意が必要だ。
Vストローム1050が本領を発揮するのは、やはり高速域。高速道路に乗り入れてトップギア・120km/hでのクルージングは、エンジン回転数が約4500回転で、この回転域のフィーリングがスムーズで低振動、なのに鼓動感やパルスを感じられて、いつまでも乗り続けられる快適さがある。
さらに現行モデルではクルーズコントロールも採用して、右スイッチでオン+左スイッチで速度セットするだけで、イージーに距離を稼ぐことができる。また、この速度域ではVストローム1050の美点がさらに強調される。それは、動きとショック吸収力の強い前後サス、しっかりとした剛性のある車体が、ハイスピードクルーズでの快適性を高めてくれること。
実は、おそらくこれが、スズキが車体のコンパクトさよりも重要視したかったもので、とにかく高速域の快適さを、このビッグボディで出しているのだと思う。
前モデルでテストコースを走ったことがあったけれど、150km/hといったハイスピードクルージングを苦もなくこなすのがVストローム1050なのだ。高速域、超長距離でこそわかるのが、このVストロームのビッグボディサイズの有効性で、どこか日本車離れしているというか、各高速道路で許可され始めた最高速度120km/hでも、まだまだ物足りない。
ハンドリングは極めて安定性重視で、どっしりとした直進安定性がありながら、レーンチェンジは身軽。ワインディングでも、GSX-SやGSX-Rシリーズのようなロードスポーツには敵わないけれど、軽やかにコーナーをクリアする運動性を持ち合わせている。
けれどVストロームは、気持ちよくコーナーをクリアするよりは、荷物を満載してタンデムで長距離を走ることが快適なモデル。もしかすると日本有数のロングツーリングバイクなのかもしれない。
スズキ「Vストローム1050DE」カラーバリエーション
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